第18話 願書出して緊急招集

次の日、ターシャちゃんに王立第1剣魔法学院の受験内容に関する話をした。

ターシャちゃんは、どうやら内容を知らなかったらしい。

驚愕の表情を浮かべていた。

そして、願書を出さなければ試験を受けられないことさえも知らなかった。

これには本当に驚いた。

「よし、じゃあ明日からは試験勉強もしようか。」

私はついそう言ってしまった。

言ってから気づいた。

私はテキストやら過去問やらを持っていない。

「え、い、いいんですか!じゃあお願いします!」

「あ、待ってターシャちゃん。私テキストとか過去問とか持ってないんだけど」

「えと、過去問とテキストなら多分うちにありますよ?」

試験内容はわからないのに過去問はあるのか。

なぜそれをやらない、ターシャちゃん・・・

それにしてもなぜ持っているのだろう?

「ねぇ、その過去問とテキストっていうのはどこで手に入れたの?」

「初等学校です」

「初等学校?」

小学校のようなものだろうか。

「は、はい。どんな人も7歳から10歳まで通わなきゃいけない学校なんですけど・・・もしかして、その、行ってないんですか?」

・・・行った行ってない以前に、まずこの世界の住人じゃないのだが。

でも元の世界では6歳から小学校に行っていたし、行ったことになるのか?

いや、それだと知らないことに対しての言い訳ができない 。

・・・よし、これならいける。

「あー、そういえば行ってたけど事情があって最後までいなかったんだよねぇ。昔のことだから忘れてたなぁ。」

「そ、そうだったんですね・・・」

「あれ、でもその初等学院でどうしてテキストとか過去問とかが手に入るの?」

「あ、わ、私の通っていた所は学院の過去問を教材として使っていたんです。そ、それで、テキストもそれに沿って作られていて・・・」

あれ、もしかしてこの子、結構勉強できるんじゃないか。

「ね、ねぇ、ターシャちゃんはその学校で勉強できる方だった?」

「は、はい。テストの時は何回か100点を取ったりもしました。」

あれ、私ターシャちゃんの筆記試験の心配しなくてよかったんじゃない?

