第68話 in the case of Rui Miku

Rui


おばぁちゃん「Rui、おばぁちゃん今から


Mikiのところに行ってくるから」


Rui「あぁ、じゃあ俺も....」


「今Ruiのすることは


大学に行くために勉強をすること


じゃないとお母さんが悲しむよ


Ruiの頑張る姿をMikiに見せてあげて


Ruiの頑張る姿がMikiに希望を与えるから


Mikiにとってあなたは宝物


すごく辛い時期だけどお願いね


あなたはそれができる子」





「宝物」


「そう、Mikiいつも言ってた


結婚生活はうまくいかなかったけど


あなたを生んで良かったって」


「分かった、じゃあ.....行ってくる」


「はい、行ってらっしゃい」





おばぁちゃんと二人で住むようになって


1か月


はじめて母さんを病院で見た日を境に


一切泣かなくなった


あの日病院から帰って来てから


おばぁちゃんはずっと声を上げて泣いていた


でも次の日の朝から人が変わったように


テキパキと本来のおばぁちゃんらしさを


取り戻し


家のこと母親のことを


うまく回してくれている


おばぁちゃんの体調と精神面が心配だ


そんな母親もおばぁちゃんの思いに


応えるかのように


おばぁちゃんがはじめて病院に来た日を境に


一切泣かなくなった


ひたすら辛い抗がん剤治療に耐えている





Miku


先輩と水族館に行ってから1か月


また少し距離が縮まった気がする


クラスメイト「ねー、聞いてもいい?」


Miku「えっ」


「山口先輩と雨宮さんは


付き合ってるの?」


ドキン





Miku「つ、付き合ってないよ」


クラスメイト「えー、そうなの?


てっきり付き合ってるんだと思った


だって休み時間しょっちゅう


山口先輩、雨宮さんに会いにくるから」 


私と山口先輩の関係.....


改めて聞かれるとよく分からない


私も先輩に聞きたいよ、この関係性を





クラスメイト「雨宮さんは?」 


Miku「えっ」


「先輩のこと好きじゃないの?」


えっ、何て応えたらいいの.....


「別に好きじゃないよ」


「じゃあ、私山口先輩


頑張ってもいいかな?」


ドキン


「えっ......」


「付き合ってないんだったらいいよね?」





Rui


2週間後


Rui「母さん、どう?」


母親「うん」


どうもこうもないと思う


なんてデリカシーのない


質問をしてしまったんだ


母親「元気、元気」


そんな俺の気持ちが伝わったのか


元気そうに振る舞ってくれている


母さんに気を使わせてる場合ではない





母親「そうだRui、勉強はどう?」


(Ruiの頑張る姿が


Mikiに希望を与えるから)


(RuiはMikiの宝物)


Rui「勉強進んでるよ」


「そう、志望校とか決めた?


お母さんに遠慮しないで塾に行きなさいね


あなたの大切な将来がかかってるんだから」


「あぁ」


志望校なんか全く決めてなかった


しかもここ最近成績も下降気味





Rui「第一志望は


星南大学の宇宙航空学科の予定」


母親「えっ、星南!


Rui、すごいじゃない」


あんなに具合が悪そうだった母親の顔が


一瞬にして明るくなる


その変化に驚く


Ruiの頑張る姿が


Mikiに希望を与えるから


ほんとにそうなのかもしれない





ガラガラ


母親「あっ、お母さん」


おばぁちゃん「なにー」


母親「Ruiね、星南大学の宇宙航空学科


行くんだって」


Rui「いや、受ける予定なだけで


まだ行くとは決まってないよ」


おばぁちゃん「そう!楽しみね、フフ」


おばぁちゃんがほらねという顔で


俺のことをチラッと見る





Miku


あれから2週間後


Miku「あっ.....」


(じゃあ、私山口先輩


頑張ってもいいかな?)


(付き合ってないんだったらいいよね?)


中野さんは2週間前の宣言通り


山口先輩に話しかけている


中野さんほんとにほんとだったんだ

 

誰にでも優しい山口先輩も


そんな中野さんの気持ちを


知ってか知らずか


相変わらずの紳士な対応をしている





はぁ


今日何回目のため息だろう


好きか嫌いかと聞かれたら


好きなことは間違いない


だけど先輩にもし気持ちが知られて

 

気まづくなるのは嫌だし


それに何より今の関係が壊れちゃうのが

 

怖かった


さっきの中野さんへの対応を見ていると


やっぱり山口先輩は


誰に対しても優しく接する人なんだと思う


今まで築きあげてきたものが


一気に崩れてしまった気分





Rui


2週間後


ガラガラ


あっ.....


