第16話 お巡りさんも見放したお店で働いているのよ!!

あるお店での出来事。

駅からかなり離れた住宅街のど真ん中にそのお店はあった。

開店して間もない。

住宅街と言っても木造アパートが密集し、昼間から営業している大衆酒場がある昭和チックな街。

駅から徒歩なら30分くらいかかるので、駅の駐輪場を契約して駅からお店まで自転車で通っていたが、お店のある雑居ビルのオーナーさんが、「自転車には必ず鍵をしなさいよ!柱とかに鎖で括り付けておきなさい」と。

お店の裏口に鍵だけかけて置いていたら、何度も盗まれた・・・

同僚は自家用車で通勤し、お店の近くの月極駐車に置いていたが、駐車場内なのに車上荒らしにあっていた・・・

選挙のシーズン、選挙応援の車が候補者の名前を連呼しながら街をノロノロ運転していたら、お店の斜め向かいのアパートの二階の窓から「煩いんじゃ!ボケ!!」と怒鳴り声。こんな光景、初めて見たよ・・・・・・(コワ!)

また、オーナーさんがお店に顔を出してくれたとき、「女の子の従業員は夜は暗くなるまでに帰した方がいいよ。この辺りは痴漢やひったくりも多いからね」と笑顔で。

もしかして、ここってヤバい場所??

もしかしてじゃなくて、ヤバい場所だ!!

家賃が安いから本部がここにお店を出したんだ。

昼間からベロベロに酔ったオヤジが店に乱入してきて、同僚が絡まれていた。

酔っぱらいの乱入は日常茶飯事だ。

そう言えば、お店の付近の単なる生活道路にワンカップや発泡酒の空き缶がいつも散乱している・・・

「禁煙パイポを買ったのに禁煙できないから責任とれ!」というお客もいた。

「腕の刺青を隠せるテープみたいなものは置いてないの??」と訊ねてくる水商売っぽい中年女性も来店。

若い夫婦は二人とも金髪に染めていたが、その二人の5歳くらいの子供まで金髪だったり・・

全身血だらけでやってきたお兄さんもいた。

完璧にヤバいところにお店があるんだ!!

とうとう女の子の従業員は、転勤希望を出して他の支店へ行っちゃった。

代わりに異動してきた女の子がいたが、親に言われたようで退職してしまった。

万引きなんて日常茶飯事。

盗まれたり、中身だけ抜かれたりする商品が、永谷園のお茶漬け海苔だったり、ボンカレーだったり、どん兵衛だったり、セコイ犯行ばかりだけど!!

商品を運ぶ業務用のカートをお店の横に置いていたら盗まれ、数日後、近所の児童公園で空き缶を集めている色黒のオバサンがそれを使っていて、怖くて返してくれとは言えなかったことも・・・

お店の前に置いている自動販売機も、朝、出勤してきたらこじ開けられ、金が盗まれてた。自販機自体はお店のものじゃなく自販機業者に場所を貸しているだけだから、何度壊されても関係ないと言えば関係ないという感覚に。

もう意識がマヒしているのかな?

ある日、レジの近くのケースに入れて置いていたタバコのカートンボックスが、一瞬、レジから離れた時に盗まれ、原付バイクで犯人が逃走した。

10個くらいのカートンボックスを抱えて店の前に停めていた原付バイクに走る犯人。追いかけたが原付バイクで迷路のような住宅街の中へ消えていった。

逃げる途中で犯人が数個のカートンボックスを道路に落としていたので、それを拾い、110番通報。

お巡りさんがやってきて、被害届は出したが、対応がイマイチ!!

この街ではよくあることようで、犯人が落としたカートンボックスも見せたのに、証拠物件として持ち帰りもせず、雑に扱われている感じだった。

納得がいかなくて、犯人が落としたカートンボックスの指紋などを調べてもらえないかと掛け合いにお店の近くの交番を訪ねてみた。

住宅街の交番なのに大きな交番で、お巡りさんも6人くらいいた。

対応してくれたお巡りさんの肩に付いている無線機?が絶えず鳴り響いている。

交番まで出向いても、結局、「こんな紙の箱は指紋なんて採れない」とか言われ、

相手にしてくなかった。

自販機が何度も壊されたり、万引きが多発したり、自転車が盗まれたり、荷物搬入用カートも空き缶集めのオバサンに盗まれたなど、今まであったこともお巡りさんに話してみたが・・

お巡りさんは、

「ここではそんな些細なことでイチイチ対応してられないんだよ!お店が心配ならば、ガードマンでも雇え!!」って。

ここはマジでヤバい。

それから同じような些細な??事件が何度も起こりながら日々は過ぎたが、その間、この街では、夜中に中年の兄弟同士が喧嘩して、弟が兄を殺し家を放火し付近も延焼する事件が起きたり、また、未開発の空地から生き埋めにされただろうという死体が出てきた事件もあったり。

やっぱり!やっぱり!やっぱり!マジでヤバい。

早く他のお店へ転勤になることを望む従業員ばかり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る