第98話 in the case of Rui

担任「栗山


星南の医学部推薦決まったぞ」


Rui「えっ、そうなんですか」


「何だよ、嬉しくないのか」


「いや、そんなことないですけど」


「もしかして学費か?」


「あぁ、まぁ」


「大丈夫だ、そのことなら


もともと栗山の家庭は母子家庭だったし


お母さんのこともあっただろ


それに医学部という


将来、人を助ける仕事に就く


ということから学費はほぼ免除に


なると思う」


「えっ、そうなんですか」


「先生も微力ながら栗山の力になりたくて


色んな制度調べたんだ


だからそんなこと気にしないで


栗山の好きな道に進め」


「.....はい」





「もしかしたら好きな道では


ないのかもしれないが


お母さんきっと喜んでるぞお前の選択を」


「そうですね」


「ごめんな


こんな時に気の利いた言葉一つ


かけてやれなくて」


「いえ、大丈夫です」


「今、生活はどうしてるんだ


食事とか洗濯とか色々大変だろ」


「大丈夫です


祖母と生活しているんで」


「そっか、それ聞いて安心した


栗山にとって今大事な時期だからな」





星南の医学部の推薦が決まった


すごく医学部に行きたいかと聞かれると


よく分からない


母親のために医学部を目指していたから


かといって


他にやりたいことがあるわけでもない


なんとなく医学部の道に進むしかない


ような気もする


義務ではないけど


医者になるんだろうという感覚





メッセージが一件届いています


まただ


もしかしてまたあの訳の分からないメールか





親愛なる栗山Rui様


お返事をお待ちしていましたが


いただけなかったので


また連絡を致しました


いかがお過ごしでしょうか


この前のメールだと我々のことが


よく分からない文章だったと思うので


今回は少し自己紹介を


ただあまり詳しくはまだお話できないので


ざっくりとご説明しましょう


Rui様の世界があるように  

 

我々には我々の世界が存在します


そんな私達の接点


それは遥か昔のことでございます


私達はあなた様のお陰で


今この世界に留まることができております


あなた様には感謝してもしきれません


我々の存続の危機を


救っていただいたわけですから


この恩返しを是非とも


させていただきたいのです


まさに今が絶好の機会


どうでしょう


一度我々と会ってみませんか?


ただしそちらに行くのに少し


時間がかかります


準備期間を要するのです


そして滞在期間は3日間


3日間が限界と思われます


ご決断をお願いします


我々とともに新しい世界を


築きあげましょう


ただでとはいいません


協力いただいた暁にはあなた様が


最も望んでおられるであろう願いを


叶えて差し上げましょう





なんなんだ、このメール


この奇妙な言い回し


現実とは思えない


いたずらにもほどがある


分からないことだらけだ


我々の世界って何だ


そもそも住む世界が違うのか


新しい世界とは一体なんなんだ


こっちに来るのに準備が必要で


しかも3日間しかいられないなんて


訳が分からない


遥か昔に助けた?


俺の記憶の中に誰かをしかも


どこかの世界を助けた記憶はない


やはり何かのいたずらなのか


俺が最も望むもの


叶えられるわけがない


母さんだから


もうこの世界にはいないんだから





カチャカチャ


何かのいたずらでしょうか


俺は誰かを救った覚えもなければ


ましてや、世界を救った覚えもない


いたずらならばこれで終わりにしてください


協力する決断をと言われても


何に協力するのかも分からないし


新しい世界とは


どういうことでしょうか


俺の願いは叶えられるものではないから





「Rui様から返事が来ました」


「ようやく来たか、中身を見せてみろ」


「どうやら彼には過去の記憶は


ないようですね」


「そのようだな


おそらく一度肉体が滅びると


記憶がリセットされるシステムのようだな」


「えぇ、どうします?


我々から話しますか?


彼は論理的思考の持ち主


頭で納得しなければ


我々側に来ることはないと思われます」





「Ruiは我々の能力がまだ


分かっていないようだな」


「えっ、あぁそうですね


彼には何と返事をしますか?」


「当時のことを大体でいいから


彼に知らせるしかない


ただし


司令センターのことは一切触れるな


話がややこしくなるからな」


「はい、かしこまりました」


親愛なる栗山Rui様









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