第15話 朝

次の日の朝、私が起きると見知らぬ天井があり、一瞬だけ固まってしまった。

そうだ、そう言えば私、異世界に来たんだっけ。

私はカーテンを開けると、部屋に差し込む日光のあまりの眩しさに目を細めた。

え、私結構寝ちゃった!?

時計を見ると、今は朝の5時30分、私が普段起きている時間だった。

そう言えば元の世界とこの世界の間には12時間もの時差があるんだっけ。

それに思ったけど私って、異世界に来たの元の世界では夜中だったから徹夜みたいな感じだったんだよな。

それでも普段と変わらない時間に起きるって

私の適応能力の高さどうなってんだろ。

でも今日からはまだ寝ててもいいんだよね。

よし、じゃあもうひと眠り

・・・

・・・

・・・

寝られない。

いつもならもう起きているからだろうか、寝ることが出来ない。

・・・いっその事起きてしまうのもありかもしれないな。

もし何かの弾みで元の世界に戻ったらまた学校に行くことになるだろうし。

そうだ、これからは毎日体を動かそう。そうすれば体を鍛えられるし、暇な時間も無くなるし、一石二鳥じゃないか。

・・・その前に、まだ鑑定していないスキルは鑑定しておこう。

昨日獲得したスキル、鑑定しようと思ったら寝ちゃったんだよなぁ。


「鑑定」

えっと、まだ鑑定していないスキルは・・・

「想像力」

「魔法強力化」

「MP見える化」

「思念操作」

の4つか。


想像力

想像力がアップし、魔法のイメージを作りやすくなる。


魔法強力化

少ない魔力で強い威力の魔法を放てるようになる。


MP見える化

自分の残りMPを見ることができる。

相手からは自分の残りMPは見えない。


思念操作

アイテムボックス専用のスキル。

アイテムボックスを思いどおりに操ることができる。



・・・MP見える化は便利だな。

戦いの時に配分を考えて戦える。


想像力も使える。

回復系の魔法のイメージは難しいから。


魔法強力化もいい。

効率的に魔法が放てるから。


思念操作ってなんだ?

アイテムボックス専用?

つまり「アイテムボックス」って言わなくてもアイテムボックスが出てくると。

それだけ?


・・・まぁどんなスキルもないよりはマシだろう。


よし、鑑定も終わったし、体を動かそう。

今日は剣の素振りかな。

私は剣を持ち、部屋へと出た。

玄関に着いたところで声をかけられた。

「おやおや、あんたは確か昨日来た妹さんだよねぇ、これからどこに行くんだい?お兄ちゃんは?」

あ、女将さん。この様子だと本気で兄妹だと思っているのか。

「・・・あの、私とアレンハイドは兄妹じゃありませんよ」

「おやまぁ!そうだったのかい!それはすまないことをしたねぇ!」

「いえ、お気になさらず。・・・あ、今から剣の素振りでもしようかと思っているんですが、どこかいい場所はありますか?」

「あんたは若いのに鍛錬するのかい、偉いねぇ!それなら、うちの中庭使いな。このドアから中庭に出られるよ。」

そう言って女将さんはフロントの横のドアを指さした。

「ありがとうございます!」

「いえいえ、鍛錬頑張ってね!」

その言葉を後ろで聞きながらドアを開けると、そこは緑が溢れる明るくて素敵な場所だった。

「うわぁ、綺麗・・・」

・・・おっと、見とれている場合じゃない。

昨日のクエストで思ったことは、まず自分がまだこの剣を完璧に扱いきれていないこと。これは剣の振り方や持ち方、などを変えることで少しは改善できる。次に剣に魔力を流したらどうなるのかということ。

昨日のクエストでは剣そのものの威力を見たかったため魔力は流さなかったが、流すとどのように変わるのだろうか。

・・・1回流してみよう。


剣を持ち、私の手から剣へと光が流れていくのをイメージする。

すると剣がほんのり青色に光った。


ピロリーン。

―剣が持ち主の魔力を認識しました。

―剣が「和泉 舞華」を持ち主として認識しました。

―剣に「舞姫」という銘がつけられました。

―絶剣「氷の息吹」が解放されました。


・・・剣の銘って勝手に決まるんだ。

しかも「舞姫」って私の名前から1文字とったでしょ。

絶剣ってなんだろう、今は使えなさそうな感じだからクエストの時に使ってみよう。


よし、これでとりあえずどう変わったのか、試しに素振りをしてみよう。

「はぁっ!」

・・・軽い。今まででも軽かったがさらに軽い。

それに今までは剣に振り回されていた感じがしたか、今は剣と私が一心同体のようだ。

気がつけば私は夢中で剣を振っていた。


「おーい、もうそろそろ朝食の時間だよー!」

後ろから聞こえる女将さんの声にハッとする。

「もうそんな時間ですか、では準備したらすぐ行きます」

「あらそう、じゃあその時に同じ部屋のあの男の人も呼んできてくれると助かるわー、何回呼んでも返事がないのよ。」

「わかりました。」

「助かるわー、ありがとね!」

「いえいえ、このくらいならお安いご用です!」

時計を見ると、午前8時。

もう私が起きてから2時間半も経っていた。


部屋に戻ると、アレンハイドが大いびきで寝ていた。

「アレンハイド、朝だよ、もう起きて」

「・・・ん?うぅー、もうちょっと」

「もうご飯だよ」

「ご飯!?」

その途端アレンハイドはガバッと飛び起きた。

「よし、行くぞ!」

・・・今度からアレンハイドが起きない時は「ご飯だよ、起きて」って言おう。


「はー、今日も美味しかった!」

「あぁ、そうだな」

「部屋に戻ったら準備して出発する時に長期宿泊する話女将さんにしに行こう!」

「そうだな、よし、部屋に戻ろう。」

「うん!」


それから私たちは準備を終え、フロントに来た。

「あ、お2人さんはもうチェックアウトするの?早いねぇ!」

「あ、いえ、ここの宿が気に入ったので長期宿泊しようと思って。」

「あらぁ、そうなの!確かお2人さんは兄妹じゃなかったのよね、ホントにごめんなさいねぇ!じゃ、もう1個のお部屋は昨日の部屋の隣にしておくわね!」

「はい、お手数をお掛けします」

「いいのよこのぐらい!それで、期間はどうするの?」

「そうですね、自分の家を買うまでなので、どのくらいになるかはわかりません。」

「分かったわ!じゃ、改めまして私はここの女将のナージャよ!気軽にナージャさんって呼んでね!これからもよろしくね!」

「私は和泉 舞華です、よろしくお願いします。」

「俺はアレンハイド。これからよろしく頼む。」

「マイカちゃんにアレンハイドくんね!しっかり覚えたわー!あと、私の旦那と娘がいるんだけど旦那は今仕入れに行ってて娘はあまり部屋から出てこないから今は紹介できないわ、ごめんなさいねぇ!」

「いえいえ、お気になさらず」

「それじゃ、私は仕事に戻るよ。お2人さんは今からお仕事かな?帰ってくる頃には部屋は用意しておくよ!あ、お金は帰る時に全部まとめて貰うからよろしくね!」

「はい、ではいってきます!」

「行ってくる」

「行ってらっしゃーい!」

後ろで手を振るナージャさんに手を振り返しながら扉を開けようとすると、

「あの!」

後ろから誰かに声をかけられた。

振り返ると、1人の女の子が縋るような目でこちらを見ていた。

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