第13話 ギルド、再び

「はー!やっと着いたねー!」

「あとはギルドに報告するだけだな!」

「素材、いくらで買い取ってくれるのかな?」

「単価はそんなに高くなくても、なんせあの数だしなぁ」

「いや十分高いよ!だって宿に何日泊まれると思ってんの!?」

「いや、宿は安いよ。なんせ洗濯も掃除も魔法使えばすぐ終わるし。料理はオプションだから別料金だけど」

なんと、魔法はそう使うこともできるのか。使うことはないかもしれないが覚えておこう。


「あれ?お2人は確かクエストを達成しに行ったのでは?」

ギルドに着くと、ラナさんに声をかけられた。

「はい、終わったので報告に来ました」

「はい、じゃあギルドカードを出してください」

「はい。・・・討伐証明部位も今出した方がいいですか?」

「はい、お願いします」

私はギルドカードと討伐証明部位を出そうとした・・・あれ?アイテムボックスから荷物出す時ってどうやってやるんだろう。

「どうされました?」

「いえ、ちょっと待っててください。」

まさか、そこでつまづくとは。

とりあえず、アイテムボックスを出すところからか。

「アイテムボックス」

そう言うと、先程大量に死体をしまった時とは違い、画面が現れた。

画面にはたくさんの四角が描かれていて、その中には全て違う絵があった。

・・・これ、もしかして持ち物一覧か?

ならこの中に討伐証明部位があるはず。


ピコン。

そんな音を立てながら現れた1つの四角。

それをタップすると、そこに「討伐証明部位 机に置く 何もしない 手に持つ」という文字が出てきた。

探していたものが自分から飛んできてくれて良かった。

私は「手に持つ」を選択すると、


ポンッ!

という音とともに討伐証明部位が机の上に現れた。

どうやらこれでいいようだ。

やっぱりシステムがゲームみたいだな。

「え、これって、あの神話にしか出てこないと言われている固有スキルのアイテムボックスではないですか!」

「え?これそんなにレアなの?」

「これはレアとかそんなレベルではありません!国内、いやこのアルドラ大陸全体を探してもあなた以外にいるかどうかという大変珍しいものです!」

今更だけどこの国は島国ではないのか。

それならいずれ他の国に行ってみるのもいいな。

とりあえず今は報告をしないと。

「アイテムボックスが珍しいのはわかったのですが・・・討伐証明部位もあるので、報告済ませてもらっていいですか?」

「・・・私としたことが、失礼しました。では、ギルドカードをお借りします。」

少し赤くなりながら、ラナさんは私とアレンハイドのギルドカードをスキャンした。

「それでは、お2人が発注されたクエストの確認をさせていただきますね。クエスト内容はブラック・モンキーの討伐、討伐指定数は30匹で合ってますか?」

「あ、それなんですけど、当初はその予定だったんですけど多めに倒しすぎちゃいました」

「それでしたらブラック・モンキーはすぐに繁殖するので問題ありません。むしろ倒しすぎて頂いてありがとうございます」

倒しすぎて頂いて、ってそんなに困っていたのか。あれだけ数がいればそうなるか。

「あ、そうだったんですね、よかった」

「ブラック・モンキー討伐のクエストはまだまだ沢山ありますので、今回の討伐数に合わせてクエストを追加発注しておきますね。」

「はい、お願いします!」

さすがラナさん、どうやらこの手のことは慣れているようだ。

「それでは続けます。討伐された場所は・・・東の森?え、これ本当に合ってますか?」

「はい」

「地図を見て進んだから間違いないぜ」

「まぁギルドカードに書いてあるから本当なんでしょうけど・・・お2人は本当に珍しい方ですね、それと運がとてもいいです」

珍しい?そう言えば最初にクエストを発注した時の受付けの人もまるで私たちが東の森に行くことを極端に嫌っているような感じだった。

「珍しい?運がいい?何がだ?」

「だって『 帰らずの森』から帰ってこられたんですよ!」

「帰らずの森?」

「え、知らなかったんですか!?」

ラナさんに驚かれてしまった。

「東の森は昔から『帰らずの森』と呼ばれていて、あの森に入った人はみんな森から帰ってこれないんですよ。だから、あのクエストは好んで発注する人なんていないし、発注しようとしても私たち受付けが念入りに確認をして、あの森でのクエストに関しては何があっても完全な自己責任で発注して頂くようにしているんですよ。」

そうなのか。そこまで念入りに確認されたような感じはしなかったが。

というか「帰らずの森」ってそんな話は微塵も説明されなかったような。

そう思いアレンハイドを見ると、彼もそうだったようで

「そうか?そんなに何回も確認されたようには感じなかったが・・・」

と言った。

「え、本当ですか?」

「はい。確か『本当にいいんですか?』と聞かれて討伐を行う場所と地図を確認して終わりでした。」

「そうですか・・・普通あの森のクエストを発注する冒険者の方には帰らずの森の話をしてそれでも本当にクエストを発注するのか確認をとるんですよ。」

そうだったのか。森に入らなくてよかった。

「そんなにですか・・・それでも発注する人っているんですか?」

「それがいるんですよ。あそこに住んでいる魔物自体はそんなに強くないんですが何せ住んでいる場所があの森なので報酬が普通より高めなんですよ。」

「それならどうしてこのクエストがE級なんですか?」

「申し訳ありません。クエストの級は基本的に魔物の強さで決まるんですよ。だから例えどんなに魔物の住んでいる場所が危険でも住んでいる魔物が弱ければそのクエストのランクは低く設定されるんです。」

「そうだったんですね。」

「私もこの決め方に関してはおかしいと思っているんですが・・・」

「いえ、あなたが謝ることではないので、気にしないでください。」

「ありがとうございます。それでは討伐数の確認をしましょう。」

そう言えばまだだっけ。

「あ、討伐証明部位は全部もらった袋の中に入ってます」

「分かりました。それでは、明けさせていただきますね。・・・えっと、これは・・・」

「何か問題でもありましたか?」

「・・・いえ。少々お待ちください。」

ラナさんはどこかへ行ってしまった。

「ラナさん、どうしたのかなぁ。アレンハイド、何かした?」

「何もしてねぇよ。それよりマイカこそ何かしたのか?」

「私だって何もしてないよ!というかラナさん、袋の中身を見て驚いてたよね?じゃあ袋の中に何かあったんじゃない?」

「だって1番最初に疑ってきたの俺じゃなくてマイカじゃん」

「はいはい、すいませんでしたー」

「袋の中かー。おかしいとしたら倒した数か?」

「え、そんなに倒したっけ?夢中で覚えてないや」

「多分結構な数だと思うぞ。だってあの水のやつでマイカが結構倒してたし」

「じゃあ100ぐらい?」

「いや、もうちょっといるんじゃないか?」

「うそ?まぁ、それはもう少ししたら分かるからいいや。」

「そうだな。」

「お待たせしました、それでは討伐数を確認しますね。」

大きめの箱のような何かを持ったラナさんが戻ってきた。

「それは何だ?」

「これは討伐した魔物の種類と討伐数がわかる魔道具です。どうなっているのか仕組みはわかりませんが。」

この世界には魔道具まであるのか。

実際に見てみたかったんだよなぁ。

「どうやって使うんですか?」

「この上に袋を置くと・・・あぁ、本当に東の森で倒してきたブラック・モンキーですね。数は・・・506匹!?あれ、これ壊れてるのかなぁ、申し訳ありません、もう少々お待ちください。」

ラナさんは箱―もとい魔道具を持ってまたどこかへ行ってしまった。

「506匹か、さすがに500匹超えてるとは思わなかった」

「私も」

「お待たせしました、これはさっきの魔道具と同じものですがこちらは1級品なので間違いはないはずです!」

・・・と、息を切らしたラナさんが走って戻ってきた。

袋を魔道具の上に置く。

「お待たせしました!数は・・・506匹ですね。もしかして合ってるのかな?でもそんなに倒すなんて、5つ以上の群れに襲われないと無理ですよ?」

「あー、多分その数値はあってると思いますよ。なにせ剣で結構斬っても先が見えなかったので」

「そんなに集めるなんて何したんですか?506ひきって、クエスト1回分が30匹だから、だから・・・えぇっと?」

ラナさん、計算苦手なのだろうか。

「16回分だな。あと4匹倒したら17回分だった」

「・・・そう!16回ですよ?それを半日かからずに終わらせてくるとか何者なんですか!」

「ただの人間ですよ?」

「普通の冒険者だ」

「あぁもう、お2人といると調子が狂うなぁ・・・と、とにかく!今回のクエストは16回分ということで、耳も大きいし高品質なので基本額300Gプラス200Gの合計500Gを16回分・・・」

「80000Gです。」

「・・・80000Gですね。はい、こちら80000Gになります。」

やった、初日にして思ったより稼げた。

「やったね、アレンハイド!」

「あぁ、とりあえず今日はもう夜遅いし宿でも探すか」

「そうだね。今日はもう休みたい。」

私たちはそんな話をしながらギルドを出た。

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