第14話 夜、宿にて回想

ギルドを出た私たちは、今日の宿を探すことにした。

それなりに時間もかかると思ったが、ギルドを出るとすぐ隣に宿、また少し歩くと宿、宿、宿。

私の視界にある店の半分以上は宿だった。

「宿、多いねー」

「まぁ港町だし、商人もよく泊まるしな」

「だとしても多くない?」

「まぁな。でもここら辺の宿はどこもいい宿ばっかだからどこ入ってもハズレはないぜ」

「そっかー、じゃあ明日もクエスト発注するしギルドには近い方がいいよね」

「そうだな。でもギルドに近いところは人気があるし混んでるんじゃないか?」

「そっか。じゃあ少し離れたところにする?」

「そうだな、・・・あそこはどうだ?」

アレンハイドが指す先を見ると、1軒の宿があった。

「あ、いいんじゃない?」

「よしじゃあ行こう。」

「うん。」


「ようこそいらっしゃいました、お泊まりですか?」

「あぁ。1泊頼む。」

「はーい!夕ご飯と朝ごはん付きで2人で合計200Gね!今日は混んでるからお2人さんの部屋は一緒でいいかい?」

え。

思わずアレンハイドと顔を見合わせた。

「部屋・・・ですか」

「うん!見てると2人とも仲良さそうだしただのパーティーメンバーなら問題あるけど兄妹なら問題ないかなって!ダメかい?一緒にするなら190Gに負けとくけど」

兄妹か。まぁ確かにアレンハイドと私はその位の年の差かもしれない。

顔が似てないから無理があるが、少なくとも私たちが今日知り合ったばかりだとは誰も思わないはずだ。

・・・もしかして今日会った人はみんな私たちのことを兄妹だと思ってるのか?

もしそうなら明日会った時に訂正しn

「じゃあ一緒で」

・・・へ?アレンハイド、今、何て?

聞き間違いだよね。

うん、だってさすがに今日会った人と、しかも異性で同じ部屋なんt

「はーい、じゃあこれ部屋の鍵!部屋は2階の1番左よ!お会計はチェックアウトの時にお願いねー!」

「わかった。」

「もうすぐ夕食だから夕食の時間になったらお呼びするから食堂に来てね、これが宿への地図よ!」

「あぁ、助かる」

「それじゃ、ごゆっくりー!」

私まだ何も言ってないんですけど。

それ以前にまだ思考が追いついてすらないんですけど。

「マイカ、行くぞ」

「・・・うん」

まぁ今日は混んでるみたいだし部屋決まっちゃったしいいか。

そう思いながらマイカは渋々ついて行った。


「お、広い部屋だな!これならゆっくり出来るな!」

「・・・ほんとだ、広いね」

「マイカどうした?さっきから何かおかしくないか?」

「・・・別に」

「いや、やっぱりおかしい。何かあっただろ。」

「・・・まぁ、それなりに」

「どうしたんだ?」

あぁ、もういい。

全て言ってしまえ。

「そりゃあおかしくもなるでしょ。

いくら混んでるし安くなるからとはいえ、普通今日会ったばかりの人と部屋を同じにする?しかも男女で!兄妹でもないのに!」

はぁ。何かスッキリした。

でも少し言いすぎたかな。

「あー、なんだそんなことか。」

前言撤回。もっと言えばよかった。

「そんなことって、そんな簡単に済ませることなの?それともこの世界の人はみんなこうなの?いや、違うよね、だってさっきの女将さんは普通のパーティーメンバーなら問題あるって言ってたし。」

「別によくないか?」

「よくない」

「へー、そういんもんなのか」

「そういうもんなの」

「・・・わかった、相談もせずに決めて悪かった、それは謝る。でも、嫌ならあの時言えばよかっただろ」

「は?普通の人は今日会ったばかりの、しかも異性と同じ部屋になるなんて思うわけないじゃん」

「でも安くなるなら同じにするだろ、それにベッドも2つあるし」

「しないよ!たとえいくら値引きされてもこういう時は普通Noって言わなきゃいけないの!」

「なんでだよ」

「普通ならそうだから!」

「わーかった、わかったから!わかりました、今度からは気をつけます!でも今日はもう取ったからいいだろ?」

「まぁ、そこは妥協するよ。でも、今日泊まってみてもしここが気に入ったら長期宿泊になるからその時は別にしてもらうから」

「はいはい」

「お客さーん、夕食の時間よー」

ちょうどいい所に女将さんの声が入ってきてくれた。

「・・・じゃあこの話はこれで終了でいいよな?」

「・・・私も異論はない。早く行こう」

「おう」


「わぁー、美味しそう!」

食堂に行くともう既に机の上には料理が置いてあった。

「今日はうさぎのシチューと猪のソテー、デザートは木苺のタルトよー!いっぱい食べてね!」

「いただきます!・・・美味しい!このうさぎのお肉柔らかくて最高!」

「猪も歯ごたえがあって美味いな」

「木苺甘酸っぱい!」

「ここの料理は全部美味いな。」

「私、明日からもここに泊まりたい!」

「そうだな、明日女将さんに伝えに行こう」

私たちは、あっという間に完食してしまった。

「ふぅー、ごちそうさまでした、美味しかった!」

「これは明日の朝ごはんも楽しみだな」

「うん、じゃあ、部屋に戻ろっか!」

「そうだな、早く寝て明日に備えよう」

夕食に満足した私たちは笑顔で食堂を後にした。


夜。

アレンハイドはもう寝てしまった中、私は1人で考え事をしていた。

・・・今日は本当に色々あった。

この世界では今午後10時30分だから、私が転移してきてからまだ10時間しか経っていないのか。

思えば約3日前にあった本とのの出会い。

思えばあそこから私の人は変わっていった。

最初は成功なんて本当にすると思っていなかった。

やるならガチで、と始めた準備。

成功しないだろうとは思いながらもどこかで成功したら面白いと思う自分がいた。

・・・そう言えば、この方法が書かれていた本、ホラーの棚にあったということは、この方法はホラーとかそういう感じだったのか。

でも、本で見た時には「異世界には自分以外の人がいない」と書かれていたが、バリバリいるではないか。

それに5階で乗ったのも男の人だったし。

まぁ、誰もやったことがないのだから、間違っているのがあたりまえか。

それにしても本当に疲れた。新しく獲得したスキルと称号の鑑定はあしたからゆっくり進めていこう。

そんなことを考えるうちに、私はいつの間にか寝てしまっていた。

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