第14話 二章 四月五日 月曜日

 輝くばかりの晴天だった。遅咲きの桜の花びらが、緑の新芽を隠すように舞い踊る。それは我れ先にと散り急いでいるかに思えた。


 高等部の三階建て、白亜の校舎を望む外部掲示板の前には、俺と同じく真新しい制服に身を包んだ新入生の仲間が無秩序に集い、既にかなりの人だかりが出来ていた。皆、クラス分けを眺めつつ、これから始まる新生活の期待と不安に胸を膨らませているに違いなかった。


 だが、俺にはあまり興味の無いことだ。皆の顔は明るい。本来ならば俺も同じように浮かれていたはずだった。だけど俺は違っていた。こんな入学式に特別な意味など見出せなかったのだ。


 アイツの姿のない、ここ私立聖鳳学園高等部の入学式は実に色あせて見えた。入学式の今日、俺の隣にアイツがいたならば、アイツの減らず口をあれやこれやと宥めている俺がいたに違いなく。そして俺はこれから始まる学園生活のことを思って内心浮かれていたはずなのだ。

 そう、少なくともこんな『どうでも良いや症候群』には感染していなかったと思う。とはいえ、こんな事を今更考えても仕方がない。今、ここで俺がどんなにアイツのことを想っても、アイツはここにいないのだから。

 俺は特になにも思うところもなく、掲示板の前に歩を進めた。



「おい、充彦」



 早くも奴に見つかったようだった。見知った二枚目が声を掛けてくる。あのマヌケ面は悠人だ。小学校から見続けた顔、今ではすっかり軽薄な優男が身についたこいつ、空見悠人そらみ・ゆうとだった。


 悠人とも今年で十年の付き合いになる。テンパなのか軽いウエーブのかかった髪と、グリーンの聖鳳学園高等部の真新しいブレザーの組み合わせが実に様になっていた。不動明王を本尊に戴く大きな寺の住職の息子のはずだが、年を追うごとに煩悩の塊になっていくように思えるのは俺だけだろうか。

 将来、頭を丸めることが宿命づけられているとはいえ、このルックスで女の子に人気が出ないはずがないのだが。だがしかし、本人曰くそういうわけでもないらしい。確かにこいつの浮いた噂はあまり耳にした覚えが無かった。



「やっと来たのかよ充彦。朝、織姫ちゃんと話したけれど、鬼のようにブー垂れてたぞ? 後で謝っておけよな?」

「織姫なんて放っておけよ」



 そうだった。こいつ、なんだかんだで織姫一筋なんだよな。織姫のどこが気に入っているんだか。悠人が口にしているのは渡月織姫わたつき・おりひめ、俺の双子の片割れのことだ。織姫の奴、一昨日から入学式に一緒に行こう、と酷くうるさかった。俺はその誘いをのらりくらりと生返事で答えず、当日の朝になって蹴ったのだ。

 自分の意思でこの事態を招いたとはいえ、織姫が俺に募らせているであろう怒りは例えようもないほど大きいに決まっていた。だがそれも、どうでも良いことに違いは無い。



「そういうわけにいくかよ、バカ」

「良いんだよ」

「全く。知らないからな!? 後で織姫ちゃんにはしっかりと謝っておけよ? ……それにしても、そんな顔するなよ。今から入学式だぞ、入学式。お前それ、とても推薦入学で入った人間の顔じゃないぞ」



 悠人の言うとおりだよな。俺は俺の両親も通ったこの学園にどうしても行きたかったのだ。小さいときから繰り返し聞かされてきたこの学園での二人の思い出の数々。それが子供心にもとても楽しそうに思えた。ここに来れば、父さん達がそうであったように、俺も何か大切なモノを掴むことが出来ると信じていたはずだ。



「悠人、それこそどうでも良いだろ?」

「はいーはい。ま、良いか。充彦、オレはF組だった。お前は?」

「俺はまだ掲示板を見ていないけど、お前がF組なら俺もF組だろ? 小一から同じクラスなんだ。今さら別のクラスであるはずがないよな? それが不動明王尊のお導き、って奴なんじゃないのかよ」

