第33話 チケットは書き留めで届いたりしない
ピンポーン
<郵便局でーす
「はいはーい。はい、GO」
「そんな犬じゃないんだから。というか自分で返事しといて行かないでござるか」
ニート二人。朝のワイドショーを見終わってこたつでごろごろ。そういえば雨が降ったから車を拭いておかねば。
「しょうがない、どっこいしょ」
母上はどうしてもこたつから出たくない様子。仕方なく吾が輩が玄関に出るでござる。
「はーい」
「書き留めです。えーと、戦野…ブショウさん?」
「武将と書いてタケマサと読みます」
このお姉さんは初めて見る郵便の人でござる。だいぶ若く見えるということは新卒かな?いや、まだ3月でござる。入社式もまだのはず。なら中途採用かな?いつものおっちゃんじゃないでござる。
「ああ、すいません」
「いえいえ読み方についてはよく聞かれますよ」
「じゃあここにサインをお願いします」
「はいはい」
なにやら重厚な封筒でござる。サインして受け取り、こたつに戻る。
「なにそれー。誰宛?」
「吾が輩宛でござる。ん?おおお!これは!」
某歌姫のライブ特別招待券!
「『ご当選おめでとうございます。厳正なる抽選の結果、ご招待の運びとなりました』だってお!やったラッキー!」
「あ、わたしも知ってるこの子。今どき珍しい一人でアイドルやってる子よね」
「今回はライブ特別招待席とライブ直前に楽屋訪問、ライブ後その場で新曲CDに名前入りサインしてもらえてツーショット撮ってもらえるでござる。まさか当たるとは」
「抽選何名?」
「なんと抽選3名のスーパー狭き門! 普通の席取るだけでも戦争だし、どうせ当たらんと思って一口しか応募しなかったから予想外でござる」
「武蔵野のおばあちゃんの差し金……、じゃないわよね?」
「母上やめて、それ冗談に聞こえないから」
バレてそうだから恐いでござる。応募したのは1月の中旬あたり。おばあちゃんにあったのは2月。うーん…。ま、いいや。もらえるもんはもらっとくでござる。
「そういえばその新曲のMV、今度の週末にストリートビューイングでやるんでしょ?」
「ライブで初披露してその翌日でござるな。土曜の夜に1日のみのスーパーライブして、日曜の昼に秋葉原乗っ取ると」
「じゃあ今度の土日はわたしがご飯作らないといけないのね……」
「そんな死にそうな顔しなくてもストリートビューイングは見ないから日曜の昼には帰ってくるでござるよ。特別招待席で新曲生で聴いてサインもツーショットももらうんだし、というかライブ前に本人に会えるし」
「テレビでストリートビューイングやってるのを見て言うんでしょ?『見ろ、人がゴミだ!』って」
「元ネタと違うし言い切ったよこの人」
そりゃ優越感はあるけどね。流石に人がゴミだなんて言わないでござる。それよりホテル押さえないと不味いでござる。なんで普通の席は落選したのにこっちは当選するのか。そんな予定じゃなかったからなんもしてないでござる。
「まずい…」
「どうしたの?」
「今ざっと調べただけですが、ホテル空いてないっす…」
「まー、世界的アイドルだからねー。わりと近くのアリーナでやるのが不思議なくらい。あそこ5万人くらいでしょ?彼女からしてみたら小さいくらいなんじゃない?」
「めんどくさいから父上殿の黒いカードでスイート押さえるでござる。スイートなら空いてるし」
「怒られるんじゃないの?」
「新曲CD会場限定版でもお土産にするでござる。買えればだけど」
これはまさかの超展開。週末楽しみでござる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます