第2話 ようこそ異世界へ!?
ドアの向こうは、草原だった。
それは草原以外の何物でもなかった。
草原しかなかった。
ふと、私は後ろが気になったので振り返ると、そこには5階で乗ってきた男の人の姿があった。
気にしないようにして私はドアの外へと1歩を踏み出した。
ピロリーン、という音が突然脳内に響いた。
― 称号「異世界人」を獲得しました。
― 称号「最初の1歩」を獲得しました。
― スキル「多言語理解」を獲得しました。
― スキル「読み書き」を獲得しました。
― スキル「鑑定」を獲得しました。
― スキル「瞬間移動」を獲得しました。
―スキル 「敏捷性」を獲得しました。
― スキル「自動回復」を獲得しました。
― スキル「絶対防御」を獲得しました。
― スキル「絶対攻撃」を獲得しました。
― スキル「写真記憶」を獲得しました。
― スキル「鍛冶職人」を獲得しました。
― スキル「天才的思考」を獲得しました。
― スキル「器用」を獲得しました。
・・・何これ?まぁいいや。
とにかく、記念すべき異世界第1歩。
「やったー、ついに異世界に来たー!」
つい、私は口に出してしまった。それも、後ろの人には確実に聞こえているであろう大声で。
ぷっ、という音が聞こえて私は後ろを振り返った。
後ろの男の人が、笑いを堪えていた。が、やがて耐えられないといった様子で大声をあげて笑いはじめた。
私は恥ずかしさのあまり、大声で
「笑うなあああ!」
と叫んでしまった。
一瞬の沈黙の後に、また男の人が笑いはじめた。
男の人は息も絶え絶えになりながら、
「いやぁ、ごめんごめん!君があまりにも面白いもんだから、笑いが止まらなくて!」
と喋りかけてきた。
私は戸惑った。
本来であれば女の人が乗ってくるはずだった5階で乗ってきたこの男の人。
・・・もしかしてこの人は女なのだろうか?
だとしたら喋ってはいけないのではないか。
そんな私の気持ちを汲んだかのように、男の人は
「あ、いきなり喋りかけてごめんね?俺はアレンハイド、見ての通り男だけど、ナンパとかそういったものじゃないから安心して!」とさらに話しかけてきた。
・・・本当に?よく見たら怪しい格好をしていないか?
ボサボサの髪、ボロボロの服と靴、そして腰には剣・・・剣!?私は1歩後ずさりした。
「え、なんで?俺そんなに怖い?・・・あ、もしかしてこの剣?大丈夫、君を切ったりもしないよ。ほら、こうすればいい?」
男の人―もといアレンハイドはそう言うと剣を腰から外し、草の上に置いた。
それを見て、この人は私にとって無害な人だと思い、話してみることにした。
「私は和泉 舞華です。ここはどこですか?あなたは何故ここにいるんですか?」
「おおっ!イズミマイカちゃんって言うのか!可愛い名前だねー!あとタメ語で喋って!」
うわぁ、いきなり名前呼びでタメ語で話せって言われた。というか、この人私と喋るためにわざわざ剣まで置くだろうか。まぁいいや。
「じゃあタメ語で。・・・そんなことよりここはどこなの?」
「そんなことってひどいなぁ・・・でもタメ語で話してくれた・・・(ブツブツ)」
「何?」
「ナ、ナンデモナイデス・・・そ、それより、ここがどこか、だっけ?」
「そう」
「ここはフィランサ王国の外れのスプー村の草原・・・だと思う、多分。」
「多分?あなたはここの人じゃないの?」
「あなた、じゃなくてアレンハイド!アレンハイドって呼んで!あ、アレンとかアレンきゅんとかでもいいぞ!」
「じゃあ・・・アレンハイドさん」
「さん、は要らないぜ!」
「じゃあ、アレンハイド。アレンハイドはこの辺のことの人じゃないの?」
「ああ、そうだ・・・気がついたらここにいたんだけど、この王国で広い草原っていうとここしかないんだ。」
アレンハイド・・・キャラ定まってないなぁ。
まぁいいや。
「そうなのね・・・あれ、エレベーターは?」
「えれべぇたぁ?何それ?」
「エレベーターっていうのは、さっきあなたが乗ってきた・・・」
「俺がそのえれべぇたぁとやらに乗っていた・・・のか?」
「ええ。・・・もしかして記憶がないの?」
「さっきも言ったが俺は気がついたらここにいたんだ。だからどうやってここに来たかは全くわからない。」
「そうだったのね・・・」
「ああ。だからそのえれべぇたぁというのも俺は知らないんだ。」
「それなら、そういう乗り物がある、程度でいいんじゃない?」
「そっか、じゃあそれでいいや。で、それがどうした?」
「うん、まぁ、なんでもない、気にしないで。」
「?そうか、わかった。・・・はぁー、それにしてもお腹空いたなー。」
「・・・んー、確かにそうかも。」
「この先、ちょっと歩いたところにソルーナという街があるはずだ。そこに行けば何か食べられると思う。見たところお前この辺のこと知らなさそうだし、良ければ一緒に行かないか?」
「うーん、・・・確かに、私はこの辺のこと全く知らないけど・・・ここ、見渡す限り草原なんだけど?」
「いや、多分この草原はそんなに広くないぞ?」
「え、そうなの?」
「昔見た地図だとここから1.5kmぐらいだったぞ」
「そのぐらいなら、私にも歩けそう!」
「そうか、じゃあ一緒に行くか?」
「それでアレンハイドがいいなら」
「じゃあ行くか!」
こうして、私達は街に行くことにした。
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