第34話 コロナ禍の裏で進む作家の淘汰 Amazonで品切れの本は売れているとは限らない

コロナが騒ぎが本格的になってきた4月初旬、私の本のほとんどがAmazonで売り切れになりました。おお! と喜んだのもつかの間、他の作家の方も売り切れが相次いでいることがわかりました。いまだに在庫は復活していません。正確にはたまに復活してはまだ品切れになっています。すでにその理由をご存じの方もいると思いますが、そうでない方もいるようなのでご説明したいと思います。


コロナ騒動が広がるにつれて、消費者はトイレットペーパーを始めとする日用品をたくさん購入するようになりました。Amazonでも当然注文が殺到しました。とはいえ倉庫のスペースも人手も限られています。その結果、入荷を制限せざるを得なくなり、日用品を優先し、本の入荷を制限することになりました。そのため売れきれても補充できずない本がたくさん出て来てしまったのです。


Amazonは売れない本は在庫1冊、たまに売れる本は数冊と在庫を少なめに抑えています。発売後数カ月経ったほとんどの本は「たまにしか売れません」。Amazonが扱っている莫大な本のほとんどは「たまにしか売れません」。コロナの外出自粛で本でも読もうと思った方が数人いると、たまにしか売れない本は売り切れになります。しかし、Amazonは入荷を制限しており、新しく在庫を仕入れてくれません。もちろんベストセラーはこの限りではありませんが、「たまにしか売れない」本は仕入れてもらえないため、ずっと品切れが続き、さらに売れなくなる(ものがないのだから売れようがない)、という悪循環に陥ります。逆にベストセラー作家はAmazonで入手できる限られた本に入っているので、さらにコロナ禍で増えた(らしい)本への需要を引き受けてさらに売れるようになっている気がします。


コロナ禍の裏では、売れる作家はより売れ、そうでない作家はより売れなくなる淘汰の波が押し寄せてきていたのです。


私の場合は在庫切れが続いている本と、必要に応じて在庫が補充されている本の両方があります。このへんの違いは売れ行きやAmazonと出版社の姿勢の違いから来るものなのかもしれません。


電子書籍については数字を確認できないので、なんとも言えません。出版社から3カ月に1回くらい報告が送られてくるのですが、コロナ禍が始まってからの報告はまだです。いまのところ大幅に伸びているような感じはありません。


従来の本の市場はさらに厳しくなってきていると思います。


カクヨムの投稿作品を読んでいると、商業作家の作品と遜色ないものも珍しくないので、これからの本や作家のあり方は、どんどん変わってゆくでしょう。それにともなって従来型の市場は大きく変化するでしょう。数でいうと大多数を占める数冊しか刊行していない兼業作家の多くは淘汰されてゆくような気がします。

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