「そっか。今も勉強は続けてる?」

「え、はい。たまにはやらないとって思って」

確信した。私が筆記試験の心配をする必要はないな。

「そっか、なら筆記試験の心配はいらないよ。ただ、一応毎日少しずつ勉強しようか。わからない問題があれば聞きにきていいよ」

まぁないだろうけど。

「わ、わかりました!」

「あと、ターシャちゃんが学院に入りたいって言ってるのは知ってる?」

「はい。その、うちにはお金がないから特待生ならいいって言ってくれました」

だから特待生で入らなきゃいけないのか。

「じゃあ試験がトランスピアっていう所でやるのは?」

「・・・本当ですか?それは私も知りませんでした。」

よくそれで学院を受けようとしたな。

「トランスピアなんて王都じゃないですか!ここから2日もかかります・・・!」

それは遠いな。

「じゃあ今日クエストから帰ってきたらお母さんには私から伝えるよ」

「わ、わかりました!お願いします!」


クエスト達成後、私はナージャさんにこの話をしに行った。

「えぇ!?それは初めて知ったわぁ!王都なんて遠いし、うちにはそんなにお金はないわ!それに願書だっけ?そんなものうちにはないわよ・・・」

「あ、願書なら大丈夫です、ここにあります」

「あらまぁ!でもこれいくらしたの?」

「近くの図書館で無料で貰いました」

「あらそうなの、じゃあこの紙に必要事項を書けばいいのね?・・・はい、終わったわ!どこに出せばいいの?」

「近くの図書館に出せばいいそうです。あ、明日外に出るついでに出してきますよ」

「ほんと?助かるわぁ、ありがとうね!」


次の日、クエストから帰る時に図書館に願書を出しに行った。

その時に受験料と手数料合わせて1500Gを払ってきたのは秘密だ。

まぁ、昨日と今日のクエストでそれなりに稼いでいたし、素材も売ったお金もあるし、

このくらいは宿にお世話になっているみとしては当然だろう。



それから、朝は剣と魔法の練習をして昼はクエストに行くという日々がずっと続いた。

ターシャちゃんは最初こそぎこちなかったが、みるみるうちに剣も魔法も上達していった。

きっと元々の才能もあるのだろう。


そんなある日、街の防災無線で連絡が入った。

「緊急招集、緊急招集、冒険者は至急ギルドへ来てください。繰り返します、緊急招集、緊急招集、冒険者は至急ギルドへ来てください」

私はアレンハイドと顔を見合わせた。

「緊急招集ってなんだろう」

「さぁな。何かの魔物じゃないか?とりあえず行ってみようぜ」

「そうだね」


私たちがギルドに行くと、そこにはたくさんの冒険者がいた。

まもなく、どこからかウォルフさんの声が聞こえる。

「みんな、聞いてくれ!」

ざわついた空気が一瞬で静かになった。

みんな一斉にウォルフさんの方を見る。

「ここから西へ3km行った所の荒地に5m級のブラック・ベア1体が現れた!こちらの方に向かっているという連絡が入っている!」

この辺の魔物には全部「ブラック」がついている気がする。

まぁ確かに黒いのだが。

「え、5m級って、この街が一瞬で滅ぶじゃないか!」

1人の冒険者が声をあげたのを皮切りに次々と声があがる。

「そんなの俺らで倒せるわけないじゃないか!」

「僕らも早く住民と共に撤退するべきだ!」

「みんな、落ち着いて聞いてくれ!」

再びウォルフさんが声をかける。

すると再び静まり帰った。

ウォルフさん、すごいな。

「いいか、今から撤退しても間に合わない!だから、討伐に向かう!B級以上の冒険者は今さ討伐に向かう!C級以下の冒険者で魔法を使えるやつは怪我人を治療してくれ!魔法を使えないやつは怪我人を運んでくれ!今から1時間後に全員出発だ!それまでに準備をしておいてくれ!いいか、俺たちが倒せなかったら他に誰もこの街を守るやつがいなくなっちまうんだ!だから全員で協力して倒そう!じゃあ、今から1時間後にまたここに集まってくれ!解散!」

その言葉を聞いた冒険者は散り散りになっていった。

私たちも帰ろうとすると、

「お、マイカとアレンハイドじゃないか!」

後ろからウォルフさんに声をかけられた。

「あ、ウォルフさん」

「おう、お前らもいたんだな!そりゃあそうか!実は、本当は2人にも討伐組に入って欲しかったんだが、上がうるさくてなぁ!」

上・・・か。

私は元の世界では戦いとは無縁の生活だったからか、あまり激しい戦闘が好きではない。

ウォルフさんの上司、ナイス判断。

「そうだろうな。」

「そうでしょうね。」

「お?2人とも、反発しないのか?」

「なんでだ?俺たちには反発する理由がない。」

「そうですね。下手に戦闘経験が少ない人が手出しすれば危険が生じます。そうすれば余計な労力をつかいますから。」

「そうか。・・・マイカ、本当に俺より年下か?」

「え?はい、どう見ても年下じゃないですか」

「あ、それたまに俺も思うんだよな。そこら辺の大人より考えが大人っぽい。見た目が若いだけで本当はもう100歳超えてるんじゃないか?」

「もう、アレンハイドもウォルフさんもふざけないでください!」

「ハッハッハ、それは冗談に決まってんだろ?でも討伐組に入れたかったのは本当だぞ?」

「え?どうしてですか?」

「まずはその考え方。普通の冒険者はさっきの2人みたいに納得はしないし、マイカみたいな考え方もしない。さっきだって俺はC級のやつらにマイカと同じような説明をしたら『戦力は多い方がいいだろ、俺たちだって経験を積んでるんだ!』って言われたよ。次に実力。アレンハイドの剣は強い。下手したらそこら辺のB級より強いんじゃないか?マイカに至っては、魔法まで使える。普通は実技試験の時みたいな魔法を1日に3発も撃ったらMP切れを起こすのに、2発目にヒール、3発目に俺に当てたのより強い火の球を放ってもなお疲れた様子も見せない」

前に冒険者に絡まれた時に火の球を撃ったの、見られてたのか。

「それは買いかぶりすぎでは・・・」

「そんなことない。それに、それだけの実力がありながらも威張らないその態度。こんなに冒険者として完璧な人間いないぞ?まぁ、マイカの唯一の欠点は常識を知らないことだが、それはアレンハイドがいるから大丈夫だろ。」

