02

どうもこんにちわ、途方に暮れていたコバルトブルーの花ちゃんです。

はぁ、花ちゃんなんていってるけどホント花だしね、困ったもんだ。


さて、そんな私ですが、今お腹が空いております。

池の周りには苔の生えた岩がちょろちょろあり、私の体を隠すように大きな岩がある。


水があるのだからお腹は減らないのでは・・・とおもったけど、お腹空いているのだから水が食事ではないようだ。


いまさらだけど、私もしかして魔物なのでは?

全く動けないから本当にそうかわからないけど・・・。


そもそもさー、自分の種族的なのもよくわからない。

花なのはわかる。植物っていうこともわかってる。

さらにいえば当たり前だけど動けないっていうのもわかってる。


んっんっんー?



キラキラと木漏れ日が降り注いで自分の前にひろがる湖がキラキラ光る。

そんなきれいな景色を眺めながら、自分の能力について考えていた。

せめて自分が何使えるとかそーいうのわかんないもんかねぇ。


そんなことを考えているとふっと脳裏に何かが浮かんだ。脳があるかどうかは甚だ疑問ではあるけど・・・言わない約束で。



────────────────

◆使用中スキル

【魔力探知】

【感覚探知】


◆使用可能スキル

【麻痺の粉】

【毒の粉】

【誘惑の粉】

【眠り粉】


◆特技

【蔓攻撃】

【麻痺の蔓】

【毒の蔓】

─────────────────


おおう?

おおおう?


もしかして自分のことを考えたら自分の能力値が出るのかしらね・・・。

とりあえず自分が何をできるかはわかるな。

まぁそしてこれで分かる通りどう考えても私は魔物だろう。


ただの花にしてはいろいろおかしい。


そんなことを考えていると、のっしのっしと地面を揺らすように何かがこっちにむかって歩いてくる気配を感じた。


見つかりませんように・・・と怯えるように考えていると、私のすぐ目の前にイノシシのような魔物があらわれた。


なんだあれ。


じっとその行動を見ていると、鼻をピクピク動かしながら、私の前に広がる池に顔を近づけて水を飲みはじめた。


まぁ、きれいだもんね、水。


そして私自身もそのイノシシがとても美味しそうに見えた。

正確にはそのイノシシのまとっているオーラというのだろうか、目に見えない何かが美味しそうにみえるのだ。


【麻痺の粉】!!


私はいつの間にか麻痺の粉を考えていた。

すると自分の周りから花粉のような細かい粒子が溢れ、あたりを埋めていく。

そしてイノシシの魔物はその花粉のようなものをすぐにかいでしまい、力なくバタンとたおれてしまった。


お腹空いたお腹空いた。

食べたい。

お腹空いた。


体中が、心が、空腹を訴える。


この動かぬ体が憎いとまで思いはじめた時、水の中から蔓が何本も現れた。

しっとりと水に濡れたその蔓はしびれて動けないイノシシの魔物にまとわりつくとズルズルと引っ張り水の中に引きずり込んだ。


ボシャンッ


水面が大きく弾ける。

そして少しすると自分の体が満たされていくことがわかった。

水がキラキラと光出す。

そこまで見てようやく気づいた。

あの蔓は私だ。

そしてこの池全体に蔓と根を張っているんだ。


水がキラキラと輝き出したのは、魔物が実体を保てなくなって魔力の粒子となって四散し、水に吸収されたためだと気づいた。


そう、魔物たちは基本空気中の魔素と呼ばれる魔力と瘴気が混ざり合ってできたものだ。

つまり肉体は魔力と瘴気が合わさってできていて、実体として具現化した肉体を保つために魔石が構築される。そこで初めて魔物として活動ができるわけだ。


そして魔物たちは外傷などで実体を保てなくなると魔石を残して消えてしまう。具現化するための魔力と瘴気のバランスを保てず、霧散するからだ。

しかし、魔石さえ無事に残っていればまた魔素と瘴気を蓄え、いずれは復活を果たすことができる。


で、私はというと。


基本的に空気中の魔素を食事にしてもいいけど、ソレよりも他の生き物から魔力を奪うほうが早いし美味しい。

なのでおびき寄せて水に沈めて倒し、魔石にしたらその魔石の魔力を取り込む・・・これが食事だ。

体を構築していた魔力は水に溶かし、魔力を大量に含んだ水にしてそれを呼び餌にしている。

もし餌が来なくても、魔力を大量に含んだ水があるから最悪少しは持つしね。


と、いうことは、私はここで魔物狩りをして生きているということなんだろうな。

まぁ、生肉をたべたり、動物を解体とかしたいわけではないから、良かったといえばよかったのかな。


うん、よかったってことにしよう!


