第83話 in the case of Rui

Rui「母さん、母さん」


母親「ん?」


「学校行ってくるよ」


「うん」


「今日早退して


あとで一緒に行くから」


「大丈夫よ、おばぁちゃんと


一緒に行くから」


「俺が行きたいから、あとでね」


「分かった、いってらっしゃい」


「行ってくる」


バタン




うわーん


うわーん


(泣き叫ぶ声)





おばぁちゃん「Miki


どうしたの?どうしたの?」


(背中をさする)


母親「ごめんね、ごめんね


涙が最近ね、止まらないの」


おばぁちゃん「そっか、そっか


泣きたい時は泣きなさい


無理しなくていいのよ」


「お母さん私、今生きてる?


生きてるって言える?」


「もちろんよ


Mikiは一生懸命生きてるじゃない」


「もう何も自分じゃできない


お母さんの手を借りなきゃ


できなくなっちゃったよ


こんなんで生きてるって言える?」




 

「なーに言ってるの


お母さんは今、幸せよ


MikiとRuiのそばにいられるだけで幸せ」


「でも


身の回りのこと全部お願いしないと


何もできない」


「お母さんそれができて幸せ


Ruiが知らせてくれなかったら


知らないまま過ごすとこだった


本当はもっと早く知りたかったけど


それでも知れて良かった 


Mikiの役に立ちたいのよ」


「お母さん.....」





「そんなこと気にしないで


今日、午後から病院だから


それまで寝てたら?」


「.....うん」


「お母さん」


「何?」


「ごめんね」


「謝るのはもう終わり


親孝行だと思って甘えなさい」


「.....うん」





Mikiちゃん、あなたは誰よりも


今を生きてるよ


その証拠にRuiを見て


あんなに優しくて人の気持ちがよく分かる


正義感に溢れた立派な子に育ってる


それはMikiが今までやってきたことの


積み重ね


あなたが宝物といつも言ってたRuiは


こんなにも輝いている


ごめんね、代わってあげられなくて


私の望みはたった一つ


Mikiの病気を代わってあげたい








先生「結論から申しますと


そうですね


通院に切り替えたことは良かったと


思います」


Rui「病状が良くなっているんですか?」


先生「えっ、いえ


お母さんの精神面にいい影響を


与えてると思います」


「.....」





母親「先生、私あとどれくらいですか?」


Rui「母さん」


母親「いいの、聞いとかないと後悔する


色々とねやり残したこともあるし」


おばぁちゃん「Miki.....」


母親「私が知りたいの」


先生「そうですね


はっきりとは申し上げられませんが


3ヶ月から半年ぐらいかと」





おばぁちゃん「そんなに短い.....の」


先生「あくまでも今までの統計上による


目安だと思ってください


痛みをとることを優先して


今後も治療を行なっていきましょう


何か質問は?」





母親「先生、旅行に行きたいんです


許可していただけますか?」


先生「旅行....ですか?」


Rui「そんな体で無理に決まってるだろ


もっと良くなってから.....」


母親「ううん、今逃したらもう行けない」


先生「.....分かりました、許可しましょう」


母親「ありがとうございます」


ガラガラ


「ありがとうございました」





母親「Rui、3日後に旅行ね、お母さんも」


おばぁちゃん「私はいいわ」


母親「どうして」


おばぁちゃん「家でのんびりしたいから


たまには二人で行ってきなさい」





そう


おばぁちゃんはいつも自然と気が使える人


いつだってそうだ





Rui「どこに行くんだよ、近場にしよ」


母親「それじゃあ意味がない


天体観測の絶景スポットに行くんだから」


Rui「えっ、天体観測なんかするのかよ」


母親「そうよ」


Rui「温泉旅行とかでいいだろ」


母親「温泉は温泉で入るけど


Ruiと最後に見たいのよ」


Rui「最後とか言うなよ」


母親「ごめん」





Rui「母さん


それより新しい治療受けてみないか」


母親「だから受けないんだってば」


Rui「どうして」


母親「どうしても」


Rui「たまには俺の言うこと


聞いてくれたっていいじゃないか!」


母親「Rui... . ごめんね」


Rui「いや、俺の方こそ怒鳴って.....ごめん」





母親「気持ちは嬉しい、嬉しいけどいいの


諦めたわけじゃないよ


でもね、病気と毎日毎日向き合ってきて


今どうするべきかは


自分が一番分かってるつもり


それにRuiが医者になったら


お母さんのこと助けてくれるんでしょ」


Rui「えっ、あぁ」


母親「それまで頑張らなきゃ


そのためにも一回休憩!」





おばぁちゃん「そうね


病は気からって言うし


旅行に行って美味しいもの食べて


大好きな天体観測でもしたら


良くなるかもしれない


笑いで癌を治すなんて治療も


あるぐらいだし」


母親「そういうこと


だからRui、絶景スポット調べて


旅行の段取りお願いね」


Rui「..... 分かった」


母親「よし、決まり、楽しみだな〜


お母さんちょっと寝るね、旅行に備えて」









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