第150話 プリケツ
「国際通りに出た。今度こそマクドナルドだ」
「少佐はどんだけマックに行きたいのかな」
「にーちゃんにお土産買っておこう」
「星の砂とかいうのは何がいいのか分からねえ。ただの砂じゃねーのか?」
「次は美ら海水族館だ」
まとまりがない多国籍軍五人。取り敢えずお昼を食べてないのでマクドナルド。ファミレスでもいい気がするけど。
「強盗だ! 手ぇ挙げろ!」
「ビッグマック二つとグランベーコンチーズとてりやきと…、スターチス、早く決めろ」
「あー、急かすなよ、ちょっと待て…。月見チーズで」
「月見チーズで。あ、全部セットで。ドリンクは全部コーラでいいな」
「いや、一つだけ爽健美茶だ」
「か、かしこまりました…」
「強盗だっつってんだろ! このショットガンが見えねえのか!」
「おいオッサン」
「ああ?! なんだこのガキ!」
ぐにゃっ
「ひッッッ??!?!?! 」
ショットガンを鷲掴みにしてまさに読んで字のごとく、ぐにゃっと折り曲げてしまったのでござる。
ベチコーン! がしゃーん!
「うるせえ」
「おおおおおお客様?!」
パンチ一発。この作品では強盗は定番で扱いやすく、犠牲にしやすいでござる。大変助かります。
「こういうときなんて言うんだっけ?」
「たーまやー、って聞いたことあるよ。日本人は夏になると皆そう言うんだって」
「それは打ち上げ花火だ」
「ケッ、きたねえ花火だ」
「天井、武蔵野のお嬢にツケといてくれ」
請求書、天井の修理代50万円也。
「おおお、すごい! 大きい!」
「ギネスブックに登録されたことがあるらしい」
「この一番でけえのも魚か?」
「それはジンベエザメだ」
美ら海水族館、【黒潮の海】。ドバイに抜かれるまでは世界最大のアクリルパネル水槽だった。ドバイマネーつおいでござる。
「フランス警視庁を出ていくときに同僚から羨ましいぞ裏切り者! って言われたけど裏切って正解だったよ」
「なんだあのブッサイクな魚!」
「それ魚じゃなくてマナティーね」
「今度テストするゲームは心の力が鍵だと聞いたのだが、心の力とはなんだ? 魔術とは違うのか?」
「ジェダイが使うフォースだろ」
「少佐は脳筋かよ」
「なんだと」
「次は万座毛でも行くか」
ルートがあっちこっちしていますが魔術の神秘的隠匿がどうとか関係なく魔術で移動していますでござる。
「うわっ、崖っぷちだ!」
「この崖そのものが珊瑚だそうだ。我々は隆起した珊瑚の上に立っている」
「珊瑚って草生えるのか」
「沖縄の海も広くて綺麗だなー」
「少佐は沖縄に来たことはないのか」
「ない。別にアメリカ海兵隊だからって沖縄に来て当たり前ってワケじゃないぞ」
「そろそろホテルに戻ろうぜ」
「その前にもう一回泳ごう! ホテルのそばにビーチあったよね! ジェットスキー乗りたーい!」
「子どもは元気でいいねえ」
また着替えてホテルのビーチで泳ごうとするがなにやら騒がしいでござる。そう、この作品で海といえば毎度おなじみおサメさんでござる。
「サメが人を襲ってやがる!」
「天獄ハン…!」
「やめなって、正体バレるよ。というかむしろそれ使ったら余計に被害増えるよね」
「じゃあどうすんのさ!」
「ではここは私が。例えば、そのへんに落ちてるこういうキレイな貝殻を投げるとしよう。水切りの要領だ」
アメリカ海兵隊、フランス警視庁、神剣持ちの幼女✕2というメンツで最も細いと思われる元サラリーマン魔術師さん。しかしてこの人もほか四人に比べて細いというだけで、オールバックにアンダーリムの眼鏡とインテリに見えて『体が資本のサラリーマン』を地で行く男前な肉体でござる。さらにそこに魔術を重ねるとそのへんの異能力者くらい簡単に凌駕するでござる。たぶん。
「ハッ!!」
どぱぁん!
「サメが吹っ飛んでったぞ」
「見事な場外ホームランだ」
「つーか、一度も跳ねてねーじゃねーか。完全に水面から浮いてたぞ」
「ボクもやるー!」
「そのへんにまだ二、三匹いるから戯れてきなさい。そのへんにジュゴンもいるでしょ」
「yeahhhhhhhhhh!!!」
大きく振りかぶり見事に水平線を真っ二つに割った貝殻はおサメさんを遥か彼方までそれは見事なアーチでふっ飛ばし、綺麗な虹を描きましたとさ。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!! 何やってんだアンタ達?!」
「あ、すみませんこういう者です」
「む、武蔵野特異課?! 失礼しました!!」
「あれ、お巡りさんご存知なの?」
「いや〜あそこちょっとおかしい人多いですから…」
「カナダフランス人ショック」
晩ごはんにはゴーヤを入れてもらったでござる。今回は武蔵野の名前を使ってダダをこねてホテルの通常メニューではなく、ゴーヤチャンプルー、タコライス(ゴーヤ入り)、、野菜炒め(ゴーヤ入り)、コチュジャン(ゴーヤ入り)、焼きうどん(ゴーヤ入り)、ゴーヤの肉詰め、ゴーヤの天ぷら、ゴーヤバーガー、ゴーヤのおひたし、ゴーヤの明太マヨサラダ、ゴーヤの佃煮、ゴーヤの和え物、お味噌汁(ゴーヤ入り)でござる。
「この執拗なまでのゴーヤ推しはなんなのかな」
「そこのアメリカ海兵隊と褐色幼女。ゴーヤだけ除けて食べるのは良くないぞ」
「これが苦いって知ってるんだよ…」
「苦いのはなあ…」
「いらねえならオレが全部食っちまうぞ」
オリジナルの方のスーさんは好き嫌いが無いご様子。猛烈な勢いでかき込んでいく姿はまさにピンク色の悪魔。一体その小さな体のどこに入るというでござる?
