最終話:メインプレイ:クライマックス2-3

GM:ロジカが用意した賢者の石。フィリップは緊張の面持ちで、その前に立つ。


フィリップ(GM):「……ロジカ。皆さん。もし……もし僕が、ジャームに堕ちたら。その時は、迷わず僕を討って下さい」

クラウ:「フィリップよ。『言霊』という単語を知っているか? 一度口にした言葉は現実になるという奴だ。

 お主は今、『ジャームに堕ちたら』などと言ったが、ほれ、それ以上の大口叩きが隣におるではないか。自信を持って胸を張れ。大丈夫だ」

ロジカ:(誰の事だろう???)


クラウ:君の事だよ!?

GM:ロジカ……!(爆笑)


ロボ子:「大丈夫、フィリップは堕ちたりなんかしない。ロジカが一番わかってると思うよ」

守矢:「らしくないじゃないか。ロジカ嬢の隣に並び立つ者がそんな弱気でいいのかネ?」

真白:……心中は、不安でいっぱいだった。『しくじれば、目の前の人間がジャームに堕ちる』のだから。

「私は、フィリップさんの不安を取り除く事は出来ません。ですが――」

 無意識に、左手――幸也から贈られた棺桶のブレスレットデビルズキャスケットをした手を裕一さんと繋ぐ。

「F都で、皆と一緒に乾杯できる事を信じています……事件は、解決したのですから」

 フィリップさんのロイス感情を、ポジティブが表に変更します。

フィリップ(GM):「クラウさん、ロボ子さん。守矢さんに、真白ちゃんも……」


 フィリップは皆の顔を見回し、最後にロジカに目を留める。


ロジカ:「……ジャームに堕ちたら、か。確かにその可能性は考慮すべきだ。しかし」

 ニヤリと笑う。

「なあに、そうなったら今度はジャーム化の治療手段を探してくるさ。

 例えそれが、奇跡の業だとしても――ロジカ・ミリターレはいつだって奇跡を起こしてきた。そうだろう?」


 不敵な笑顔で、ロジカは言い放つ。


ロジカ:「だから、不安も心配も必要ないのさ」

フィリップ(GM):「……そうだったね。君の起こした奇跡と比べたら、この程度は何て事ない。ああ、そうだとも。

 皆さんも、ありがとうございます、おかげで決心がつきました」


 そう言って、フィリップは改めて賢者の石に相対する。


フィリップ(GM):「それじゃあ、帰還の約束を胸に。行ってきます」

ロジカ:「ああ。待ってる」


GM:フィリップは賢者の石に触れ、人格情報としてその中に吸い込まれていく。

 そして――全ての障害を乗り越えた君たちの眼前で、賢者の石から光が漏れ出し、集束する。

 それはやがて人の形となり……君たちの良く知るフィリップの姿へと変化した。


フィリップ(GM):「…………」


 目を閉じ、立ち尽くすフィリップ。無言の時が流れていく。


ロジカ:「……お、おーい。大丈夫か? 第一問、私の好きなコーヒーの種類はー?」


 ロジカの問いかけに、またも少しの時が流れ……。


フィリップ(GM):「……エスプレッソ。いや、厳密には『イタリア風エスプレッソ』が正解だね」

ロジカ:「っ…………はぁ~~~」

 緊張の表情が解ける。

「ちょっと内心びくびくしちゃった……ま、何はともあれ」

 右手を差し出し。

「おかえり、相棒」

フィリップ(GM):「いや、すまないね。RBになるというのは何とも貴重な体験だった。そのゾクゾクを噛み締めていたのさ」

 ロジカの手を、しっかりと握り返し。

「ああ。ただいま、相棒」

ロジカ:「うん、間違いなくフィリップだ!」

 にこにこと笑う。


 固く握られた手の感触。それは確かに、相棒フィリップがこの世に存在しているという証だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る