第6話 ギルドに来ました

ギルドの中には、たくさんの冒険者がクエストを探したり他の冒険者と話したりしていた。

「ここがギルドかー!」

「結構広いな、それに人が多い」

「さすが国内有数の港町なだけあるね!」

すると受付けの人が話しかけてきた。

「こんにちはー、何かご用ですか?」

「あ、はい!私たち、冒険者登録をしたいんですけどー!」

「わかりました、ではこちらに必要事項をご記入ください。」

・・・そういえば私、この世界の文字書けない。

スキルに読み書きってあったけど、どうすればいいんだろう。

とりあえず、日本語で書いてみよう。

すると、勝手に体が動いた。

驚いて紙を見ると、多分この世界の文字であろう言葉が紙に書かれていた。

「おいマイカ、お前ここの文字・・・」

アレンハイドが耳打ちしてきたので、

「わからない。多分、スキルの影響じゃないかな?」

と返した。

そうこうしているうちに、記入が終わった。

「確認致しますので、少々お待ちください」

あ、出身地日本って書いちゃったけどいいか。

「確認終わりました、2人とも特に記入漏れはございませんでした」

あ、日本でよかったんだ。

「では次に実技試験を行いますので少々お待ちください」

「は、はい」

え!?実技試験!?そんなの聞いていない。

「ねぇアレンハイド、実技試験って何やるの?」

「多分模擬戦闘じゃないか?」

「模擬戦闘!?私、武器を持ったことすらないよ!?」

「嘘だろ!?それで冒険者になりたいとかいってたのかよ」

「だって実技試験とか、さやると思ってなかったんだもん!そういうアレンハイドはどうなの?」

「俺は実家で少しやってたから自信あるぜ」

「え、じゃあ戦う時のコツとか教えて!なるべく簡単なやつ!」

「簡単なやつ!?・・・まぁ、マイカの場合は体力ないから早いうちに仕掛けた方がいいな。」

「仕掛ける?例えば?」

「そうだな・・・例えば魔法で攻撃する、とかかな」

「魔法?使い方わかんない、教えて!」

「今から!?・・・えーっと、この世界ではイメージできるものなら何でもできるぞ」

「え!本当?詠唱とかは?」

「イメージを固めるためにしている人もいるけど、慣れれば必要ないな」

相手にどの魔法を使うか悟らせないようにするには、魔法を詠唱無しで使う必要があるが、今から練習している時間はない。

なるべく短い詠唱で魔法を成功させなければ。

「まあマイカの場合はスキルが何とかしてくれるさ、頑張れ!」

「えぇ~、そんな他人事な・・・」

「お待たせ致しました、では地下の訓練場にお連れ致します。」

ああ、受付けの人が来てしまった。魔法をぶっつけ本番で使わなければならないのか。


受付けの人の後についていき、長い階段を下ると、大きな扉の前に着いた。

「この中に試験官の方がいらっしゃいます、ご幸運をお祈りします。」

そう言うと、受付けの人は扉を開けた。

「ついにかー、頑張ろうぜ!」

「私は不安しかないよ・・・まぁ、何とかなるか!」

「ああ、クヨクヨしてても仕方ねぇ!行くぞ!」

「うん!行こう!」


中に入ると、そこは闘技場だった。

広い、とても広い。

そして、天井があるべき場所には空があった。

なんだここは。

隣を見ると、アレンハイドも驚いた顔をしていた。

私たちの驚きを察したのか、

「ここは空間を歪めてあるんだ。この地下室はまるごと異空間なんだぜ」

そう前方から声が聞こえた。

声のした方に顔を向けると、いかにも冒険者というようなマッチョの人が立っていた。

まるでボディービルダーみたいだ。

私がこんな人と戦って勝てたら奇跡だ。

「おう、俺が試験管のウォルフだ、よろしくな!」

ウォルフ・・・強そうな名前だ。

「よ、よろしくお願いします」

