第122話 つるーん&ぺたーん
前回。
オリジナル世界のスーさん襲来に応戦しようとしたところ、この
「詳しい説明はなっちゃんから」
「この空気でなっちゃん言うのやめてください、お嬢様」
それも束の間。武蔵野グループとアメリカが開発していたという新型戦闘機の試作機が強奪されたでござる。
「2時間前、エリア51に侵入したサード・アイの兵士一人とオリジナル側のシオンとカレンによって新型試作機が強奪されました。直後アメリカ空軍機F35二機がスクランブル発進しましたが3分と経たずに撃墜されました」
「はっや!」
武蔵野グループ本社ビル、大会議室。たった数人には広すぎるこの会議室で説明を受ける。座っている暇もないのか、入ってすぐ立ったまま話が始まったでござる。
「1時間前、『24時間以内に全てのヒ・ミ・ツを世界に公表し、この地球を我々に明け渡せ』という実に無茶苦茶な要求がホワイトハウスに届きました」
「本当に無茶苦茶でござるな…」
「そして30分前、リエッセ・リーシャ・シオン・カレンの4名によって先行して捜索が開始されましたが未だ発見にはいたっておりません」
新型の試作機…。デザインが吾が輩達に似せて開発されているということは大気圏の往来のみならず、通常の戦闘力も恐らく最新のF35を越えていると思って間違いはないでござる…。
「この要求が承諾されない場合、搭載している小型核ミサイル二発をワシントンと東京に直撃させるとのことです」
「二発?! 一発じゃないんでござるか?!」
「一発しか積んでないなんて一言も言ってないわよ。ござるくん、リエッセさんと行った最初のミッション覚えてる?」
最初のは…、中東に連れてかれたミッションでござるな。そういえばあのとき奪われたのも小型核ミサイル。しかしアレはロシアの持ち物だったはず。
「裏でアメリカとロシアは繋がってるわ。そこにおばあちゃんが首突っ込んだの」
「アメリカとロシアが仲良くするのはかまいませんが、そこに会長のおばあちゃんが出てくる理由が分からないでござる」
「…これ機密だから絶対に喋っちゃダメよ? あの小型核ミサイルね、
「まさか両国の仲を取り持つ代わりに開発をやらせろと…?武蔵野おっかねー、でござる」
そして吾が輩の新人研修を兼ねて奪還に向かわせたのは吾輩を目立たせて注目をそらし、この事実を隠蔽するため…。結果として小型核ミサイルは犯人自ら返却されていたし、あの白衣のジジイの『扱いきれないから返した』ってこういうことだったでござるか。
「そ、ロシアを隠れ蓑に核ミサイル開発してアメリカで実装、その後完成機を二国のみ優先して売るって約束。お金ガッポガッポでもーウハウハよ♪」
「取られてたら意味ないです。じゃあこれの追跡に私達も加わればいいんですね?」
「トモミンは無理しなくていいわよ。さっきござるくんにブッ飛ばされたばかりなんでしょ?」
「だ、大丈夫です……」
「嘘おっしゃい」
「あっちょっ」
レイミさんはつかつかと歩み寄り一気にガバッとトモミンのシャツを捲り上げた。お腹全体が黒ずんでいてまだ完全に治っていなかったでござる。
「短い付き合いじゃないんだから分かるわよ。今回は休んでなさい、私が出るから」
「すいません…」
一言謝ると、相当我慢していたのか壁に寄りかかりお腹を押さえて座り込んでしまった。よく見れば顔に脂汗が滲み、また真っ青な顔をしているでござる…。こんな立っているのもやっとなくらいを一緒にいて気が付かなかったとは…。
「ござるくんも、ホイホイ思いつきで危ない技出しちゃダメよ。チカラ分けてもこれだけ超再生が追いつかない一撃なんて死んでないのが不思議なくらいだわ」
「ご、ごめんなさい…」
「強くなるのもカッコつけるのも一向に構わないけどね、浮かれてんじゃないわよ。チカラの使い方にも節度を持ちなさい」
「はい…」
ぐうの音もでない。吾が輩は天狗になっていたのかもしれない。なんでも出来るんだとつけ上がって調子に乗っていたでござる。
「さて、小言はこれくらいにして出るわよ。あの試作機は核ミサイル抜きでも一兆円掛かってるんだから無傷で回収すんのよ! じゃないと私のお小遣いが一兆円飛ぶんだから!」
「先に行ってる四人の心配よりも自分の小遣いかよ」
「レイミのお小遣い一兆円、ボクのお小遣い一万円」
「レイミさんのお小遣い一兆円も驚きでござるが、これにそこまでつぎ込むとは…」
「バカ言ってんじゃないわよ! これ私のシュミなのよ!」
「コピーの俺に説教しといて自分はそれかいっ!」
「言っとくけどオレは手伝わないからな。オレは敵だし、他人の小遣いがいくら消えようが知るか」
「オリジナルは血も涙もない復讐の無差別殺戮テロリストのロリータだって公表するわよ」
「おおいふざけんなよ!!!」
「こちらとしてもいらないわ、そんな使えない子」
「?!」
突如頭の上から降って聞こえる謎の声。会議室の天井が割れ何者かが飛び込んできた。バラバラに砕け散った瓦礫を踏みつけ、壊れたスプリンクラーの散水の中から現れたのは、真っ白い鎧に真紅の鎧の二人…。
