第85話 大艦巨砲主義

「おおお!凄い! デカい!」


「イイだろう?デカいのはロマンだぜえ」


「ちょっやめろよ俺らボディ壊れてんのにこんな近くでそんなんぶっぱなしたら首がもげっ」


黄泉還り一発目。原子力空母の飛行甲板の三分の一を埋めるほどの巨大な砲台を召喚し発射した。


「耳塞いどけよぉ!死ねオラァ!」


「「オギャー!!!」」


今死ねっつった。五芒星の陣を組んでいた原子力空母の隙間を縫って飛んでいくこれまた巨大な弾丸。あんなんどうやって飛ばしてんだこの人。メタルな二人はただでさえ破損しているボディにも関わらず超大な衝撃波を食らい見事に首から下が粉々になり手も足も出ないガラクタに成り果てて転がった。


『キャァアアアー!』


『ひぃぃぃぃぃぃッ!』


通信から聞こえる悲鳴。一瞬間を置いて爆発音が聞こえる。とんでもなく異常な弾道を描いたそれは見事命中したようでござる。


「リエッセさん、向こうの二人が危ないでござる。つーか今凄い曲がって飛んだんですけど……」


「まぁな!」


いやまぁな!じゃなくて……。ムチャクチャするなあこの人……。本当についさっきまで死んでいたとは思えない。


『いっ、今のは……』


『なに……?死んだんじゃなかったの……?』


「アタシのインカムぶっ壊れたかな?なんか途切れ途切れで全然聞こえねーんだけど、なんだって?」


「死んだんじゃないの?だそうです」


「まだ人間やってるわ!勝手に殺すんじゃねえ!」


「聞こえましたか?」


『聞こえた聞こえた』


『タフでは済まされませんね……。人間じゃないんじゃないですか?』


「テメー聞こえてんぞカレン!次はお前に当てるぞこらぁ!」


『チッ』


「どうどう、リエッセさん落ち着いて」


「ヒヒーン!ってやかましいわ!」


綺麗なノリツッコミありがとうございます。


「……くっくっくっくっ」


「んっふ、ふっ、くっくっくっ」


ちょっと不安というか、実感がないというか、まだ信じられないけど本当に生きてるんでござるね。


「行くか」


「ええ」


いつもの拍子に戻りつつあって、恥ずかしながらお互いの気持ちを理解し合って、すっきりしてさっぱりして、まっすぐ見つめ合っても恥ずかしくなくなったら笑いがこみ上げてきた。こんな簡単なことがどうしてこんなに難しかったのか、すっきりしたあとの今ではよく分からないでござる。あれ、何か忘れてるような……。


「おおーい」


「忘れてないか―」


「おわっ、生首が喋ったでござる!」


「誰のせいだよ誰の。しかも生首じゃねーし」


「ボロボロなところにあの衝撃波だったからな、見事にバラバラになっちまったわ」


通常の人間なら衝撃波によって吹き飛ばされ鼓膜が破れ頭痛やめまい、吐き気に襲われていそうなくらいの凄まじい発射と反動だったでござる。いくらこの空母が大きいからと言ってあれじゃ戦艦大和でござる。あんなおっかないもんどっから出したのやら。


「生も機械も変わんねーよ、おいそこの、コンビニ袋にでも入れとけ」


「ハッ!」


「扱い雑ぅ」


「テ、テメー覚えとけよ……」


ハワイでなんやかんやしてる頃の戦野家の食卓。一人いないことでやや広い。彼のサイズを考えるとややではなくかなり広い。


「お父さん隕石だって」


「くっ、まだカブトゼ○ターは完成していないぞ!ハイパーゼ○ターだってまだだ……!」


「ごめんわかんない」


「なにっ!娘よっ!武将がついていながらなんということだ!」


「隕石って言ったって燃え尽きる程度でしょ?大丈夫よ大丈夫。それよりお父さんの頭が大丈夫じゃないわ」


「お父さん……」


「哀れみの目で見るのやめて」


ハワイでなんやかんやしてる頃のサロンのお留守番組。客も無く特にすることもなく暇を持て余して浴場に浸かる4人。


「リエッセさん、本当に死んじゃうのかな……」


「あの人はやるといったらやる人だから」


「正直ボクはそんな気しないけど」


「でも……」


「私も死なないに一票」


「ちょっとシオンやめなさい」


「心配なのはござるの方よ」


「なんで?」


「……女子部についていったって」


ガタッ


「ハワイまで行かなきゃ!あの子の貞操が危ない!」


「おちちゅきなさいリーシャ、貞操は女の子に使う言葉よ」


「アンタが落ち着きなさい……よ」


「にーちゃん大人のオトコになって帰ってくるんだね」


「そうね。日本ではこういうとき赤飯炊くんだったのかしら?」


「「アアアアアアアアアア!!!!」」


「人をおちょくるのって楽しいね」


「でしょ?クセになるわよ。(アイツの家でアイツの家族と酒盛りしてきたとか、そこまでは言わない方がいいわね)」

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