常識がないのは確かにそうだな。

「そうですね。確かに常識はないです。なにせ、ほとんど外に出たことがなかったので」

「そうか。でもマイカが外に出てよかったぜ。じゃなかったら俺はこんな強いやつに会えなかったかもしれないんだからな!・・・おっと、少し話しすぎちまったな。2人にも準備があるだろ、行ってこい。」

「はい。」


私たちは一旦宿屋に戻り、ナージャさんとターシャちゃんに話をすることにした。

なにせ、敵は相当強いのだ。

命懸けの戦いになるだろう。

「あれ、今日は随分と早いお帰りねぇ!どうしたの?」

「いえ、これからまた出かけます。・・・ナージャさんにお話があります。」

「話?・・・あぁ、緊急招集のことね。今から討伐に行くんでしょ?放送があったからわかるわ。」

「そうですか。それで、お金の件なんですが、」

「受け取らないわ」

私の言葉を遮るようにナージャさんが言った。

「だって、もし今お金を貰わなかったら『もし死んだら宿屋にお金払ってない、どうしよう』って思うでしょ?そうしたら無事に帰ろうと思うじゃない。」

「・・・そうですね。わかりました。じゃあ、無事に戻って、また泊まります」

「そうして頂戴、待ってるから。もし明日の朝に戻れないようならターシャには私から言っておくから。いい?どんなに遅くなってもいいから、無事に帰ってきなさいよ。」

「はい。」

「アレンハイドくん、ターシャの為にもちゃんとマイカちゃんを守ってあげるのよ?」

「ああ。わかってる」

「よし、じゃあいってらっしゃい!」

「いってきます!」

「いってくる。」

私たちは宿屋を出た。


「よーし、みんな集まったな。じゃあ討伐組、怪我人を運ぶ組、治療組の順に4列に並んで出発してくれ!最後尾に俺が付く!先頭は道中の魔物に気をつけて進んでくれ!」

「マイカ、俺は魔法が使えないから怪我人を運ぶ組に行く。」

「そっか、私は治療組だから別だね。」

「あぁ。気をつけろよ。」

「お互いに、ね。」

そう言うと私は後ろの方へ向かう。

「おう、ちゃんと来たみたいだな、マイカ」

「あ、ウォルフさん最後尾なんでしたっけ」

「おう、魔物が後ろから来たらいけないしな」

「そうですね、私たちも冒険者とはいえ、強い魔物が来たら歯がたちませんから」

「まぁ、マイカさえいれば俺は必要ない気もするけどな」

「そうですね、なるべくウォルフさんの手を煩わせないようにしないと」

「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだが・・・」

「え?」

「いや、なんでもない。道中に魔物が現れないといいな」

「そうですね」

もし後ろから魔物が来たらどうしよう。


ピロリーン。

―スキル 「索敵」を獲得しました。


え、今新しいスキル?鑑定。


索敵

半径5km以内にいる動植物、魔物、魔族、人の数、位置、その形状がわかる。

対象に近づけば近づくほど形状がハッキリ見える。


おお、今欲しいスキルだ。よし、これで安心だな。

しかしこの世界にも魔族とかいるんだな。


「マイカ?どうした?何か心配事か?」

「あ、いえ、少し考え事をしていただけです」

「そうか。・・・さて、もうそろそろ出発するぞ。」

そのとき、ちょうど先頭が歩き出したのが見えた。

よし、索敵に集中しよう。

・・・あれ?何か違和感があるな。

ここから西に3km・・・これが今回討伐するやつかな?


道中は少し喋っている人はいたが、ほとんどの人は無言だった。

その中で私とウォルフさんは数少ない喋っている人だった。

「ブラック・ベアってどんな魔物なんですか?」

「その名の通り黒いクマだな。今回のは5m級だから結構デカいぞ。魔法攻撃がある程度効かないし爪には毒があるから厄介だな」

「ある程度、ですか」

「あぁ。昔の話だが、とある冒険者が魔法だけでブラック・ベアを魔法1発だけで倒したことがあるんだ。そいつは今はもういないけどな」

へぇ、そんな人がいたんだ。願わくば会ってみたかった。

「そうなんですか・・・」

「まぁ、そいつはその魔法撃ったあと瀕死だったけどな」

「瀕死?そこまでしてその魔法を撃ちたかったんですか?」

「ああ。その時も今日みたいに緊急招集がかかってな。その時は今日よりもっと大人数で行ったんだ。今回と同じような構成でな。それで、怪我した人を治してたんだが、そいつらが全員魔力切れになってな。それで、怪我人を治せなくなってほぼ全滅。ちょうどその時にそいつが通りかかってな。そいつは状況を見るなりいきなり何も言わずに魔法をぶち込みやがったんだ。」

