第11話精錬樹海の樵

 アオイ:天界、魔界、冥界そして皆さんのいる人界。4つの宇宙の中で科学と経済が飛び抜けて発展している魔界宇宙。それでも職人の世界で火は切っても切れないもの。それに使う木材も同じです。今回はそんな木材を扱う1人のきこりのお話です。


 魔界時間9:56 首都 太刀神 皇城 皇王執務室


 莉音:人間の樵?


 衛兵:はい、名を真乃宮まのみやと申しまして。どうやら皇王陛下がこの国を建国する以前から住んでいるとか。


 莉音:我が国の建国以前という事は・・・旧ファクトゥリア王国の頃からという事になるな。


 カロン:そうだけどアンタ・・・


 莉音をじっと見るカロン


 莉音:ん?


 カロン:ホント何着てもスタイリッシュに着こなすわよね。てかアンタ眼鏡してたの?


 莉音:これはデスクワークの時だけかけてるんだ。


 カロン:ああ、視力低下防止のアレかぁ。


 衛兵:恐れながら陛下、今魔界宇宙で陛下の評価知ってます?


 莉音:評価?


 デバイスのネットニュースを見せる衛兵


 カロン:え〜っと『魔界宇宙で最も抱かれたいイケメン女子ランキング』・・・1位って。


 梨花:皆さん、話が脱線してます!


 莉音:おっと、それで?その人間は何処に住んでるのだ?


 衛兵:報告によれば『精錬樹海せいれんじゅかい』との事です。


 デバイスで検索する梨花


 梨花:え〜っと、精錬樹海、精錬樹海っと・・・あった!精錬樹海、魔界宇宙創世時代から存在する樹海で。全ての木が魔界宇宙最高品質である事から多くの職人達から親しまれており、太古の昔より林業が盛んな樹海だったそうです。


 莉音:林業が盛んかぁ。


 更に調べる梨花


 梨花:・・・・・え⁉︎


 莉音:どうした?


 梨花:そこは巨獣『フォレストビーバー』の縄張りでもあるそうです!


 莉音:フォレストビーバー?


 梨花:少々お待ちを・・・あった!フォレストビーバー、ベヒモス科ベヒモス目ビーバー亜種。体長4000万㎢、体重3兆3000万トン。巨獣の中では小柄な部類にあるものの、その前歯は強力。その強さは1000万㎢級のオリハルコンを一刀両断するほどだそうです。


 莉音:コウボウティラノに次ぐ第2の巨獣か。まだ目覚めていないのか?


 衛兵:森林警備隊の報告によれば、精錬樹海の中心にある浄水湖じょうすいこの巣で眠り続けているとか。


 莉音:兎に角現地に行ってみよう。こうしている間に既に目覚めている可能性がある。相手が人間なら見過ごすわけにはいかない!


 カロン:そうね、今のアンタならいざという時巨獣とサシで闘り合う事が出来るでしょう。


 2時間後『精錬樹海』浄水湖


 アオイ:ここからは翻訳モードでお楽しみください。


 樵:どうでしょう?


 ビーバー:ふむ・・・・・問題ない、また腕を上げたな真乃宮♪


 真乃宮:ありがとうございます♪


 アオイ:この方は人間の樵の真乃宮さん。旧ファクトゥリア王国が健在だった頃に人界から転移して魔界への永住権を取得した方です。


 ビーバー:ファクトゥリア王国が滅亡し、儂が眠りについた後。この国の樵達が散り散りになったというのにお前だけは此処に残った・・・何故だ?


 真乃宮:亡きファクトゥリア王との『約束』があるからですよ。


 ビーバー:『私の命は間もなく尽きる、もしこの地に再び匠の国を作らんとする魔王が現れたら力を貸してくれ』だったか。義理堅いな、人間というものは♪


 真乃宮:『日の本』の人間は大体そうです。それに義理の堅さだったら魔族には敵いませんよ♪


 ビーバー:ハッハッハ!そうだな・・・ん?この気配、客人のようだ。それも若き魔王のようだ。


 莉音:失礼、この樹海で樵をしている人間とは貴公か?


 真乃宮:ええ、私がそうですが・・・貴女は?


 莉音:ムネミツ皇国が魔王、莉音・ムネミツと申す。種族は邪神族。


 ビーバー:お主が腰に下げてる刀は魔神具『天霧あまぎり』か。という事は試練を乗り越えし者だな?


 カロン:グモグモ言って何言ってるか分かんない。


 真乃宮:あの、僭越せんえつながら通訳します。


 フォレストビーバーの言いたい事を通訳する真乃宮


 カロン:驚いた!人間が巨獣の言ってる事分かるんだ。


 梨花:えっと、検索したらありました。人間の中にはごく稀に巨獣の言葉が分かる人がいるらしいです。


 莉音:そうだ。


 ビーバー:真乃宮よ、この若き魔王は信じるに値する者だ。儂が保証する。其方はファクトゥリア王の遺志を継ぎ再び匠の国を目指すのであろう?その刀を持っているという事は。


 莉音:その通り。


 真乃宮:では今日この時より私は貴女の国の国民となります事をお許しください。


 莉音:勿論、宜しく頼む♪








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