第44話 Rui

結局高校は予定通り理系


それから公立を選択


宣言通り塾には行かず独学で勉強


そもそも人に教わるのが得意ではない


というより、苦手だ





例えば数学


答えに行き着くまでの道のり(式)は


ワンパターンではなくいくつか存在する


ゴール(答え)にたどり着ければ


道のりはどうだっていい





先生はその何パターンかの中から


最も生徒が理解しやすいであろう方法を


選択する


時にその選択が俺の中で


効率のいいものではなかった時に


イラッとする


そんなことが往々にしてある


だから塾には行かない


母子家庭だからとかではなく


それがベストだから





そんな俺が今何を眺めているかというと


合否結果がずらりと並べられたパソコン


そう、今日は合格発表の日





トントントン


トントントン


「Rui、開けて」


どういう状況かと言うと


今日は第一志望合格発表の日


こんな俺だって人間


緊張することもある


それが今日





合格かどうか一刻も早く知りたい母親が


さっきから扉の向こうで


ひたすら俺を呼んでいる





「まだ見てないから待ってて」


「待てないから一緒に見よ」


「待ってて」


「じゃあ、早く」


「じゃあ、黙ってて」


シーン





俺の番号は517番


「Rui、開けて」


またはじまった


517、517、517


505、511、


あっ、あった


トントントン


トントントン


「Rui、開けて」


ガチャ





「もうRui遅い、どうだったの?」


「受かってた」


「えっ、ほんとに?」


「あぁ」


「ほんとにほんと?」


「うん」


「すごい、すごい、すごい


さすがお母さんの子


まぁ、お母さんは頭はいまいちだったけど


えー、どうしよう」


「いや、どうもしないよ」





「そうだ、おばぁちゃんに報告しなきゃ


今日は久しぶりに天体観測ね」


「今の時期寒いよ」


「寒いから星がよく見えるんでしょうが」


「確かに」







季節は冬真っ只中


時刻は23時


とにかく寒い、その一言に尽きる


二人でわざわざ2時間かけて


電車を乗り継いで


茨城の星空が見える絶景スポットを目指し


ここまで来た





シーン


寒すぎる


「Rui、思った以上に寒いよ」


「だから言っただろ」


「お母さん、着る服間違えてきた


寒いわ、寒すぎる」


こういう時はおしゃれより機能性重視だろ





「これ、着たら?」


「えっ、このダサいの」


「じゃあいいや」


「いや、やっぱり貸して


うわぁ、あったかい、あったかいわー」


ほんとに単純な性格


もうすぐ高校だというのに


母親と二人で天体観測


俺の将来が思いやられるのかもしれない





「Rui、見て


こんなに綺麗」


「ほんとだ」


「天体望遠鏡で見てよ」


肉眼でも綺麗な星空だった


「うわ、すごいな


すごすぎて逆に有り難みがないな」


「もうちょっと気の利いた感想ないの?」









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