第59話 日常

Hayato「Mikuちゃん


来週どこか遊びに行かない?」


Miku「えっ、来週ですか?」


「予定入ってる?」


「いえ」


「じゃあ、土曜日どこ行きたいか


今日の放課後までに考えておいて


放課後またMikuちゃんの教室に


聞きに行くから」


「えっ、教室ですか?」


「迷惑?」


「あっ、いえ」


「じゃあまたあとで」





行ってしまった


彼の名は山口Hayato先輩


そう、この前パソコンルームであった


一連の騒ぎの時に私を助けてくれた人


といっても先輩は体を貸していただけなので


私を悪から守ったという意識もなければ


記憶もない


それから先輩には双子の兄弟がいる


名前は山口Shun


さっき言った悪が山口Shun 先輩


といっても


この先輩もまた体を貸していただけなので


自分が悪だったなんていう意識もなければ


記憶もない





あの事件以来、Shun先輩を


パソコンルームで見かけることは


なくなった


それから悪の世界の人からも


連絡は来なくなった


結局この悪がどこの世界で


どういった存在の人たちなのかは


分からなかった


言えることは


司令センターと敵対する世界の人





土曜日どこに行こう


今まで友達という存在に


全く縁がなかった私は


同性の友達とすら出掛けたことがない


そんな私がいきなり異性のしかも先輩と


二人っきりで出掛けるなんて一大事





実は4次元世界にいる間に


もう一人っていったらいいのかな


この世界にいた仮の私がHayato先輩と


映画を見に行く約束を


していたみたいなんだけど


あまりにも突然すぎて断ってしまった


そこでHayato先輩とは終わりかと


思っていたんだけど


そのあともちょこちょこ


教室に来たり話しかけてくれたりして


今日に至る


こんな私に懲りずに話かけるなんて


なんというかもの好きな人だと思う


クラスメイトも友達すらいない私のもとに


先輩が訪ねてくるもんだから毎回驚いてる


そりゃそうだ


私だって毎回驚いてるんだから





ガラガラ


Hayato「Mikuちゃん!」


一斉に視線が集中する


今日も派手な登場の仕方だ


先輩は毎回クラスメイトが


反応していることに


気づいていないんだろうか


それとも


気づいてるけど気にしていないのか





Miku「先輩が来ると毎回クラスの皆が


反応します」


Hayato「あー、そうだね」


気づいてはいるらしい


Hayato「迷惑だった?


もしMikuちゃんが迷惑なら


もっと静かに登場する」





フッ


笑ってしまった


静かに登場


迷惑か迷惑じゃないかと言われたら


「いえ、迷惑ではないです」


「じゃあ、今まで通りで」





そう、迷惑ではない


それどころか少し優越感に浸っている自分が


いるのも事実


Hayato「そうだ、土曜日どこ行きたい?」


Miku「それなんですけど


特に浮かばなくて」


「ここ行きたいとかないの?」


「今まで友達もいなかったので


誰かと出掛けたことがないんです」





暗い子って思われたかな


暗い子っていうのは事実


今さら取り繕ったって仕方がない


それで離れていくようならそれまでの人





「そっか、じゃあ俺が決めてもいい?」


あれ、友達いたことないの?とか


突っ込まれるかと思ったけど


「はい、お願いします」


「了解、じゃあ、遊園地はどう?」


「遊園地.....」


「あっ、嫌だった?」


「いえ、嫌じゃないです」


「じゃあ、決まりね楽しみにしてる」





先輩はこういうことをサラッと言う


どういうつもりで言ってるんだろう


私が友達のいないかわいそうな子だから


同情してくれてるのかな






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