第11話 はじめてのクエスト1
ギルドに戻ってきた私たちは、早速クエストを探し始めた。
色々なことがあったようにも思えたが、まだ私が来てから3時間も経っていないようだ。
これなら小さいクエスト1つぐらいはできそうだ。
「アレンハイド、今日中に終わりそうなクエストってどれだと思う?」
「今日中か、そうだな・・・これならどうだ?これはE級だし、魔物もそんなに強くないんじゃないか?」
―ブラック・モンキー討伐―
内容: ここから5km東の森に出るブラック・モ ンキーの討伐
討伐指定数: 30匹
討伐証明部位: 耳(2つで1匹分とカウント)
報酬: 基本額300G+耳の大きさによって上乗せ
備考: ブラック・モンキーは音に敏感なので、音を立てないように倒してください。音を立てると、群れで一斉に襲いかかってきます。
冒険者とか武器とかいう単語が出てきた時点で察してはいたが、やはりこの世界には魔物もいるのか。
早く会ってみたい気もするが、実力的に大丈夫なのだろうか。
「いいけど・・・私の実力でも大丈夫かな?」
「大丈夫じゃないか?実戦経験が少ないとはいえ、俺たち一応C級だし」
「うーん、そうだね。これならいけそう!」
「よし、じゃあ発注しに行こう!」
そう言って受付けに行くと、今日はラナさんではなく別の人だった。
「本当にこのクエストでいいんですか?」
と言われた。
「え、何かあるんですか?」
「東のブラック・モンキーはなぜか他に比べて少し強いんですよ。それに群れで襲ってくるので大変ですよ?」
「そうなのか」
「アレンハイド、どうする?私はこれでいいけど」
「俺もだ」
「じゃあ、これでいいです」
「・・・わかりました。それでは、討伐証明部位はこちらの袋に入れてください」
「わかりました」
「あ、東の方に行く人ってよく道に迷うので気をつけてくださいね!」
「あぁ。・・・地図無いか?その森の場所が知りたい」
「貸し出すことはできないんですけど今この場でお見せすることは可能ですよ」
「嘘だろ・・・」
「あ、それでいいです」
「では、お持ちしますので少々お待ちください。」
少しして、受付けの人が戻ってきた。
「ギルドがここです。ここが今回行く森です。」
ギルドの右斜め上あたりに森がある。今回はそこへ行くようだ。
私はスマホを取り出し、その地図全体をカメラに収める。
カシャッ。
「よし、もう地図は大丈夫。行こう、アレンハイド」
「お、おう。」
「すいません、ありがとうございました」
・・・あれ、返事がない。
不思議に思って受付けを見ると、受付けの人が固まっていた。
「・・・あのー、大丈夫ですかー?」
そう言うと受付けの人はハッとして、
「し、失礼しました。その四角い箱は魔道具ですか?」
あ、この世界にはスマホってないんだっけ。
「まぁ、そんな感じです。」
「そうなんですか!私は見たことないものなんですが、何ができるんですか?」
「んー、結構色々できますね。例えば時計にもなるし今のように1度見たものはある程度なら覚えられるし」
「それはすごい便利ですね!自作ですか?」
「・・・はい。まだ試作品なのですが、もっと色々な昨日をつけたいと思っています。」
アレンハイドがジト目でこっちを見る。
あー、・・・気にしないふりをしよう。
ピロリーン。
―スキル 「ごまかし」を獲得しました。
この音が脳内だけで本当によかった。
「そうなんですか!もしできたらおしえてください!」
「わかりました。・・・そろそろクエストに行きますね。」
「あ、ごめんなさい!それでは、ご武運をお祈りします!」
笑顔で送り出された私たちは、地図を見ながら進んだ。
「それにしてもそれ便利だな、コンパスにもなるし時計にもなるとか。それ拡大もできるんだな。」
どうやらギルドで見せてもらった地図は街全体の地図のようだったため、拡大して道を確認しながら進んでいた。
「うん。」
「それ、こっちの世界で作れないか?」
「多分無理だと思うよ。こっちの世界にはない材料があるし。」
「その色が変わるやつか?」
どうやら画面のことを言っているらしい。
「それもだけど、それ以外にもある」
「そうか、作れたら便利だと思ったんだけどなぁ・・・」
「文明が発達すればできるようになるよ、きっと」
「そうか・・・なぁ、それって魔法で複製とかできないのか?」
「複製?」
「あぁ。複製すると、それと全く同じものができるんだ。」
それはつまり、データもということか?
そうすると私のは指紋認証つきだから私以外誰も開けられなくなるのだが。
まぁ実験してみよう。
「うーん、あとでやってみる。」
「やってみてくれ。お、森に着いたぞ。」
本当だ。
「えっと・・・この森、結構広いね。迷子になりそう。」
「そうだな。何か目印になるようなものがあるといいのだが・・・」
「目印か。うーん・・・」
目印か。ヘンゼルとグレーテルみたいに小石を落としていくか?
いや、この辺の小石は土と色が変わらないからダメだ。
スタート位置に懐中電灯を置いて行くのはどうか。
幸い、元の世界から持ってきたものは全て持っている。
そう思って懐中電灯を確認したが、光はそんなに強くはなかった。
迷うのを覚悟で進むしかないのか。
いや、待てよ。
倒しに行くのが無理なら、向こうから倒されに来てくれればいいのではないか。
それには向こうがこっちに来たくなるようなこと、向こうが行かざるを得なくなるようなことをしなければならない。
何かないのか。
―そうだ。
「あ、ちょっと待って」
「どうした?」
「目印がなくても倒せる」
「え?だって無闇に動いたらこっちが死ぬかもしれないんだぞ?」
「こっちから行くのが無理なら、向こうをおびき寄せればいいんじゃない?」
「何か方法があるのか?」
「うん。これならできる」
私はニヤリと笑った。
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