第96話 first contact

母親がこの世界からいなくなって3か月


今だに亡くなったという感覚はない


はじめの1か月は


しょっちゅう夢の中に現れていた


夢と現実の狭間のような世界で


よく母親と会っていた


母親が亡くなる直前に話していた時も


そんな感じだった





この世界ではなく別の世界に


二人だけでいるような感覚


あの不思議な感覚を今も鮮明に覚えている


体が浮いてるような


呼吸がしやすくて


音もない静かな世界


言葉なんて交わさなくても


すべて分かりあえる世界


確かにこの世界は存在すると思う





最近あまり母親は出てこなくなった


もうこの世界に心残りがないのか


俺は心残りありまくりだよ





Dark World


「Ruiの母親がいなくなって3か月だな」


「そうですね」


「どうだ、Ruiの様子は」


「やはり元気がないです」


「まぁ、そうだろうな


Ruiにコンタクトをとる日が来た」


「とうとうこの日が来たんですね


ドキドキします


どうやって?」


「まずは、ネットの世界でつながる」


「Ruiの居場所は調べたか」


「はい、もちろんです」





カチャカチャ


母親がいなくなる前は


よく奇跡的に生還した人の話を探しては


母親もそうなるんだって


希望がわいたものだった


いなくなった今は


ただパソコンの電源を入れてるだけ


パソコンを使う必要がない


何ならなくたって全く困らない





メッセージが一件届いています


誰だ?


アドレスを誰かに知らせた覚えがない


母親の病気の情報を得るために


登録したけど


少し前に全て登録を解除した


まだ解除できてないのが残っていたのか


今さら見たところで仕方ない


肝心の母さんはもういないんだから





Dark World


「とうとう送ってしまいましたね


何て返事が来るんでしょうか」


「はじめは警戒するかもしれん


すぐには反応はないかもしれない」


「そうですね


そういえば以前話してた


特別転生者がタイムライン上から


消えたという話ですが」


「あぁ、何か分かったのか」


「はい、それがおそらくですが


ワープのようなものをしたのでは


ないかと」


「ワープだ?」





「今、彼らは地球でいう21才


大学4年生ぐらいになっています


ようやく見つけだしました


私のタイムラインとまたぴったり


一致しました」


「なぜ移動したんだ」


「そこまでは


最近司令センターの情報が


前ほどつかめないんです」


「我々の存在に気づいたか」


「かと思われます」


「で、今はどこにいるんだ」


「それが不思議なことに


男性側の姿は見つかりましたが


女性側が見つけられません」


「どういうことだ」


「さらに男性側のエネルギーが


以前より強くなっています」


「強くなってるだと?」


「はい、光を放っているんです」


「早く女性側を探し出せ」


「はい、すぐに」


(何が起きてる、何を企んでいる)





2件の新着メッセージが届いています


まただ


どこだか分からないけど


登録解除するか





親愛なる栗山Rui様


何だ、この書き出し


いかがお過ごしでしょうか


その節は大変お世話になりました


さて、ここ最近のRui様とても大変なことと


思われます


そこで我々の出番かと


まずはメールで連絡をしました


その後、直接お会いします





何だ、この奇妙な文章


その節はお世話になりましたって


俺は誰かのお世話をした覚えはない


ここ最近のことも相手は知っている


親戚?


いや、こんな奇妙な文章送ってこないか


クラスメイトのイタズラか


我々ということは少なくとも二人以上だ


馬鹿にするのもいい加減にしてくれ





「Ruiから返事が来ません」


「警戒しているのだろう


焦らずコンタクトをとり続けるしかない」


「はい」


「彼は頭がいい、彼の頭脳が必要だ


ただRuiにもメリットがなければ


彼も動かないだろう


まだ知らせていないが


彼が間違いなく飛びつくものを引き換えに


条件として提示するつもりだ」


「彼が飛びつくもの?


あっ、あれを使うんですね」


「そういうことだ」


「確実ですね、さすがです」







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