「あー、それはない。今回こそ、それはないかもだ。先日、その仏様を罰当たりにもウチの小坊主の一人が蹴倒してだな……」



 悠人はまだ何か言っていたが、既に俺は聞いていなかった。俺は再び掲示板に目を向ける。



「俺の名前は何処だ?」



 見当たらない。俺がさらに掲示板を覗き込もうとした矢先、急に俺の視界が遮られた。俺が自分の名前を見つけるよりも先に、現在最も目にしたくない人物の姿が視界を掠めた。俺が逃げようと思った時には既に手遅れで、その人物は瞬く間に俺の鼻先に飛び込んで来る。大きな黒猫にも見えるその影は、物心ついたときから見慣れた、いや、見飽きた凶悪な猛獣の姿だった。



「お兄ちゃん!? よくも、わたしを置き去りにして!」

「う……っ」



 目を皿のようにして、恨みがましくジト目で見上げてくる三白眼。化け物めいた艶のある長い黒髪を緩く三つ編みにし、無理矢理一つに纏めている女。用があるときは髪を引っ張って呼んでくれ、と言わんばかりの長さだ。もちろん、そんな事を実行した暁には程なく黄泉の国への片道切符が進呈されることは間違いないだろう。

 悠人によると、山猫を思わせる小柄でしなやかな身体と、やや小柄な顔に収まる大きく丸い目は極めて愛くるしく保護欲をそそるらしい。俺には判らない。凶暴にして、ことあるごとに牙を剥く、俺の双子の妹である織姫をそう言う表現で納めてしまう心理が理解できないと言えよう。



「お兄ちゃんが一緒に登校してくれなかったから、クラス分かれちゃったじゃない! どうしてくれるのよ!」



 ほら、人目が有るにも関わらず、周りの事など完全無視のお構い無しに早速大声で噛みついてきた。



「……その二つにどういった関連性があるんだよ」



 俺は声を絞り出す。



「あるわよ! 星の巡りが変わったら、クラス分けした人の気が変わったのかも知れないでしょ!? 健気な妹を足蹴にするお兄ちゃんの非道のせいで、わたしの、いいえ!? わたしだけでなくみんなの運命を狂わせたのかも知れないじゃないの!」

「んなバカな」

「無いと言えるの!」



 人差し指を真っ直ぐ俺の鼻先に突きつけてくる。ああ、頭痛がする。こいつ、未だに自分の無茶さ加減を全く理解していないと思えた。でも俺が織姫に口喧嘩で勝ったことなど一度も無いのだが。



「それは言えないけど、そんな理由であるわけでもないだろ?」

「ううう! せっかく今年こそお兄ちゃんと同じクラスになれると思ったのに! 期待してたのに! お兄ちゃんと悠人くんがまた同じF組だというのに、どうしてわたし一人だけ仲間はずれなのよ! どうしてE組なのよ! それもこれも全部お兄ちゃんのせいだからね!!」



 織姫が地面を何度も何度も蹴り出した。なんと子供な……。反論は出来る。が、織姫が受け入れるかどうかはまた別の話だった。苦渋の選択をせねばなるまい。



「カナンハウスの新作、ブルーベリーヨーグルト」



 駅前のアイスクリームチェーンの新作を思い出す。コイツ、食べたがっていたはずだ。



「……アークグリルのジャンボチョコパフェ」



 しかし、織姫が要求したのはファミレスチェーンの定番である高級スイーツだった。



「……お、織姫、お前それはあまりにも」

「アークグリルのジャンボチョコパフェ!」



 織姫が無情にも繰り返す。酷く嫌な予感がしてならない。俺は最悪の事態が来る前に先に折れることにした。



「判ったよ! 奢れば良いんだろ! 奢れば! じゃあ今日の帰りで良いな!?」

「やったー! お兄ちゃん大好き! 今夜はアークグリルのデラックスプレートだよ! ゴチになります!」



 織姫が深々と腰を折り、ワザとらしく頭を下げた。そして、なかなか頭を上げようとしない。なんと言うことだろう。最悪には更に上があったのだ。何が起こったのかわらないが、高級スイーツが高級ステーキに変わっていた。



