第80話 小説家が伝統芸人になる時 電子化とオンデマンド化。「言葉を使った新しいエンターテインメント」
多くの小説家の収入は印税です。本を出版すると初刷りの数に応じて印税をもらえます。
印税は10%を目安にして、上下に幅があります。
たとえば800円(税抜き)の本を1万部だと、1冊当たり80円でその1万倍の80万円を出版した時にもらえます。売れていなくても刷った分だけくれるのです。
電子版の場合は、売れた分だけしかもらえません。
売れた分しか収入がないのは当たり前なのですが、これまではそうでなかったので大きな違いです。
現在、各出版社はオンデマンドに移行しつつあります。1部からでも注文があったら低コストで印刷できるのです。こうなると最小限の部数だけ最初に印刷するとか、あるいは注文があったら印刷するくらいで済んでしまいます。
私は幸いに印税収入以外に連載などの原稿料収入がありますが、ほとんどの売れない作家は文章による他の収入がありません。最近ではソシャゲのシナリオを書いている方も増えているようなのですが。
電子とオンデマンド中心になった場合、圧倒的多数を占めるベストセラー作家ではない小説家の収入は従来に比べると大幅に下がり、生活を維持できる人はほとんどいなくなるでしょう。すでに兼業作家の方が多いのですから、専業作家はほんの一握りになりそうです。
また、これまでのようなスタイルの小説がなくなる可能性もあります。私はネット小説はまだ変化の途中と考えています。チャットノベルなどいろいろ出てきていますが、本命はまだでしょう。
新しい形態の小説、もはや小説ではなく「言葉を使った新しいエンターテインメント」と言うべきものが出てきたら完全に小説家という仕事は過去のものにとなり、ごくわずかの人たちが芸術家、あるいは人間国宝のような職人芸として残るくらいになるかもしれません。
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