最終話:メインプレイ:ミドル9

GM:次は元警察バディのシーンですね。シーンインをどうぞ。


元警察バディ:シーンイン!


 輸送機の中には、沈黙と緊張感が漂っていた。


真白:(“ユートピア”は強い、もしかしたらこれが――)

「守矢さん。少し、いいですか?」

守矢:「ん、どうしたのかネ?」

真白:「――最期になるかもしれない。だから――」

 ぼそりと呟き、言葉を続けます。

「いつか、家族になりたいって言った事。覚えてますか?」

守矢:「……ああ、覚えているとも」

真白:「その時、いつか守矢さんのこれまでの事を話すって言ってくれました。

 面影島に着くまで、まだ時間があります。良ければ――」


 真白の提案に、守矢は静かに、しかし重々しく頷く。


守矢:「そんなに面白い話というわけではないのだけどネ。

 まあ、私もこの歳だ。今までそれなりに警察官として仕事をしてきた。当然、君より前の相棒というのもいたんだヨ」

真白:「ええ。何度か、元相棒という言葉を家でも聞きました」

守矢:「……あの時、ある犯罪者を追っていてネ。奴の研究施設まで何とか追い詰めたまでは良かったが。

 私がヘマをやらかしてネ。撃った銃弾が施設の暴走を引き起こしてしまったのさ。

 結果、犯罪者と相棒はそれに巻き込まれ姿を消した。全て私の責任だヨ」

真白:「……まさか、頭の中で聞こえる声というのは」

守矢:「…………彼の声が未だに聞こえるんだヨ。頭の中でずっと反響して止まないんだ。

 口の減らない屁理屈野郎だったが、それでもかけがえのない相棒だった。だがもう、戻ることはない」


 守矢の眉間には、いつの間にか深いしわが刻まれている。


守矢:「私の人生、最大の失敗だ。だからこそ君にはそうなってほしくない」

真白:「――ありがとうございます。辛い過去を、話してくれて」

守矢:「いいんだ。だが、これだけは約束してほしい……これで最期と言わないでくれ。君はまだ生きていかねばならない。

 老い先短い私なんかより、君はもっと素晴らしい相棒に出会う可能性がある。その時は、私が教えた事をその人に伝えてやってくれ。

 それが、長年お巡りさんを務めたおじさんの願いだヨ」

真白:「……口に出ていましたか。私もまだまだですね……けど、ごめんなさい。その願いは聞けません。

 確かに、この先違う人の相棒になるかもしれない。それでも。

 あなたより素晴らしい相棒に出会うかもしれない。それでも」


 決然と、真白は言い放つ。


真白:「私にとって一番の相棒は、あなたしかいません。

 ……だから、老い先短いなんて言わないで下さい」

守矢:「……そうか。なら相棒として、共にこの事件ヤマを戦い抜いてくれ。私の背中は君に預ける」

真白:「はい。私も、最期なんて言って……ごめんなさい」

守矢:「いいんだ。だが人生という戦いはもっと長い。気楽に構えていきたまえヨ」

真白:「わかりました。では、もっと気楽に――裕一さん、と呼んでもいいですか?」

守矢:「ハハハ! 構わないよ。まだ到着までは時間もある。警察を辞めた今、勤務時間というわけでもないからネ」

真白:「そうですね、勤務時間というわけではありませんもんね。

 では、こう付け足せばわかるでしょうか」


 守矢の目を真っ直ぐに見つめ、真白はこう口にする。


真白:「この先の、私の人生の相棒として、裕一さんと呼んでもいいですか」

守矢:「……そういうのはフラグって言うんだヨ? この事件を全て終わらせてからその話をしよう。いいね?」

真白:「…………」 ジト目

守矢:「…………」

真白:「……………………わかりました」

守矢:「いい子だ。ま、これで機嫌を直してくれ」 真白の頭をわしわし撫でる。

「今は、ゆっくり休んでおきなさい」

真白:「ん、む……仕方ないですね」

 表情を崩す。その顔は、話し始める前とはまるで別人のようだ。ここで守矢さん――裕一さんのロイスをSロイスに変換します。


 余裕を取り戻した真白を見守った後、守矢は目つきを変え、輸送機の窓から目的地の方角を睨みつける。


守矢:「さて……我々の街を傷つけた責任は必ず取ってもらうぞ、“ユートピア”」

 そう呟き、決心を固めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る