第73話 in the case of Rui Miku

Rui


ガラガラ


医師「お母さんの今の状況なんだけどね」


Rui「はい」


「これがこの前の検査の結果ね」


「リンパ節への転移が5か所見られる


それから骨転移も見られる」


「つまり良くなってない


ということですよね」


「良くなった悪くなったということに


関していうと」


「今の治療続ける意味あるんですか?」


「意味、でも続けないと」


おばぁちゃん「Rui、落ち着いて」


「おばぁちゃん治療方法変えるべきだよ


ここにいたって何も変わらない


俺なりに調べたんだ」


「Rui」





医師「民間療法ですか?」


「そうです」


「どんな治療法ですか?」


「これは高濃度ビタミン療法


これは漢方薬で治してる病院


それから.....」


「たくさん調べたんですね


確かに治療方法は他にも存在します


私も否定はしません


お母さんの意思とご家族の意思で


一度話をされるといいと思います」


Rui「ありがとうございます」





おばぁちゃん「Rui、どうして先生の前で


あんなこと言ったの?」


「おばぁちゃん、今の治療はもう限界だよ」


「そんなこと言って


この病院を出て新しい治療が


全然効かなくて


この病院にも戻れなくなったら


どうするの?


それこそ亡くなるのを待つのみ.....」





はじめて亡くなるという言葉が出たことで


おばぁちゃんとの間に嫌な空気が流れる


今までその言葉だけは


お互い暗黙の了解で


言わないようにしていた





ガラガラ


母親「Rui、聞いてきたんだよね」


Rui「あぁ、うん」


「どうだった?進んでた?」


「いや......」


「そっか、なんとなくは分かってたけどね」


「母さん、治療方法変えてみないか?」


「えっ」


おばぁちゃん「Rui」


「このままここにいても


仕方ない気がするんだ」


「どんな治療なの?」


「持ってきた」





母親「なるほどね


お母さんはどれも受けたくないかな」


Rui「えっ」


「何かもう疲れちゃった」


「母さん」


おばぁちゃん「Miki」


母親「それより一回退院したい」


Rui「退院」





「毎日おんなじ景色眺めて


変わらない天井を見上げて


外が暖かいのか寒いのかも分からなくて


どうせならもっと生きてるって


実感できる場所にいたい」


「母さん」


「Miki......


うん、分かった先生に相談してくる」


「ほんとに?ありがとう」


「お母さんに任せなさい


あなたは一度こうと決めたら折れない子」


「あはは」





ガラガラ


母親「Rui、ごめんね」


Rui「えっ」


「お母さんもうこれ以上お金かけてまで


新しいことしたくないの」


「お金の心配ならバイトするから」


「それもお母さんは嫌


あなたは大学に行くのよ


バイトなんかしてる場合じゃない」


「この世に命より大切なものはないよ」


「もちろん


お母さんだって諦めたわけではないよ


これからも頑張る、一回休憩」





Miku


「俺と付き合わない?」


何で考えさせてくださいなんて


言っちゃったんだろう


あの時はついパニックになっちゃって


とっさに言ってしまった


でも答えは決まってる


今日先輩にちゃんと返事しよう





昨日の夜先輩にメールをしたんだけど


まだ返ってこない


もしかして私が考えさせてください


なんて言ったから


先輩はもう付き合う気持ちが


なくなっちゃったかな





ガラガラ


先生「朝の会をはじめるぞ


その前に残念なお知らせがある


昨夜高校生の3年1組山口Hayatoさんが


亡くなったという連絡が


今朝ご家族の方から....」


ドキン


えっ.....今.... .


山口.....Hayatoって、先輩のことだよね


頭が追いつかない





「山口さんは大学も無事に決まっていて


これからという時に.....」


Mikuちゃん、星南大学合格したよ!


水族館行こう


昨夜ということは


昨日先輩と別れてから亡くなったってこと?


嘘....でしょ





「昨日の夜出掛けていて


帰り道車に跳ねられて亡くなったそうで


残念ながら犯人はまだ捕まって.....」


車に跳ねられたの?


だから先輩から未だにメールが来てないの?


犯人は捕まってないって


ひき逃げ事故ってことなの?


「お通夜とお葬式はご家族の意向で


身内で行われることになった」





お通夜


お葬式


嘘でしょ


これは何かの間違いだよね?


私夢を見てるんだきっと


そう、これは夢




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