「冗談だろ!?」

「本気だってば! 兄上、ゴチになります!」

「お、おい織姫! やめろ!」



 頭を上げ、瞬く間に俺に詰め寄ってきた織姫が、逃がすものかと俺を捕らえに掛かる。このバカは事もあろうに、その勢いで俺に抱きついて来たのだ。



「おいおい、充彦。皆お前らを見ているんだけど」

「悠人!? 呆れてないで、早く織姫を引き剥がせよ!」

「どうしてオレがそんなこと。良きかな良きかな。あまり気にするなよ、諸行無常って言うだろ?」

「酷い坊主だお前は!」



 悠人に助けを求めたが無駄だった。初日から注目を集めてしまうなんて、実に不本意極まりないと言えよう。



「あ、君たちは! あの時の……」



 ほら。こんな騒動していると、視線を寄せるだけでは飽き足らず、話しかけてくるような鬱陶しい連中まで呼び寄せる……って、どこの誰だよ!? この耳障りの良い、甘ったるいソプラノ……。そういえばどこかで聞いた、聞き捨てならないほど重要で。しかも嫌な記憶を思い出させる声ではなかったか?


 俺はその声の主らしき、真新しいブレザーを着込んだ栗色の髪を持つ新入生の女のコに目を向けて……い!? このコは……!?



「君たち、このガッコだったんだ。君たちのことをリョウ兄にも聞いたんだけど、リョウ兄ったらあたしに何にも教えてくれなかったし? ね、ね、君たちもここの新入生だよね? 実はあたしもなんだ。あたし、天河朔耶てんかわ・さくや! サクヤって呼んで良いよ? よろしくね、恋人君たち」



 この前、レンタルスタジオで俺達を罠に嵌めてくれた女のコが目の前で屈託のない笑みを見せている。まさかこんな所で再会するなんて。俺達三人が固まる中、コロコロと笑う栗色のポニーテールが揺れていた。



 ◇ ◇ ◇



 教室に移動するときも、体育館の中でも、ひそひそ話が聞こえてくる。そしてその視線の先には常に俺があった。きっと朝の織姫との騒動が話題の中心になっているに違いない。

 ああ畜生、苦楽をこれから共にするであろうクラスメイトであるお前達が俺の話題で盛り上がり、早く互いに打ち解けてくれることを祈っておくよ。全く俺も優しいな。

 腐っても俺は俺と言うことか。俺の魂の底まで染みついているに違いない俺の委員長気質は、そう簡単には抜けないのだと改めて思い知らされる。


 体育館で赤毛が舞っていた。俺は一瞬目を疑う。確かに見間違いだった。新入生が整列する中、長髪を纏めた栗色のポニーテールが一際俺の目を引いたのだ。天河と名乗ったあのコだ。気づけば俺は、その天河嬢を目で追っていた。あのコはどういう巡りあわせなのか俺と悠人と同じクラスらしい。


 俺はあのコを目にする度に先日のスタジオでの一件を思い出し、どうしても意識せずにいられない。一歩間違えばストーカー、おとなしく言い換えたとしても自意識過剰だと断言できる。明るく活発、先ほどから誰に対しても気さくで人当たり良く物怖じせず、その度に変わるコロコロと変化して止まない、どこをとっても魅力的な表情の数々。そんなあのコの姿から俺は目を離せないでいた。


 あのコはアイツとはあまりにも違っていた。でも、そんな積極的な表情の節目には、寂しく孤独を感じさせる冷めた横顔がある。どこかアイツを思わせるものがあるからだろうか。あのコのことが、俺はなぜか気になった。