「自分の復讐一つも出来ない子どもなんかアテにした私が馬鹿だったわ」
「やはり
な、なんということでござるか…。
つるーん↓
ぺたーん↓
「なんという非情な現実でござるか…この世には慈悲というものがないでござるかっ…!!」
「ドコを見て言ってるのよ、ドコを!」
大会議室の天井をぶち破って入ってきたオリジナルのシオンさんとカレンさん。スプリンクラーの散水の中、静かに現実を見ていたでござる。え? なんですぐにオリジナルとコピー見分けられたかって? そりゃあ見れば一目瞭然でござる。
つるーん↓
ぺたーん↓
「う~ん、やっぱりまな板!」
どういうことでござるか。断崖絶壁、そびえ立つビル、反り立つ壁。あのけしからんぷりんぷりんなスタイルを持つ二人のオリジナルとは思えないでござる。まあ冗談は置いといてガチ喧嘩したあの二人がこんな仲良く無いし、カレンさんはシオンさんのこと御姉様とか呼ばないし。
「ドコ見て言ってるのよ!」
「その鎧のおっぱいの部分、ちょっとだけ膨らみ入ってるけどかえって残酷でござる」
「こっ、この…!」
「ウェイッ!」
「ぐはぁっ?!」
「っ?! 御姉様!」
一瞬で接近しおっぱいの部分を平らにする。別に無乳だからって恥じることはないでござる。
「女に手をあげるなんて最低な男ね!」
「先手必勝でござる」
「あんた達、バニーガール着て社員食堂でキャンペーンガールやってもらうからね。この壊した天井もお釈迦になったプロジェクターも椅子も机も弁償よ弁償!!」
「やめときなってレイミ。この二人のバニーガールとかなんにも面白くねえから」
「懐柔された裏切り者風情が抜かすなッ!」
コンプレックスを刺激されて飛び出してくるレズカレンさん。四神剣・朱雀が灼熱の炎を撒き散らしながら飛ぶように襲いくる。
「おっと手が滑った」
「なあっ?!」
「余計なコンプレックスなんざ気にして膨らますから隙間ができるんだよ。どどどどどっせいっ!」
「ガッ!」
ひょいと剣を避けると堂々と正面から女性の胸に手を突っ込み押し飛ばすもう一人の吾が輩。抜けた手をワキワキしながら何か感触を確かめているよう。
「触り心地はどうでござるか?」
「やべえ、マジでなんもねえ。想像を越えるまな板具合だわ。絶望を覚えるわこれ。いや初めてこっちに来たときも衝撃だったけどな? なんでうちのは絶壁なんだろう?なんでこっちのはこんなに巨乳なんだろう?って」
(巨乳で良かった…)
そばでほっとした様子で自分の胸を揉むレイミさん。吾が輩達のあまりの言い草に不安を感じていたでござるね。それはそうと、
「紫でござる」
「ああもう、このブラウス高いのに…。ぐしゃぐしゃよう…」
カシャカシャ!
「保存保存」
濡れ透けのレイミさんは胸のボタンが飛んだブラウスやスカートがぴったりと体に張りつきボディラインが強調され、レズ絶壁二人とは比べ物にならない素晴らしいスタイルをさらけ出していたでござる。
「濡れて垂れた長い髪、紫に薔薇の意匠があしらわれたブラジャー、浮かび上がるストラップと鎖骨、濡れたスカートから見え隠れするガーターベルトに白い太もも…」
「歩く凶器だな、主に男がくの字になる感じの」
「あっ、なっちゃんさんは?」
「そこで頭打って気絶してる」
若くして元傭兵で何ヵ国語も堪能な美人キャリアウーマンという設定はどこに行ったんだろう。完全にギャグ要員でござる。
「なっちゃんさん、こんなとこで寝たら風邪引くでござるよ? おーい」
「う…ーん」
返事がない。
「ということで」
モミモミ。うん、Cカップでござる。
「おお、なんと慎ましい」
「こんなときまでやめなさい」
「トモミン、大丈夫でござるか?」
「取って付けた心配なんかいらないわよ…」
まだお腹を押さえているトモミン。そんなに回復しないなんて…。吾が輩調子に乗りすぎたでござる。
「ばあああああ!」
「!」
レズシオンさんが背後から瓦礫をガシャガシャとさらに踏み砕きつつ、白虎を抜き放ち巨大な爪に変化させ、吾が輩の首を目掛けて振り飛ばしてくる。
「ぬあっ!」
間一髪、両手のひらに爪を貫通させながらも向こうの両爪を押さえ込む。貫通した手のひらから噴き出す血と共に激痛が走る。
「ぬうぅぅぅぅん!」
「変身する隙を与えてないってのに随分タフね。まさか爪ごと握られるなんて思ってみなかったわ。でも、これでよくってよ!」
「御姉様!」
「あっ!」
「しまっ」
両手が塞がっていて手が足らないでござる! 後ろにトモミンがいては避けられない!
「オレをいらないだってぇ? ならお前ら味方じゃねーんだよなあ?!」
「ぎゃん!」
動きに合わせて全力の突きを放ったレズカレンさんを二つのハンマーが横から殴り飛ばしたでござる。完全に不意打ちを食らったレズカレンさんは思いきり壁に叩きつけられた
。
「手伝うぜ、大将」
「いえーい!!!」
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