「いきなり・・・」

「まぁ、そのおかげで助かったんだけどな。」

「・・・私たちは、そんな敵に前よりも少ない人数で挑もうとしてるんですね」

「そうだ。ま、前は6m級が1体だったが、今回は5m級が1体だしな」

「あ、それなんですけど、何か違和感があるんですよね」

「違和感?なんだ?」

「うーん、まだ分からないんですけど・・・」

「そうか。わかったら言ってくれ。」

「わかりました。あ、右斜め後ろ1km先から魔物が向かってきますね、少し大きいウサギ・・・ですかね。数は2体です」

「そうか。・・・え?」

「どうしましたか?」

「右斜め後ろ、しかも1km?ここから見えるのか?」

「いえ、見えませんけど」

「じゃあどうやって・・・いや、マイカだしな。きっと何か使えるんだ、よし、じゃあ俺が倒しに・・・」

「いや、すごい速さでこっちに来てますね、多分こっちから近づかなくてもいいと思います」

「こっちに!?」

「はい」

・・・お、見えたぞ。本当にウサギの魔物2体だ。

「本当にいた・・・」

「いるって言ったじゃないですか、ファイヤーボール」

私が放った2つの火の球は2体の魔物の頭に寸分たがわずヒットし、そのまま2体の魔物の反応がなくなった。

「あ、倒しました」

「え、ここから!?まぁ、マイカだからな・・・」

「いやマイカだからって・・・あ」

「どうした?」

「反応が大きすぎてさっきまでわからなかったんですけど、ブラック・ベアは2体います」「2体!?」

「はい。反応が大きいのと小さいのがいます。小さい方でもかなり大きいので、大きい方は恐らく5m級より大きいかと」

「何!?それはまずいな・・・この辺で先頭集団を止めないと危険だな。ちょっと行ってくる」

「いってらっしゃーい」

ウォルフさん、忙しそうだな。

・・・あ、また魔物だ。しかも結構多いな。

猪みたいなのの大群?