 それは教室で自己紹介が始まっても同じだった。



「初めまして皆の衆! あたし、天河朔耶っていうんだ! この学校に来たのは芸能人になりたいから! ここの卒業生には有名な人がたくさんいるよね? あたしもなりたいんだ! あたし、この春からバンドを始めようと思うの。ねえ、みんな。誰か、あたしのバンドに入らない? 一緒にスターダムを目指そうよ! 自薦他薦待ってるからさ! え? あたしの顔と胸じゃ無理? そんな、せめて入学前に言ってよね? 酷いよ! 特にそこの君!」

「お、俺はそんな事言ってない!」



 右隣の席に陣取るあのコ、天河嬢がびしっと俺の顔に右の人差し指を突きつけた。こんな事がなければ俺はこんな目立つまね、反論なんてしなかった。初日から目立ちまくるなど冗談じゃない! そうでなくとも今日はすでに今朝の織姫との一件のせいであれこれと噂になっている。これ以上は勘弁してくれと言いたい。



「ぎゃはは! ウソウソ。君はきっとそんな事を言わない人だよね。信じられるし、信じてるよ。ごめんね? 君があんまりあたしの顔ばかり見てるものだから、悪戯したくなったんだ。もしかして君、あたしに恋しちゃった?」

「ちょ、おま!?」



 俺は天河のあまりの言い分にまともに反論すら出来なかった。



「ほら。あたしってこんなノリだから、男の子からも話しかけやすいらしいし? あれ? でも君。今日の朝さ、掲示板の前ですんごい可愛いコと抱き合ってたよね!? ほら、この前の夜も君と一緒にいたコだよ。そうだよね!?」



 なんてこと言いやがる! この天河嬢、かなり滑り気味だが飽きの来ない笑顔と押しの強さでクラスメイトからある程度の好感触を得ることに成功しているようだった。ただ、俺をネタにするのは止めてくれ。



「ば、ばばばバカ言うなよ! それに織姫は俺の妹だ!」



 クラスが一斉に湧いた。天河はクラスの皆と一緒になってひとしきり笑い転げたが、それ以上は何も口にしなかった。珍奇なお隣さんのせいで多少の波乱はあったが、クラス最初の学級会は終わりかけている。視線の多くが自分から離れ、教室も落ち着きを取り戻しつつあった。

 だが事件は、そんな俺が油断したその時に訪れる。



「はいはいセンセー! 学級委員ですが、小学校からずっと欠かすことなく学級委員を務めているた猛者を知ってます! 彼を推薦しまーす」



 嫌な予感がした。すごく嫌な予感と言えよう。そして俺の経験上、こんな予感は間違いなく的中するのだ。



「と、言うわけで渡月充彦わたつき・みつひこ君が良いと思いまーす」

「ちょっと待て!?」



 同じ中学だった奴がとんでもないことを言い出した。俺はとっさに抗議の声を上げたが、俺が反対を貫いて学級委員がロクでもない奴になる事の方がもっと恐ろしい。

 俺の心に一度迷いが生まれてしまえば、もう後は俺の魂の底から沸き上がる使命感に流されるだけだった。俺は最終的に有り難く、今年も学級委員を拝命したのだ。



「へぇ。君、冴えない顔してるのにそんな過去があったんだ」



 またも、お隣の天河譲が平気で俺の心に触れてくる。



「うるさいな、天河。それに顔は関係ないだろ!?」

「あるある。君さ、入学初日なのに既にみんなの興味を釘付けじゃん! 良い事じゃない。よろしくね、委員長君!」

「……っ! お前も人のこと言えないだろ!?」

「あたしは狙ってやってるんだから良いんだよ。だって、目立ちたいもの!」



 俺は軽い頭痛に見舞われた。元を正せば俺の自爆が悪いのだろうが、腑に落ちるかと言えば全くそんな事はなく。それにしても俺はとことんやっかいな奴に目を付けられたのかも知れない。