私は辛うじて絞り出した声で挨拶をした。

「こいつに勝てとか地獄だろ・・・」

アレンハイドに至っては心の声がダダ漏れだ。

「ハッハッハ!兄ぃちゃん、実技試験では模擬戦闘はしないぜ?」

「そうなのか・・・よかったな、マイカ」

「お?そっちの嬢ちゃんも実技試験受けるのかい?」

どうやら私は付き添いだと思われていたらしい。

「え、あ、はい、そうです」

「嬢ちゃんだとちょっと危ないかもなぁ!大丈夫かい?怪我しても責任はとれねぇぞ?」

「大丈夫です」

「そうかぁ!嬢ちゃんは随分神経が図太いなぁ!」

「あはは・・・」

私は苦笑してその場を濁した。

「さ、まずはそっちの兄ぃちゃんからだな。試験は、俺に1発でも攻撃を当てたら勝ちだ!お前らは武器でも魔法でも好きに使っていいぞー。俺は武器も魔法も使わねぇがな。」

「あれ?それなら私たちにもできそう!」

「ハッハッハ!嬢ちゃん、この街に来たばっかりかい?なら教えてあげるが、俺が試験官になってから俺に攻撃を当てた人間は1人もいねぇぞ?」

「え?それじゃあ、今冒険者をやっている人達は・・・」

「あのな、試験ってのは冒険者の素質があるのか見極めるためのモンなんだ。だから俺に攻撃を当てられなくても、試験には合格できるんだよ」

「あ、そうなんですね」

「おし!そろそろ始めっか!兄ぃちゃん、準備はいいか?」

「・・・あぁ。いつでもいいぞ。」

「じゃあ行くぞー、用意、始め!」

「うおりゃああああああああぁぁぁ!」

アレンハイドは腰についていた剣を使っている。

動きは・・・それなりに速いし、なかなか良い。

「おっ、なかなかやるなぁ兄ぃちゃん!剣筋も悪くない!」

しかし、ウォルフさんはそれ以上に速い。

アレンハイドの剣をスイスイ躱している。

強い。さすが試験官だ。

こんな人に私は戦って勝てるのだろうか?

「はぁ・・・はぁ・・・」

アレンハイドの息が切れてきた。

「兄ぃちゃん、疲れてきたな。よし、試験はここまで!」

その言葉を聞いた途端、アレンハイドは

「疲れたあああああああああ!」

と叫んで地面に寝転んだ。

そこにウォルフさんが近づいてきて、

「兄ぃちゃん、よくやったな!荒削りだが、筋はなかなか悪くない。合格だ。おめでとう。」

「おめでとう、アレンハイド!」

「あぁ、次はマイカの番だ。頑張ってこいよ。」

「うん!・・・あ、アレンハイド!」

「何だ?」

「アレンハイドの剣、借りていい?」

「別にいいが・・・使えるのか?」

「さっき見たから、多分。」

「・・・怪我だけはするなよ。」

「わかってる。」

「おいおい嬢ちゃん、嬢ちゃんが剣って、使えるのか?」

そのやり取りを見ていたウォルフさんが声を掛けてきた。

「はい。多分。」

「おいおい、怪我しても知らねーかんな!で、次は嬢ちゃんの番だが、本当に大丈夫なのかい?」

「・・・はい。お願いします。」

「いい度胸してんな。まぁ、嬢ちゃんはその度胸に免じて、俺が合格させることが決まってるんだが、一応試験はやるぞ。」

「はい。・・・え?今何て?」

「だから、嬢ちゃんは俺が合格させる、って言った。」

「え、いいんですか?」

「あぁ、嬢ちゃんの歳で試験受けようなんて人、男でもなかなかいねぇよ。俺はお前のその度胸に惚れたぜ!ま、惚れたって言うとそこの兄ぃちゃんが怒りそうだから、言えねぇけどな!」

「ほ、惚れたって・・・でも、合格させてくれるのは嬉しいです!ありがとうございます!」

「おぉ、じゃあ早速試験やるぞ!ルールはさっき聞いたな?」

「はい!」

「じゃあ行くぞー。用意、始め!」

そして、私の試験が始まった。

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