第94話 3次元Dark World

「うぅ、Ruiの母親が


亡くなってしまった


これはさすがに悲しい


涙も出るってもんだ


涙は我々側にいても出るんだな


本来はそういう感情は一切生まれないと


思っていたが


そうではないんだろうか


いや、Ruiに対してだけなのかもしれない


彼は我々の恩人


彼の歴史をすべて見てしまったから


感情移入してるだけのこと


感情移入


そんなことがこの私にできるとは」





「何をさっきからブツブツ言っている」


「あっ、あぁ


それが大変なことが起きまして」


「何だ」


「Ruiの母親が亡くなってしまったんです」


「そうか」


「えっ、それだけですか」


「それ以上何を求める」


「いやぁ」


「まさか悲しめとでも言うのか」


「いや、しかしRuiは我々の恩人ですから」





「それとこれとは別問題だ


それにこうなってからの方が


コンタクトがとりやすい


この時を待っていた」


「えっ、待っていたんですか」


「そうだ


我々の目的はRuiをこちらに


呼び寄せることだ」


「そ、そうでしたね」


「お前、最近本来の目的を


忘れていないか


まさかとは思うが


人間の感情に惑わされていないか」


「いえ、そんなことはありません」


「ならいいが


もしそうだとしたら


お前はもうここには置いておけん


お前の代わりはいくらでもいる」


「えっ、それはどういう」


「聞かなくても分かるだろう」


「はい、


そのようなことは一切ありませんから


これからもここに置いてください」


「二度と悲しいなどと言うな」



「かしこまりました」





「Ruiの母親が亡くなってから


何日が経過した?」


「一週間です」


「ではそろそろ我々も動くとするか」


「地球に行くんですね」


「まずはメールでコンタクトをとる」


「Ruiの居場所を確定しろ」


「分かりました、いよいよですね」


「あぁ」





この感情


すべてなかったことにしよう


今まで通りにすればいいだけ


簡単なことではないか




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る