第32話 偉大なるこたつ
「ただいまー、でござる」
「あらおかえり。珍しく長かったわね」
「お兄ちゃんおかえり~」
……あれ、妹君なんでいるの?午前中に呼び出されて今まだ夕方の四時。中学校はこれから部活が始まるはず。
「なんか銀行が強盗に入られて危ないとかで六時間目なくなって、部活もなくなったの」
「ああ、なるほど。物騒だから早く帰れとそういうことでござるな」
吾が輩のなにか言いたげな顔を見て、こたつでおせんべいバリボリしてる妹君が察してくれたでござる。
「っていうかお兄ちゃんくっさ! どこ行ってたの?ラブホテル?」
「えっ」
「え?そう?なんにも匂わないわよ?」
「そりゃこたつの中に引きこもっていれば何にも分からないでござるな」
まさか匂いが染み着いしまったでござるか。まああんな薔薇の海にいれば仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないでござる。うっ。思い出したらちょっと気持ち悪…。
「こたつのコンセント、隠しといたのに見つかるとは」
「偉大なる母に不可能はないのよ」
「お兄ちゃん……、なんだろこの匂い。バラ?の香水かなこれ」
「息子にお嫁さん(゜∀゜)キタ━(゜∀゜)━!?ってうわくっさ!!!やだ換気!ああっ寒い!こたつこたつ!!!」
母上ヒドス、というかなんだこの一人漫才。おおかたデートでもしてたと思い込んだのか、突然テンションMAXになってこたつから飛び出てきたでござる。そしてあまりの匂いに猛烈な勢いでリビングの窓全開。光の速さでこたつに帰宅。母上、そんな乱暴に開けたらガラス割れちゃうでござるよ。
「さすがに傷つくでござる」
「お兄ちゃん、もうちょっと付き合う人は選んだ方が良いと思うよ? この間のハーレム混浴はいいとして」
「こんな臭い人はちょっとねー。鼻が捩れるかと思ったわ」
「別にデートでもお付き合いでも何でもないでござる。銀行強盗の野次馬に行ってただけでござる」
「なんで銀行強盗にバラ?」
「ほいこれ。Switterで回ってる動画」
吾が輩達が銀行の屋根に登って、カレンさんが換気口からバラを大量に流し込んでいるところを近所のオフィスビルから激撮されていたでござる。
「おお、凄い。この子ローズ?水攻めならぬバラ攻めね」
「野次馬してたら突然建物からもっと離れるように言われて、しばらくしたらめちゃくちゃ匂ったでござる。んでガスマスクしたヒーローさん達やお巡りさん達が中に入っていって、犯人や人質の人達がマーライオンしながら出てきたでござる」
「うわー、確かにこれはキッツいね。じゃ、取り敢えずお兄ちゃんはお風呂へGO。シャワーでいいから」
「何故に?」
「ずっと窓開けてたら寒いもん。くっさいから早く匂い落としてきて」
「あ、はーい…」
なんだろう。なし崩し的にヒーローに参加させられてんのにこの言われよう。ミジンコのハートが砕けるでござる。
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