第12話 はじめてのクエスト2

「そんなこと言っても30匹だぞ?どうやってやるんだ?」

「ちょっと見てて!あ、剣準備しておいた方がいいかも」

「お、おう」

アレンハイドが剣を出したのを確認すると、私はスマホを取り出し、目覚ましアラームをかけた。

今は午後3時52分か、なら3時53分に設定すればいいか。最大音量で、目覚まし音は・・・っと。

これでOK!

「終わったよ、あともう少しで来るから耳塞いだ方がいいかも」

そう言って私はスマホを地面に置き、耳を塞ぎながらスマホから離れた。

私が耳を塞いだのを見て、

「そんなにうるさいのか?」

と訝しげに耳を塞ぐアレンハイド。

その瞬間、

ジリジリジリッ!!ジリジリジリッ!!

静かな森に突如響く大音量のアラーム。

「うぉっ!!びっくりしたぁ・・・」

どうやらスマホをアレンハイドの近くに置いていたせいで、アレンハイドは耳を塞いでもうるさかったようだ。

「あれ、なんか聞こえないか?」

そう言われて、私はアラームの音量を少し下げた。

・・・確かに、アラームの音に混じって、何か聞こえる気がする。

・・・ドドドドドドドドドドドドドドドッ

音はだんだん近づいてくる。

これはきっとブラック・モンキーの群れの足音だ。

「アレンハイド!準備!」

「本当に来た・・・」

よし、成功だな。

次は複数に上手く刺さるような攻撃魔法を考えないと。

討伐証明部位が燃えてはまずいので、燃える系の魔法は使えない。

できれば死体も素材として売りたいので綺麗な状態で仕留めたい。

そうなると・・・1番手っ取り早いのは電気か?

なるべく電気でのダメージが大きい方がいいから水をかけてから電気を通そう。

・・・その前に、剣の扱いにも慣れておきたいから最初の方は剣を使おう。キツくなったら魔法で一気にやろう。

あれ、なんかみんなこっちに向かってこないか。

何か忘れているような。

・・・アラーム切ってない!切らなきゃ!

私は大急ぎでアラームを切った。

私が1人で焦っていると、ブラック・モンキーは先頭の1匹の姿がハッキリ確認できるぐらい近づいてきていた。

ここからが本番だ。

「よし、行くぞ!」

「うん!」

私は剣を抜いた。

スパッ。スパッ。スパッ。スパッ。

面白いように剣が狙った場所へ当たる。

耳を傷つけないように慎重に・・・と言っても首だけを狙っているので耳には当たらない。

それにしても、数が多いな。

私だけでももう30匹は余裕で倒した気がする。

剣はもういいや。

あとはもう魔法で倒そう。

群れが大きいから少し大きめの魔法にしよう。

「アレンハイド、下がって!」

「お、おう!」

アレンハイドが下がったのを確認して、私は手から大量の水を出しているところをイメージしながら、

「スプラッシュ!」

バシャアアアアアアアア。

大量の水が群れを襲う。

やがて、水が消えると、ブラック・モンキーたちはみんな動かなくなっていた。

「あれ?みんな動かないなぁ。鑑定!」

私はブラック・モンキーを鑑定すると、名前が


ブラック・モンキーの群れ(死亡済み)


となっていた。電気を流そうと思っていたが、この様子だといらないな。


ピロリーン。

―レベルが4になりました。

―HPが80になりました。

―魔力回復量が100/1sになりました。

― 称号「はじめてのクエスト」を獲得しました。

―称号 「はじめての実戦」を獲得しました。

―スキル 「想像力」を獲得しました。

―スキル 「魔法強力化」を獲得しました。

―スキル 「MP見える化」を獲得しました。


クエスト1つに対して得たスキルすごいな。

「お、おいマイカ、あんな大量に魔法使って大丈夫か?」

「え?うん。大丈夫だよ?」

「本当か?念の為、ステータス見ておいた方がいいんじゃないか?いくらマイカでもあのりょうの水を出すのはキツいだろ。」

そう言われたのでステータスを確認しようとすると、視界の左下の方に何か映っていることに気がついた。


残りMP: 99,999


どうやら魔力はもう全て回復したようだ。

「アレンハイド、ステータス見たけど大丈夫みたいだよ。」

「そうか。なら討伐証明部位を集めるぞ。」

「・・・ねぇ、これ絶対30匹以上いるよね?」

「そうだな。とりあえず、討伐証明部位だけ全て切り取って残りはギルドに売りに行くか?」

「うん、そうしよう。」

ここからは地道な作業だった。受付けの人の言う通り、膨大な数だったが案外すぐ終わった。

「ふぅ。とりあえず終わったな。さて、残ったこの死体はどうしようか。」

「確かに。全部持って帰るのは無理だもんね。」

「できればそうしたいけどな。」

・・・何かアイテムボックス的なものがあればいいのに。


ピロリーン。

―固有スキル 「アイテムボックス」を獲得しました。

―固有スキル 「思念操作」を獲得しました。


スキルって「こんなのが欲しい」って思っただけで手に入るようなものだっけ?

まず思念操作って何?

しかもこれだけ固有スキルなのは何故。

まぁとりあえずこれで全部持って帰れるからいいや。

どうやって開くのかわからないがやってみよう。

「アイテムボックス?」

疑問形なのはこれでいいのかわからないからで、決してアイテムボックスに呼びかけているわけではない。


すると、目の前に茶色い木箱が現れた。

蓋はしまっているが、これがアイテムボックスか?

蓋を開けて見ると、底が黒かった。

いや、そもそも底というものがなかった。

本来なら底があるはずの部分には、何か得体の知れないものが渦巻いていた。

これが虚無というやつだろうか。

使うのが怖いからとりあえず鑑定してみよう。

するとこの箱の情報が見えた。


アイテムボックス

耐久値: ∞

容量: ∞

この箱の中にある物は好きな時に出し入れできる。

普通ならこの箱に入らないものも収納できる。

なお、この箱に物を入れると物の時間が止まる。


予想はしていたが、これがアイテムボックスなのか。これに触るのは少々勇気がいるな。とりあえず、これで荷物については必要なさそうだ。

「アレンハイドー、アイテムボックスあるから持って帰れるよー」

「・・・マイカよ、何故それをもっと早く言わない」

「だって使えるようになったの今だし」

「今?今までは何らかの影響でアイテムボックスが使える状況ではなかったのか?」

「なんかさっき突然スキル獲得した」

「さっき!?突然!?」

「うん、アイテムボックス的なのないかなーって思ってたら突然」

「スキルって、そんな簡単に手に入るのか!?」

「わかんないけど、いいんじゃない?これ全部持って帰れるだけの容量あるし、持って帰ろうよ!」

「そうだな。今何が起こったのかよくわからないが、とりあえずギルドに戻るか。もう暗いし」

死体を全てアイテムボックスに入れると、もう午後5時を少し過ぎたところだった。

「今日はギルドに報告しに行ったらそのまま宿探して泊まろう」

「わかった!」

こうして私たちは再びギルドへと歩みを進めるのだった。

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