きっとこれもブラック何とかなんだろうな。

なんで前からじゃなくて後ろから来るんだろう。

「ファイヤーボール」

・・・よし、反応が全部消えたな。売りたいから死体はしまおう。

アイテムボックス。収納。・・・よし。


ピロリーン。

―レベルが7にアップしました。

―HPが100にアップしました。

―魔力回復量が120/1sになりました。

―MP:限界突破、上限が999,999になりました。

―魔力が全回復しました。


あ、今まで魔力が上がらなかったのは限界だったからなんだ。


あれ、前の方から反応が1つこっちに来てる、これは・・・あ、ウォルフさんか。

「ウォルフさん、お疲れ様です」

「おう。何かあったか?」

「あ、猪みたいなのが沢山いたので倒しました」

「猪・・・たくさん・・・ってそれブラック・ボアじゃねぇか!」

やっぱりブラック何とかだった。

「あ、死体今ありますよ」

「何!?」

「でも今歩いている途中で出すのは無理なので向こうに着いたら出しますね」

「お、おう・・・そういえば高威力の魔法を2発も撃っているが大丈夫か?」

あ、そういえばどのくらい消費したんだろう。

スキル「MP見える化」を獲得してから常に視界の左上に魔力残量が見えるようになったのだが、そういえばあまり見ていなかったな。

限界突破したとかだったが、数値は反映されているのだろうか。


残量

999,999


お、大丈夫みたいだ。

「全然大丈夫です、そんなに減ってません」

「ホントか?」

「はい、そもそもあの魔法はそんなに魔力を消費するものではないので」

「そうか。ならいいが、無理はするなよ?」

「はい。・・・あ、もうそろそろブラック・ベアがいるあたりですね、反応が大きくなってます」

「そうか、じゃあ俺は討伐組の所に行ってくる。・・・そうだ!マイカ、ちょっと一緒に来い」

「え?あ、はい」

そう言うと、ウォルフさんは私を連れて、列のちょうど真ん中あたりに来た。

「みんな、聞いてくれ!」

一斉にみんながこっちを向く。

「急で済まないが、覚悟して聞いて欲しい!たった情報が入った!ブラック・ベアは2体いる!しかも、もう1体は5m級のやつよりでかいぞ!」

ウォルフさんの言葉に一斉にざわつく冒険者たち。

「マジかよ・・・1体でもキツいのにこの人数で2体なんてもっと無理だろ!」

「討伐に行くのにこれしかいないのかのよ!C級も討伐組に入れないと足りないぞ!」

ウォルフさんが一喝する。

「静かに!これから俺たちは別行動することになる!討伐組は俺、治療組はこいつ、マイカの指示に従ってくれ!こいつはまだ若いが、実力もある!こいつがいれば安心だ!」

へー、私が・・・え?私が?

「ほら、何か一言」

「何かってなんですか!」

「指示聞かないやつはファイヤーボールって言えばいいんじゃないか?」

「え!?そんなこと言えるわけないじゃないですか!」

「いいから早く!」

というか私大声でウォルフさんみたいに喋れないぞ。

あ、そうだ。

元の世界にあったスピーカーをイメージする。

「あー、マイクテス、マイクテス。皆さんこんにちは、マイカです。えーっと、指示を聞かない人と働かない人は・・・ファイヤーボールするのでそのつもりで」

ざわめきが起こる。

「おい、今あいつ声を魔法で大きくしなかったか?」

「そんな魔法があるのか、あいつ治療組のやつだよな?本当にC級以下か?」

「というか今サラッとファイヤーボールって言ってたぞ?あんな高度な魔法使えるやつのファイヤーボールなんて当たりたくねぇよ!」

・・・やっぱり指示聞かない人にはファイヤーボールなんて言わなきゃよかった。

ふと真ん中の方に目をやると、アレンハイドと目が合った。

爆笑している。あとで覚えてろよ。

「静かに。まぁ、普通に働いていたらファイヤーボールなんて撃ちませんから安心してください。では、よろしくお願いします」

「だ、そうだ。じゃあ、治療組はここで治療をしてくれ!担架はここに20台あるから、怪我人を運ぶ組はここに怪我人を運んでくれ!各自、武運を祈る!以上!」

いつか私もウォルフさんみたいに喋れるようになりたい。

それにはやっぱり経験とか場数とかって大事なんだろうな。

「さぁ、マイカも指示を出すんだ」

「でも、私、そんなやり方なんて!」

「大丈夫だ、多分お前ならできるぞ。」

「・・・頑張ります」


「よし、治療組集まって!」

「アイアイサー!」

「治療組30人全員揃いました!」

え、あれ?何それ。ここ、軍隊?

集合早っ。いいことだけど。

「えっと、今からここで治療を始めるんだけど、3組に別れて貰いたいから、まずは魔力高い順に並んで」

「既に並んでおります!」

早いな。

「じゃあ前から10人ずつ適当に固まって」

ザザザザザザザッ。

「完了しました!」

おお、なんかかっこいい。

なんか、指示出すのってカッコいいな。

「隊長」とか呼ばれてみたいかも。

「じゃあ魔力高い順にA班、B班、C班で。今回の魔物は爪に毒があるらしいので、A班の人は解毒を中心に。B班の人は比較的重傷の人を、C班の人は比較的軽傷の人のヒールをお願いします。今回は苦戦になると思うので、結構魔力を使うと思います、魔力切れには注意してください。あと、魔物がこちらに来たら私が言うのでそうしたら素早く撤退してください、くれぐれも無理はしないように。体調が悪くなったり何かあったらすぐに私に言ってください、それから私のことは隊長と呼ぶように」

「アイアイサー!」


・・・ん?私の索敵範囲ギリギリのところにに魔物の大群がいる?

さっき倒したやつの3倍は大きいな。こちらに動く気配はないが警戒はしておかないと。

「あ、今回私はみんなへの魔力供給とここによってくる魔物の排除をするので魔力がなくなりそうな時は遠慮なく言ってください。索敵はしなくていいので皆さんは治療に専念してください」

「アイアイサー!」

・・・よし、これでOK。

さぁ、私の戦いの始まりだ。


・・・あれ、私、なんか戦闘狂みたい。

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