第128話 でーんでーんでーんどんどん
前回。食堂のバイキングで絡まれた勝負に軽く決着が付き、それを気に食わない金髪縦ロールさんが乱入。これもなんなく解決したでござる。
「じゃーイケメンくんこっち、金髪縦ロールさんこっち」
はい、ということで応接室。午後の授業をすっぽかして勝負してたら二時間も三時間も無駄にしたでござる。しかし労働力が増えたのでこれを使わない手はない。
「あの、お兄様? なんですのこの大量の書類は?」
「お兄様じゃないから。コネと権力と不正の動かぬ証拠。喋ったら首が飛ぶでござるよ」
「ええ…」
イケメンくんと金髪縦ロールさんを拉致って再び作業。姉上は真面目に授業に戻ったでご
ざる。
「そりゃそうでしょう。中卒でしばらく無職だったんだからそんなヤツがいきなりなんも無しにいきなり大卒(予定)になるわけないでござる」
「こんなことになるなら大人しくしていればよかったですわ…」
「あー、あと言っとくけどね。吾が輩18歳だからキミらと同い年でござるよ」
「「oh…」」
「year! ほらほら、手動かす! 終わるまで帰れないでござるよ!」
「私も早く帰りたいので手伝います」
四人になった応接室で猛烈な勢いで書類を片付けていく。なーに、ちょっと筆跡が違うくらいなんてことないでござる。
「お、終わりました…」
「こちらも終わりましたわ…」
「もう陽が暮れているでござる。…18時か」
「やっほー、やってるー? あれ、なんで部外者がここにいるの?」
書類との格闘を始めて三時間ほど、ようやく終わったタイミングでちょうどレイミさんが戻ってきたでござる。私服でござる。露出は少ないけどおっぱいは隠す気がない様子。目の保養になるからいいけど。
「かくかくしかじかでござる」
「まるまるうまうまね。まあいいけど、あんまり騒ぎ起こしちゃダメよ? ここのことも漏らしちゃダメよ?」
「いやー流石にもう絡んでくる生徒はいないと思うでござる」
「だといいけど。はいこれ、生徒手帳とアルバイト用の身分証。なくしちゃダメよ? 再発行になったらまたこの山みたいに書かなきゃいけなくなるから」
「大丈夫、その時は…分かってるでござるね?」
「「ひい!」」
流し目で二人を見る。吾が輩の素性が知れ渡ってしまったから、自由気ままな用務員ライフはもう訪れないでござる。元凶の二人には頑張ってもらうとしましょう。
ピピピ!
二人を蛇に睨まれたカエルにしているとどこからかスマートフォンが鳴ったでござる。
「あれ、呼び出しだわ。…えー? こんな時間にバスジャックー?」
どうやらレイミさんだった様子。谷間からスマホを取り出すと画面を見てめんどくさそうに言ったでござる。つーか谷間に入るもんなの?
「行きましょう」
「母上に帰りが遅くなるって連絡でござる」
>>吾が輩『ごめんよ母上。今日も晩御飯の時間までに帰れないから自分で作って欲しいでござる』
>>母上『めんどくさいから出前取る』
駄目だあのニート。もはやレトルトカレーも作る気ないでござるか。
「私はこの書類チェックしなきゃいけないからパースー。二人で行ってきてー」
「副学長、行ってきてとはなんのことですの?」
そっか、イケメンくんや金髪縦ロールさんは知らないでござるね。
「この際だから見てみる? ここだけの世界機密」
「……やめておきますわ。人には誰しも秘密はありますが、これは物凄く悪い予感がいたしますわ」
「僕も同感だ。これ以上余計なことには首を突っ込みたくない。自分の身が危ない。触らぬ神に祟りなし」
「この負け犬チキン野郎」
「ぐはあっ!!!」
カレンさん火の玉ストレートでござる。
でーんでーんでーんどんどん←ヱヴァー
「ほいで、バスジャックとな?」
「カーテン閉めててまともに見えるのは運転席だけだ。犯人は一人。アタシが狙撃したいところだが乗客が射線に被ってて無理だ」
「わざとですね」
輸送ヘリで迎えに来たリエッセさんから中で状況を聞く。これは絶対追い付いてどうにかしろと言われそうな悪寒。
「真上から打てばいいでござる」
「アホか。間違って引火したらどうする」
「あー」
「ということで取り敢えずあのバス止めろ」
乗っ取られたのは大型観光バスで人質は乗客25人と乗務員と運転手。高速道路に入り突っ走っているとのこと。射線上に乗客が被ってるということは犯人は自分の周りを人質で固めてるでござるか。
「なんという雑な指示でござる。うーん、止めろと言われましても」
「いつもなら普通に打つのになんで今回は慎重なんですか?」
「あのバスに乗ってんの大学生グループらしいんだけど、金持ちのボンボンの集まりなんだっとよ。無傷で帰せって圧力来た」
「犯人だけならバス吹き飛ばすなりひっくり返すなりすればいいだけの話ですけど、今回はそうもいかないと」
「なーるへそへそ。犯人は身代金目的でござるか」
「30億と選りすぐりの美少女10人が欲しいってさ。今のお前じゃん、変わってやれよ」
吾が輩は30兆でござる。表沙汰にはできないけど個人資産世界一でござる。
「もれなくヤンデレストーカーと命の危険がオプションとして付いてくるでござる」
「私はストーカーじゃありません。ちょっと声が聞きたいから盗聴器仕掛けたりする程度です」
「ヤンデレであることは否定しねえのか」
「それに私達は相思相愛です。無理矢理連れてこられるのとは違います」
「それもそうだな」
この人ら本人目の前にして恥ずかしいこと言い切るでござる。吾が輩カレンさんになんかした? 全然心当たりがないでござる。どっかで会ったことあったかなー? ………盗聴器?
『三人とも、追いついたわよ』
『でも無傷でって無理じゃない?』
「あれっ、シオンさんにリーシャさん?」
コックピットから通信があったと思ったら聞きなれた声。
「二人とも輸送ヘリなんか操縦できるでござるか? つーかこの機体自衛隊の持ち物なはず…」
『ちょうど陸自の対地訓練に付き合ってたからそのまま借りてきたの~』
そのまま借りてきたの~はいいでござるが貸してくれるものなの~?
「…その大型観光バスって最低地上高どのくらいでござるか?」
『一番大きいタイプだから20~30cmくらいあると思うよ』
『アンタなに思いついたの』
「ドア開けて! 青龍たーん?」
どろん!
「はーい」バリボリ
「まーた勝手に食べてるでござる。ちょっと投げられてくれない?」
「えっ」
「ヘシン! いやっふぅぅぅぅい!」
「えっちょっ私のおせんべいぃぃぃぃぃ」
ソッコーでヘシン! して青龍たんの手を取って飛び降りる! バスの前に回り込む!
「ちょっと後ろのあたりの棒斬ってきて。そぉい!」
「きゃああああ!!!」
バスの前から地面すれすれの特攻を掛けてバスと地面の隙間に青龍たんをブン投げる。よく知らないけどシャフト斬っちゃえば止まるよね?
パシッ!
ガガゴンッ!!!
「え」
後ろに回ってすり抜けてきた青龍たんをキャッチした直後、大型観光バスは脱輪し火花を散らしながら数百m車体を引きずって止まったでござる。や、やべー! 横転しなくてよかった!
「誰が脱輪させろと小一時間」
「私はちゃんと言われた通り斬ってきましたもん!」
「たぶんドライブシャフトかなんか斬ったでござる。よく分かんないけど」
「ふええ」
涙目で訴える青龍たんかわゆす。なでなで。
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