第4話 街にて

「よっしゃ、やっと着いたぜ!」

街の検問所に着いたようだ。

「ここが街かー!あそこでやってるのは・・・検問?すごい列!」

「正解!俺たちも並ぶぞ!」

「それにしても、人が多いなー。」

「ここ、ソルーナはフィランサ王国でも有数の港があるからな!」

「本当だ!言われてみれば、海の香りがする!」


そんな話をしていると、私たちの番になった。

「何か身分証はお持ちですか?」

学生証は持っているがこの世界では使えないだろう。

「持ってないです・・・」

「俺もだ。」

「そうですか。今回は何の目的でこの街へ来たのですか?」

何の目的で?・・・まぁ、ここは適当に何とかしよう。

「えと、観光です」

「あぁ、この街には有名な教会がありますしね。あ、そうだ!もしご飯を食べるなら教会を出て右に少し行ったところにあるお店に行った方がいいですよ!」

「あ、ありがとうございます!」

「それでは、よい旅を!」


・・・はぁ、何とかなった。

「身分証って無くてもいいんだね。」

「まぁ、この街は治安もいいしな。」

「門番さんもいい人だったし、それぐらいいい街なんだね。」

「よし、じゃあさっき教えてもらった店に行こうか!」

「うん!・・・あ」

「どうした?」

この世界のお金、持ってない。

「お金、持ってないや・・・」

「ああ、そういやマイカってこの世界の人じゃなかったよな」

「うん。・・・って、ええ!?なんで知ってるの!?」

「いや、だってさっきステータス見たし」

!? この人は、私が怖くないのか。

どの時代でも、「普通」ではない人は怯えられ、虐げられてきたのに。

「よくそれで一緒にいられるなぁ・・・」

「?何でだ?」

「だって、怖くないの?」

「怖い?何がだ?」

「だって、異世界から来て、よくわかんないスキルもいっぱいあって、」

「異世界から来て、それがどうした?同じ人間じゃないか!見たことないスキルなんてまだこの世の理が解明されてないんだからいっぱいあるに決まってんだろ!それに、それを言うならマイカは俺のことが怖くないのかよ?マイカから見たら、俺こそ異世界人だぞ?」

私の言葉を遮るように、アレンハイドは一気にまくし立てた。

ああ、私、なんて勘違いをしていたのか。

彼は、いい人だ。少しナンパ男っぽいけど。

私は、少し俯きながら、

「・・・最初は怖かったよ、女の人の化け物だと思ってたし。でも、普通の人ではなかったけど、女の人の化け物じゃないって知って、最初に私と話す時に剣置いてくれて、いい人なんだなって思ったから、今は怖くないよ。」と答えて、ナンパ男っぽいけどね、と心の中で付け加えた。

ここまで言って、アレンハイドの顔を見ると、彼は驚愕の表情を浮かべていた。

「ちょっと待て、どっからどう見ても俺は男だろ!?それと普通の人ではなかったって、俺は普通の人だぞ!?」

「あ、女の人の化け物っていうのは、こっちの話だから気にしないで!」

「お、おう。じゃあ、普通の人ではなかったってのは?」

「そ、それは、最初からいきなり名前呼びされて、」

「え?それだけで?」

「しかもよくよく考えたら私1人と話すためだけに剣まで置くだろうかって思って、」

「それはマイカが剣を見て怖がってたから・・・」

「あと、チャラいと思ってたのに急にシリアス風になったり、キャラ定まってないのが・・・その、変わってるな、って。」

「ちょっとコメントに困るんだが・・・まぁ、でも今は普通だと思ってるんだよな?」

「えーと・・・いいこと言うけどキャラの定まらないナンパ男?」

「せめて『普通』にしてくれよ・・・」

「じゃあ普通の行動してよ」

「というか、マイカもタメ語だし俺のことアレンハイドって呼び捨てじゃん!」

「それは、アレンハイドがタメ語でって言ったからだし、呼び捨ても私がアレンハイドさんって言ったら呼び捨てでって言ってきたからでしょ!」

「え、そうなのか?」

「そうだよ!自分で言ったことも忘れたの?」

「そうか、いや、そうだな、確かに言った、すまない」

「思い出したならいいけど・・・」

「さて!だいぶ脱線しちまったな!お金ないんだっけ?俺が奢ってやるから気にすんな!」

「あ、ありがとう・・・じゃあ行こう!」

よかったぁ・・・けど、自分でお金を稼ぐ方法も探しておかないと。

そうだ、アレンハイドに聞いてみよう。

「ねぇアレンハイド、この世界で私でもお金を稼げる方法って何かある?」

「急にどうしたんだ?」

「これから先、1人で生活するにはお金が必要でしょ?だけど私1文無しだから、どうにかしてお金を稼がないとなー、って思って」

「あー、それなら冒険者とかがいいんじゃないか?最初の方はそんなに儲からないかもしれないけど、強くなれば高い報酬のクエストが出来るようになるし、そこそこ儲かると思うぞ」

「冒険者かー、でもギルドで登録とかあるし装備にもお金かかるよね?初期投資は少ない方が・・・」

「そうだな。・・・この世界のこと知らないはずだよな?」

「え?ああ、さっきの知識は昔ゲームで見たから」

「ゲーム?異世界では、冒険者ごっことか流行ってたのか?」

「あー、そっちのゲームじゃなくて、スマホとかでやるゲームもあるの」

「すまほって、さっきの四角い箱のことか?異世界はすごいなぁ・・・」

「・・・で、それならギルドに行かないとね。」

「ああ、だがご飯食べてからにしようぜ。お腹空いてるし。」

「そうだね。」

そんな会話をしながら、私達はお店に向かった。

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