よし、そうと決まればまた獲物が来るようにしないと・・・いつ来るかわからないし・・・


【誘惑の粉】!


私は誘惑の粉を発動した。

誘惑の粉とは、文字通り周りの敵を誘惑し呼び寄せるというものだった。

甘い香りでもするんだろうかねぇ。


私はこの誘惑の粉を魔力探知できる範囲ギリギリまで広げた。

そうじゃないと何がいつどうやって引っかかるかわからないからね・・・。


なーにがくるかな、こいこいこいー。


そう思いながらゆらゆら揺れてるつもりになって周りの気配をさぐっていると・・・


きたーっ!


やってきたのは毛皮を蓄えた熊さんだった。

まぁ熊さんっていっても言っていいのかっていうくらい、こう、凶悪な顔してるけど。

しかも牙がこう長いのがニョキっと二本はえておりますがな。


その熊は誘われるようにこっちにくると、水辺をうろうろし、クンクンと鼻を近づけて水を飲みはじめた。


しめしめ・・・。


【麻痺の粉】!


ふわっとあふれる麻痺の粉が熊さんの周りを囲む。

しかし麻痺の粉がしっかりとかかるまえに異変に気づいた熊さんが後ろに飛び退いた。


まさか避けられるとは・・・!


「グルルルル・・・」


これはアレですね、いろいろ気づかれてますよね。

なんせそのおてての先に凶悪な爪が現れてますもんね。

そんなに目をギラつかせないでくださいよ、かわいいきれいなお花さんですよ??


あの、ね、ほら、話し合い・・・


・・・


こーなりゃヤケですよ!!

食べてやる!


【麻痺の粉】!

【毒の粉】!

【眠り粉】!


熊さんの周りに粉を分布させる。

いろんな粉がまざって空気中はまるで霧がうっすらかかったようになっていく。

熊さんはさっさと倒したほうが良いと判断したのだろう、水辺を回って岩に飛び乗り上から私に向かって斬撃を飛ばしはじめた。


ひえええええええ!


それは、卑怯だよ、飛ぶ斬撃ってなによ!!

スパスパと葉っぱが切られ、その風圧で体が揺れるため私の花本体には当たらない。

そもそもこれが本体かどうかはわからないけども・・・


植物だし。


ええい、めんどくさい邪魔だ邪魔!そこから降りろ!

水からどんどん伸びてくる蔓がすごい速度で熊さんに向かって突撃する。


「ッガァ!」


いきなり横から来た蔓攻撃に防御ができず岩場から飛ばされていく熊さん。


≪スキル【斬撃耐性】を獲得しました。≫


おおおう、いいねいいね、成長してる!


【斬撃耐性】オン!


そして飛ばされた熊さんをみるとフルフルと体を震わせながらも攻撃体制を崩さないでいた。


おおう、やろうってのか!


そろそろ体にいろんな毒が回ってるころだと思うんですけどねぇ。


でもまだ決定打にはなってないみたいだし・・・



そう私が熊さんの体を観察しながら思っていると、水の中からいつもとちがう蔓が4本伸びて出てきた。

いつもはしなやかな薄緑色のつるつるした蔓だけど、今回出てきたのはいかにも危なそうなトゲが無数に生えた蔓だった。それが2本。

もう2本は基本的にかわらずつるつるなのだけど、先端がふっくらと楕円形に膨らんでいて、そこに無数の棘が生えていた。


ううむ、我ながら色んな蔓があるもんだ。


その蔓は熊さんをターゲットに見定めると思った以上に早い動きで近付いていく。


全身棘の蔓は熊さんの身をグルグルと締め付け、先端が膨らんだ蔓はその棘をさすように殴打する。

棘に麻痺性の毒や猛毒が入っているのだろう、熊さんは痙攣して動かなくなると蔓はその体をずるずると引っ張り、水の中に沈めていく。


既に沈める前に体が光り始めていたので、魔力と瘴気が分散する直前だったようだ。

水の中ですぐに魔石に変わったのが分かり、おなかが膨れるのもわかった。


≪レベルがあがりました。≫


んおう?


なんだって?レベル!?


さぁて、まだ自分の情報がさっぱりわからない中、世界の声のおかげでレベルが上がったことが分かった。

いくつ上がっていくらになったかを教えてくれない不親切設計!


まあいいや、そのうちわかるでしょ。

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