学校帰り、タイミングが悪かったと思う


母親「Ruiー、入って大丈夫だよ」


ガラガラ


Rui「よう」


母親「よう


お母さん今からね髪の毛全部


剃っちゃおうと思って」


やっぱりタイミング最悪だった





Rui「じゃあ先に俺がやろうかな」


母親「何言ってるの


あなたは必要ないでしょうが」


Rui「いや最近髪の毛うっとおしいと


思ってたんだよね」


母親「いや、Ruiお母さんに気を使わ.....」


おばぁちゃん「あら偶然私もしようかしら」


母親「いやいやお母さん」


Rui「まず俺からな、バリカン貸して」





母親「Rui」


おばぁちゃん「Ruiハンサムだし


どんな髪型でも似合うわよ」


Rui「おう」


いいや、やっちゃえ


ウイーン


母親「Rui......」


ウイーン


Rui「よし、完了次、母さんの番な」


母親「えっ、うん.....」


おばぁちゃん「じゃあ


おばぁちゃんがやろうかな」


ウイーン


ウイーン





母親「Rui.....ありが.....とう」


Rui「おう」


母親「お母さんも.....ありがとう」


おばぁちゃん「じゃあ最後は私ね」


Rui「いやいやいや、おばぁちゃんは


やらなくていいから」


母親「うんお母さんはそのままでいて」


おばぁちゃん「そう?」





Miku


あれから2週間後


先輩と中野さんが二人で話してるのを


ちょこちょこ見かけるようになってから


なんとなくメールする気になれなくて


月日だけが過ぎていく


なぜか先輩からもメールが来なくなって


しまった





どうして?


受験勉強で忙しいの?


それとも.....中野さんに心変わり


しちゃったの?


心変わりも何もはじめから先輩とは


付き合っていたわけではないし


先輩の気持ちがこっちに向いていた


わけでもない


はぁ





ピコン


えっ、メール


先輩だ


「Mikuちゃん、元気?


最近塾とかなんだかんだ忙しくて


今週の土曜日空いてる?」


なんだかんだ


そのなんだかんだに間違いなく


中野さんは入ってるだろう 





土曜日、もちろん空いてる


誘ってくれてるの?


一度は諦めようと思ってた先輩のこと


でもほんとに単純

 

この言葉だけで一気に挽回





ピコン


またメール来た


「中野さんて、Mikuちゃんと


同じクラスだよね?


土曜日遊びに誘われたんだけど


彼女のことあんまりよく分からないから


Mikuちゃんにも来てほしくて」





えっ


中野さんもう先輩のこと誘ったんだ


てことは土曜日3人で遊ぶの?


それは中野さんは知ってるの?


私も微妙だけど中野さんも嫌だと思う


それに中野さんには先輩とは何もない


って言ってしまった


「すみません私土曜日空いてないので


中野さんと二人で出掛けてください」


送っちゃった.....





Rui


2週間後


ガラガラ


病院に来るのは3日振り


母親とおばぁちゃんに言われた通り


塾に通いはじめた


最近成績が落ちてしまったこともあり


第一志望の星南大学には


このままだと届かない





母親がまだ元気だった頃は


宇宙航空学科に入って


そういう仕事に就けたらと思ってたけど


こうなった今


この学部で何を学ぶんだろう


そもそも大学に入る意味はあるんだろうか





それよりもいつこの治療が終わるのか


いつ.....治る.....のか、それとも


あえて医者には細かいことは聞いていない


これだけ情報が豊かな時代


何か治る方法かあるはずだ  





おばぁちゃん「Rui


どうしたのぼーっとして」


Rui「あっ、いや


そうだこれ母さんが好きないちご」


母親「ありがとう」


つい3日前に会ったとこなのに


また痩せた気がする


今日は体調が優れないらしく寝込んでいる


おばぁちゃんがひたすら背中をさすっている





母親「お母さん」


おばぁちゃん「何?」


母親「寒気がする」


おばぁちゃん「あら、やっぱり電気毛布


用意してもらおうか?


看護婦さんに聞いてみる」


プー


プー


ナースコールをしても


誰も来る気配がない


おばぁちゃん「誰もいないのかしら?


ちょっと呼んでくるわね」


ガラガラ





久しぶりの親子二人


昔なら二人でいることが当たり前だったし


何話そうなんて考えなくても


ひたすら同じことを言いあっていた


俺と母さんいいコンビだったと思う


痩せて骨が浮き出てしまった背中を


恐る恐るさする





母親「Rui、大丈夫だよ」


Rui「何言ってるんだよ」


「もうこれ以上....あんたに


かっこ悪いとこ.....見せたく.....ないよ」


「かっこ悪くないよ、かっこいいよ」


「えっ.....」


「最高の母親だよ」


「Rui.....」

























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