 ◇ ◇ ◇



 悠人と共に教室を出る。扉の向こうの廊下には、窓を背にした織姫が待っていた。ああ、そうだっけ。これから俺の財布が軽くなる約束をしていたのだった。教室から出て行くクラスメイトが何事かとチラ見してゆく。ただ、織姫を見た後に俺の方にも視線を寄せて行くのは勘弁して欲しかった。



「よ、織姫ちゃん。新しいクラスはどう?」

「最悪かも。お兄ちゃんも悠人くんもいないんだもの。それに話をしようとしても、みんなどこか余所余所しくて」



 朝にあれだけ騒げば誰だって二の足を踏んで遠慮するだろ? ……と思わなくもないが、黙っておく。わざわざ藪を突くことはない。突いて出てくるのが蛇ならまだ可愛い。きっと八岐大蛇やまたのおろちも真っ青な化け物が出てくるに違いないのだから。



「でも、仲良くなれそうなコはそれなりにいるだろ? 面白そうな奴いないの?」

「んー、どうだろ? みんな影薄いなぁ」

「あはは」



 お前が濃すぎるんだよ、とも言わなかった。それにしても織姫の酷い台詞を聞いても動じない悠人は実に大人だ。乾いた笑いを返しながらも織姫の相手をしてくれている。ホント有り難いよ。



「委員長君たち、また明日ね!」

「あ、ああ」



 栗色のポニーテイルが視界に入る。声を掛けてきたのは天河だった。立ち去り際に、天河はひらひらと手を振ってくる。天河か。どうしても目で追ってしまう。無理もない。あんなに綺麗なんだ。ほら。悠人でさえ、あのコを目で追っている。健康な男子なら仕方が無いことだと思えた。



「ちょっとお兄ちゃん? 今度はあの子なの!? あの子って、この前スタジオであたし達を騒動に巻き込んでくれた、とんでもないタマだよね!? お兄ちゃんは、あんなのが良いんだ!? もう! 手が早いんだから!」



 織姫の目が皿になる。実に冷え切った視線だ。血を分けた実の兄妹に向ける視線とはとても思えない。



「な、なんだよそれ!」

「言い訳無用! って、悠人くんもなの!? もう、男の子って最っ低!」



 俺はこの日、パフェとステーキの両方を奢る羽目になった。実に甘い兄だと思う。



 ◇ ◇ ◇



 俺は今夜もアイツにメールを打っている。今日も二十三時を廻っていた。もはや定期連絡と呼んでも良いかもしれない。このメールがアイツの目覚まし代わりになると思う。



『おはよう。新しいクラスで隣が変な奴になってさ。いちいちちょっかいかけて来てうるさいんだ。もう、大変だよ。それに、今年もまた学級委員させられることになったんだ、たまんないよ』

『朝から女の話かよ。どうせお前のお隣さんは私なんかよりいい女なんだろ? せいぜい仲良くやったらどうなんだ、万年委員長』

『そうするよ』



 今まで即レスだったのに、返事に間があった。



『タヒね。冗談かと思ったら本当に女の話かよ! 朝から気分が悪い。お前なんか死んでしまえ、このクズ野郎! 全く、サイテーの目覚めになったじゃないか』



 ……どうしてこんな展開になるんだ? 何かまずいこと書いたか? 俺。


 アイツを宥めるのに少し夜更かししてしまった。良くわからないが、物凄くメールの文面が荒れていた。気がつけば、俺はアイツに歌詞を作る約束をさせられていたのだ。



『歌詞の件。もうちょっと待ってくれ』

『良いよ。急がなくても。適当に待っているから、そんなくだらない心配するなよ、バカ』



 ◇



四月十五日 木曜日



 家に帰ると、電話料金のことで母さんに怒られた。でも俺はアイツとのメールのやり取りを止めなかった。そしてまた、次の通話料金の締め日に母さんから怒られることも知らずに。

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