第53話 実務経験を問う

かぽーん


「ということで、ウチの学園の用務員にならない?」


「何がということでなのか、まったくつながってないんですがそれは」


サロンの天然温泉。怪我の具合はもう十分完治であるが湯治を兼ねて入りに来た。要は温泉に入りたかっただけでござるね。ついでにマッサージもやってもらえるし女性の裸を拝めるしまさに役得。


「用務員になる話なら断ったはずじゃないですか」


「まー、そーなんだけどさー。募集してもなかなか人が来ないのよ」


今日はレイミさんと二人っきり。最初カレンさんもいたからてっきり常駐かと思ったら普段はちゃんと武蔵野学園の高等部に通っているらしいでござる。リーシャさんはリアルJDだそうで、これまた武蔵野学園に行ってるとか。


「応募要項の求めるレベルが高過ぎるから全然来ないのよ」


「ならレベルを下げればいいでござる」


「そんな簡単な話ならキミに声掛けないわよ」


学校の用務員とはそんなに難しい話ではないと思う。蛍光灯が切れた、トイレットペーパーが無い、落ち葉の掃除をしてほしいとかそんなところでござろう。武蔵野学園の用務員はいったいどんな仕事をしてるのやら。


「ウチは学園が大きいだけあって不審者も出やすいのね。勝手に入る人間もいるし、そんなんで盗難があったりしたし」


「見廻りなら警備員さんを雇えばよろしいかと。というかあの厳しい警備の中をすり抜ける変質者がいるでござるか」


「あと遠足や修学旅行の随行ね。担任や副担任の先生達は生徒で手一杯だから、何かトラブった時に対応してもらう人間が必要なのよ」


「そんなにやってたら用務員のレベルではないでござるよ」


「そ、だから求めるのもそれ相応になるの」


「ふむふむ、やはり中卒でアルバイトもしたことない吾が輩にはまったくもって関係ないでこざるな」


「やれ」


「やりません」


なんかおかしい。ここまで押してくるということは何か理由があるでござる。なんもないのにわざわざ吾が輩に回すってことはないでこざるな。面倒事の悪寒。


「……ここだけの話、ゴールデンウィークの遠足に脅迫状届いたのよ。しかもまたサード・アイ」


ああ、やっぱり。今日はいやにマッサージが念入りだと思ったら『ですよねー』の展開。


「しかしそれはお巡りさんのお仕事でござる。なんなら空いてるロイヤルセブンのメンバーを裏に回せばよい話では?」


「もちろん警察には相談してあるけど、やっぱり事件が起きないとそんなに人員は割けないってさ。だから内側の人間を増やすしかないんだけど、傭兵歴のある人なんか日本にはいないわよねえ」


「そりゃそうそういませんがな」


なんだ傭兵歴って。実戦経験ある人募集してたんかーい。学校の用務員に傭兵歴って必要なワケないでしょう。そりゃあ応募なんか来るワケないでござる。ん?そう考えると吾輩の経験はピッタリ?


「遠足は毎年恒例だし、今からキャンセルってのもちょっと無理がある。ああそうだ、暇そうな無職がいるじゃんって話になって」


「頼まれているはずなのにdisられてるんですが。あとやるときはちゃんとやってるでござる、一日中PCにかじりついてるでござる。資料集めて読み込むのも仕事です」


「取りたい資格とかあったら学園の経費で落としてあげるから、ね?おねがい!このとぉーり!」


吾が輩の前で手を合わせるレイミさん。熱意は分かりますががすいません、おっぱい全開でござる。素晴らしいチチ、シリ、フトモモの持ち主。ガン見するでござる。


「学歴はどうするので?まさか中卒のまま?」


「そんなもんはどうにでもなるわ。なんなら紙きれ一枚で大学卒業してみる?」


汚職だ。汚職の現場がここにあるでござる。


「そうそう、シオンを止めてくれてありがとね? あの子昔っから危なっかしいわじゃじゃ馬だわ人の言うこと聞かないわで手に負えないのよ」


「あー、昨日吾が輩の家に来て酒で酔っ払って顔真っ赤にしたまま、


『ごめん、ありがとう。……倒れる前の最後のアンタ、…カッコよかった』


って耳元でささやいたでござる。なんなんですか?あの狂犬ツンデレは」


「こりゃーフラグ建てたわね。やーいモテモテー」


「出会ってすぐ結婚しようって言ったのは誰だったかなー」


「ダレダッタカナー」


吾が輩、船舶免許やダイビングに興味があるでござる。スカイダイビングなんかもやってみたい。でも飛行機や船は持つにはお金掛かるし、まさかねー。ハハハ。

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