第7話 私、結構強くない?
「はあああああっ!」
気合いと共に、私は斬りかかった。
当然のように私の攻撃はウォルフさんに躱される。
2回目、3回目と続けて斬りかかるが、それも全て躱される。
「あぁ?嬢ちゃん、まだ本気出してないな。そんなんじゃ当たらないぜ?」
さすがはウォルフさん、見抜いてたか。
でも、これは想定内。
「はぁっ! はっ!」
ウォルフさんの言葉に煽られて本気で斬りかかる「ふり」をする。
「おっ、嬢ちゃんも本気出してきたな。でもまだまだだぜ!」
・・・今だ!
私は手から炎を出すのを想像し
「ファイヤーボール!」
と叫んだ。
その途端、手から火の球が出た。
「お?魔法か。まぁ避けられ・・・うぉっ!?」
・・・そう、ウォルフさんは絶対に避けられない。
だって私がこの火の球を「当てよう」と思って出したから。
スキル 「絶対攻撃」は、当てようと思った攻撃を必ず当てられる。
剣の攻撃も当てることが出来るので、それも考えたが、先ほどのアレンハイドとのやり取りを見ていたウォルフさんは、私が何らかのスキルを使ったと考えるだろう。
私のステータスは異常らしいので、人に見せるのは得策ではない。
そうなると、私に使えるのは魔法だけだ。
魔法は使ったことがない。
しかし、イメージさえできればなんでもできる、と言っていたアレンハイドの言葉を信じ、この作戦を立てた。
というか私にはこれしかなかった。
最初は剣を使い、その後しばらくしてから火の球を放つ。
そうすることによって、ウォルフさんは私が「隙をついて火の球を出す」という作戦だったのだと思うだろう。
それならば私が特殊なスキルを持っていることを見破られずに済む。
私の放った火の球は、思ったより大きかった。
不規則な軌道でウォルフさんの元へ飛んでいき、腰にクリーンヒットした火の球は、そのままウォルフさんを壁へとぶっ飛ばし、消えていった。
「ウォルフさん!?」
私は急いでウォルフさんの元へ走った。
ウォルフさんは、気絶していた。
「え、どうしよう、こういう時ってヒール?あれ、でもヒールってどんな感じだっけ、使ったことない・・・でもやってみるしかない!」
私はウォルフさんに手をかざして、私の手から出た光がウォルフさんを包み込むようなイメージで、
「ヒール!」
・・・ちょっと思ってたのと違った。
光が思ってたのより強かった。私は思わず目をつぶった。
ピロリーン、という音がまた響いた。
―レベルが2になりました。
―HPが60になりました。
―称号「初めての攻撃」を獲得しました。
―称号「初めての回復」を獲得しました。
―称号「魔法使い」を獲得しました。
―スキル「自動回復」の魔力回復量が70/1sになりました。
結構簡単にレベルって上がるんだな。まぁ、最初だからだろうけど。
「うぅ・・・」
という声が聞こえ、私は目を開けた。
すると、そこには目を覚ましたウォルフさんがいた。
「ウォルフさん!?大丈夫ですか?」
「あ?・・・あぁ、何ともないみたいだ。それより嬢ちゃんすげぇなぁ!あんなデカい火の球は俺が試験官をやってきて17年で初めてだぜ!」
火の球はもっと小さいのか・・・覚えておこう。
「そんで嬢ちゃん俺にヒールかけただろ?普通なら試験とはいえ戦った相手にヒールなんてかけないし、かけても疲れが取れる程度なんだが、何だか今までより力がみなぎってくるぜ!」
やはり、ヒールも強すぎたようだ。
力の調節というのは難しい。
「さっき俺は嬢ちゃんの度胸に惚れたって言ったがなぁ、俺は嬢ちゃんの強さと優しさにも惚れちまったぜ!嬢ちゃん、名前は?」
「和泉 舞華です。」
「マイカだな!しっかり覚えたぜ!よし、じゃあ受付けに戻るか!兄ぃちゃん呼んでこい!」
そう言われた私はアレンハイドの所へ行った。
「アレンハイドー!」
・・・返事がない。
「アレンハイドー?」
私は肩を揺さぶった。
「すぴー・・・うぉっ!?」
「アレンハイド、私も受かったよ!」