「沖縄に来たからって無理にゴーヤじゃなくても」
ちなみに沖縄はゴーヤの生産地ランキングぶっちぎりの一位でござる。
「デザートはガリガリ君(ゴーヤ味)だよ〜」
「絶対それマズいやつ」
そんなものはありません(cv.津田健次郎)。
「というのは冗談でパイナップルとミミガーだよ。泡盛もあるよ〜」
「おっ、待ってましたアルコール!」
「ただし」
「ただし?」
「ゴーヤのロイヤルストレートフラッシュをちゃんと食べたらね」
「ぬぅぅぅ…!!」
翌日。那覇空港→関西空港で降りてJR特急で京都駅でござる。
「さて今日からは京都・奈良だ」
「忙しいねぇ」
「オレはつまんねー。寺だの神社だの見て何が楽しいんだ」
「見た目凄いとかあるだろ?」
「他には?」
「ええと…見た目とか見た目とか見た目とかそれと
見た目だ」
「少佐のうきーん!」
「腹筋では飽きたらず脳までも筋肉に置き換わっているのか」
「まずは清水寺だ。『清水の舞台から飛び降りる』というあの清水寺だ」
「飛び降りていい?」
「怒られちゃうよ」
「ちなみに飛び降りても死ぬほど高いということではない」
「昔は釘がないんだろ? 木だけで組み合わせてこれだけデカイのを建てるなんてやっぱり日本人は頭おかしいな」
「は? 釘使わねーで建てられるワケねーだろ」
「釘を使わず建てられている寺社仏閣は清水寺だけではないぞ」
「日本人きめえ…」
「次は円山公園に寄って八坂神社だ」
「円山公園は桜の名所らしいけど、この時期は咲いてないよねえ」
「つーか清水寺から歩いてくるだけですげえ時間掛かったぞ」
「少佐が木刀買うって駄々こねるからー」
「修学旅行の中学生かまったく」
「お前らは木刀の良さをなんにも分かっちゃいない」
「脳筋は無視して西楼門だ。ここがパンフレットに載っていて一番分かりやすい」
「参道は雰囲気あるねえ。夜とかなんか出そうなくらい」
続いて三十三間堂。本当に柱と柱の間が33個あるとかないとか。中にある1000体もの仏像が立ち並んでいる姿は圧巻でござる。しかしこのあたりでちょっと問題が。
スッ
スッ
スッ
「なんで3人して一緒にかがんでるの?」
「上の柱に頭が当たりそうなのさ」
「待て待てインテリ。お前は日本人だろ」
「日本人でも190cmもあればさもありなん」
ところ変わって奈良公園。正式名称は奈良県立都市公園 奈良公園。鹿さんが沢山いて鹿せんべいがあげられるのは知ってる人も多いはずでござる。
「鹿に囲まれても仕方ない、鹿だけに」
「おせんべいはたくさんあるから急がないでねー」
「鹿のお腹もふもふー。にーちゃんとはまた違った抱き心地」
「天然毛皮の枕で昼寝出来るんだから寝返った甲斐もあるもんだぜ」
「コイツらオスの鹿でハーレム作ってやがる」
最後はお決まり貸し切り露天風呂。残念ながら夏(作品内標準時)なので紅葉や雪景色といった風情は無いのが残念でござる。さらに野郎三人幼女二人なので、サロンのお風呂シーンみたいなうら若き乙女達のうふーんであはーんなえっちな絵面にはならないでござる。
「わーい! 貸し切りだー!!」
「こらこら、走ると危ないぞ」
つるっ
すてーん
ごちん! ビシッ!
「ビシッ?」
「床の石の方が割れてやがる」
「これがホントの石頭か」
修理代はレイミさんのお給料から天引きでござる。
「ふあ〜、温泉に入りながら日本酒ってのもオツなもんだねえ」
「これで景色と美女があればもっと良かったんだがなあ」
「唯一引率で来られるとしたらなっちゃんさんらしいけど、彼女忙しいみたいだからねえ」
「オレらの真っ裸じゃ不満だってのかよ」
「おおいに不満だな」
「そもそも君たちは子どもだろう」
「はあ〜、サロンの温泉もいいけど露天風呂もいいもんだねえ〜」
「そこのロリっ子はおっさん臭いな」
ちなみに続きません。
「ええっ?! 札幌雪まつりは?! 青森ねぶた祭りは?! 石狩鍋に兼六園は?!」
機会があったらそのうち……。
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