第90話 カクヨム・マラソン 第3弾 義眼堂 冒頭決定

いろいろ考えた結果、全ての説明は飛ばして印象的なエピソードから入ることにしました。

設定の説明的なことから入ろうと思ったんですが、冒頭で興味ある話をしたかったんで変えました。

読者からすると、突然なにかに巻き込まれたような感じになると思うんですが……

わかりにくいかなあ……


■どんな問題の回答でもわかる目を持った男の話

 私は、どんな望みをかなえてくれる義眼を手に入れるため義眼堂という店を訪れた。私の前に現れた少女、八百万紅蓮は、ここで義眼を手に入れた男の話を始めた。

「その人にはどうしても行きたい大学があり、ふつうの方法では合格できる学力がなかったんですね。そこでここにいらっしゃいました。寛大な先生は、その人の片目を摘出し、代わりに望みをかねえる義眼を装着しました。義眼の力は実際に付けてみるまでわかりません、その人の意思の強さや体質によって異なるんです。その人どんな問題の回答でもわかるようになりましした」

 紅蓮はそう言うと壁の棚から義眼をひとつ手に取った。

「すごい。じゃあ合格したんですね」

「もちろんです。この能力は出題者が作った模範解答あるいは想定していた回答が問題を見ると目に浮かんでくる力です。だから解釈がわかれるような問題でもかならず正解がわかりました。でも、思ったような形では望みは達成されないと申し上げましたよね」

 紅蓮は私の目をじっと見た。確かにそう言われた。

「でも、その能力って願った通りのものじゃないんですか?」

「ちょっと違ったんです。その人がやりすぎたせいもあるんですけどね。彼は資格試験をどんどん取り、大学の成績もトップでした。でも……」

 紅蓮はそこで言葉を切って、手にした義眼を棚に戻した。

「あなたはその人のブログを見てここに来たんでしょう? ならご存じですね。三カ月から更新されていない」

「確かにそうですけど、忙しいのかなって思ってました。なにかあったんですか?」

「さあ? 私が存じ上げているのは大学で回答を盗み見した疑いをかけられたところまでです。ある大学教授が助手に採点を頼むために用意した模範解答で回答の順番を間違えたんです。問3の回答を問4に、問4の回答を問3に書いてしまったんです」

「あっ……」

 そんな落とし穴があるなんて気がつかなかった。

「でも義眼の力は、その間違ったままの回答を正解として見て、彼はそのまま回答した。不審に思った教授が過去の試験を確認すると似たようなことが何度かあった。そこで次の試験でわざとありえない回答の模範解答を作ったら、そのままの回答が来たのでなんらかの方法で不正を行ったことが確定したわけです。それからどうなったかまではわかりません」

 紅蓮はそこでにっこりと笑って見せた。いや、そこは笑うとこじゃないだろ。なんで笑うんだ? 私もそんな目に合うと思ってるんだろうか?

 ここに来たのは間違いだったかもしれない。私は不安になってきた。

 私はここに来るまでのことを思い出した。

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