「おぉ、そうか!それはよかったな!」
「うん!・・・というか、アレンハイド、寝てた?」
「あ、あぁ、試験で疲れて・・・」
「そっかー、ヒール!」
「この疲れがなかなか取れなくてさぁ・・・あれ?」
「今ヒールかけてみた。」
「おお、腕が楽だ!ありがとうな、マイカ!」
「うん。・・・あ、そうだ。ウォルフさんが受け付けに行くから着いてこい、だって。」
「あぁ、じゃあすぐ行こう!」
私たちはウォルフさんの元へ急いだ。
「おう、お前ら、来たか!そんじゃ、行くぞー!」
私たちはあの長い階段を登り、受付けに行った。
「おぅい、ラナー、試験終わったぞ!」
ウォルフさんが声をかけると、先ほどの受付けの人がやってきた。
あの人は、ラナさんというのか。
「ウォルフさん!早かったですね!それで、結果の方は?」
「2人とも合格だ!」
「わかりました、それではギルドカードを・・・」
「待て、それに関して少し相談があるんだが・・・」
「相談ですか?」
「あぁ。それじゃ、悪いな2人とも。ちょっくら相談しに行ってくるから、そこで大人しくは待っててくんねぇか?」
そう言い残して、ウォルフさんとラナさんは奥の方へ消えていった。
「なんの相談してるんだろうね、2人とも」
「俺たちの事なのは違いないな」
そんな話を2人でしていると、
「おい、お前ら2人、見ねぇ顔だなぁ、このSS級冒険者のケイン様に何か言う言葉があるんじゃねえのか?あん?」
早速絡まれた。
まぁ、小説では結構定番のイベントだからある程度覚悟はしてたけどさ。
「おい、初対面に向かってそれはないだろう!」
アレンハイドがそれに反応する。
「何だと?このケイン様に反抗するのか!?」
・・・まずいな。
「アレンハイド、こんな人なんて相手にするだけ無駄だからほっとこう。」
「あ、あぁ、そうだな。すまん、ついカッとなってしまった。」
「何だとそこの女ぁ!貴様もこの俺に 反抗するのか!?」
今度は私か。
周りの人も集まってきてるし、下手に大騒ぎしたくないのだが。
「もういい、俺ぁ女には手を出さねぇつもりだったけどそれもお終いだ。まずはそこの女からぶちのめしてやる!」
なんか面倒なことになったけどまぁいいや。こっちにはスキルがあるし。
「マイカ、大丈夫か?」
「大丈夫、スキルあるし。そっちこそ怪我しないでよ?あと、危ないから少し離れてて」
「わかった。俺は一応ギルドの人を呼んでくる。」
「お願い。」
そう言うと私は絡んできた男―もといケインの方へ向き直った。
「おいおい、あの男、女を置いて逃げてったぜ!」
「置いていったんじゃない、ギルドの人を呼びに行ったの。」
「そんなのはどうでもいい。それより、あいつのいない間にお前をぶちのめしてやるよ!」
そう聞こえるや否や、ケインは殴りかかる。しかし、
ぼよよ~ん。
という、どのか間抜けな音とともに、結界がケインの拳をはね返した。
「あ!?どうなってんだ!?」
2度、3度と殴りかかってくるケイン。
ぼよよ~ん。
ぼよよ~ん。
ぼよよ~ん。
その度に、拳は間抜けな音とともにはね返された。
それでも執拗に殴ってくるケインに私は嫌気がさした。
今度は、さっきより大きい火の球を想像し、
「ファイヤーボール!」
と言う火の球がケインの顔面に直撃した。
少し大きすぎたか。だが、これくらいがちょうどいいだろう。
これに懲りて2度としなくなるといいが。
「うごっ!く、くそ、覚えてろよ!」
そう言ってケインは動かなくなった。
あれ、私、ひょっとして殺しちゃった?
その時、アレンハイドがギルド職員を連れて戻ってきた。
「マイカ、大丈夫か?」
「うん。でも、この人が・・・」
「あぁ、こいつ?・・・大丈夫、ただ気絶しただけだから。」
「なんだ・・・びっくりしたー!」
あれ、私、ひょっとして強くないですか?
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