御門樹里さん恋物語
わたくしが主役の物語ですわよっ!
おーほっほっほ!
皆様初めまして。わたくしが誰だがお分かりでしょうか?お分かりですわよね、人呼んで桜崎学園のクイーン、御門樹里でございますわ。おーほっほっほ!
えっ、そんな二つ名、初めて聞いたですって?そうですか、さてはアナタ、お話をするようなお友達もいなくて、一般常識にも疎いから、わたくしの二つ名を耳にする機会もなかったのでございますね。なんてお痛わしい、わたくし同情いたしますわ……
ですがものは考えようです。今こうして知識を得たことで、アナタは一つ賢くなりました。どうですか、そう考えたら、たちまち幸せな気持ちになれるでしょう。そうに決まっていますわよね。おーほっほっほ!
さて、二つ名をわかっていただきましたけど、自己紹介はまだまだ続きますわ。と言ってもわたくしの全てを知っていただくとなると、途方もない時間がかかりますわよね。ならばここは手早く済ませるために、源氏物語全編くらいの長さの、短い紹介を……あら、まだ長いと?
それ以前に、わたくしの事はすでに知っていると?春乃宮旭を主役とした本編や番外編で、わたくしの華麗な活躍は既に知っていると、そう仰るのですか⁉
なるほど、わたくしの活躍を知っていると言うのはわかりました。しかし、春乃宮旭が主役とは、どう言うことですの⁉わたくしはこれが初主演なのですよ、それなのに春乃宮旭が、あの知性の欠片も無い陰険なアバズレ女、○○で××の、△△が□□で※※※※な春乃宮旭が、このわたくしを差し置いて既に主役を務めているなどと、そんなはずがありませんわ!何かの間違いです、そうに決まっています!
…………ハァ、ハァ、えっ、話が進まないから、春乃宮旭が主役だったことは無かった事として進めるですって?まあそれなら良いでしょう。
それでは皆様、わたくしが大活躍する物語、とくとご覧くださいませ。おーほっほっほ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここはわたくし、御門樹里の住まう屋敷。わたくしは自室で姿見に自分の姿を映しながら、問いかけていたのですわ。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰ですの?」
すると鏡が、わたくしの問いに答えます。
「それは御門様です。もっと正確に言えば、今日の御門様でございます。御門様は日々美しさが増しておられます。昨日よりも今日、今日よりも明日の御門様と、御門様の美しさは止まるところを知らないのです」
「そう、そうですわよ鏡さん。アナタはそこのところを、よくわかっておいでですわね。おーほっほっほ!」
流石わたくしの所有する鏡ですわ。ですが気持ちよく笑っていると、姿見の後ろから鳥さんが顔を出しましたの。
「あ、あのう、御門様、もうご満足頂けましたでしょうか?もうそろそろ本題に移った方がよろしいと思うのですが」
「本題?ああ、そう言えば明日着ていく服を選んでいる途中でしたね」
「御門様、お忘れだったのですか?」
「鳥さん、別に忘れていたわけではありませんよ。ただこの、魔法の鏡ごっこに夢中になっていただけですわ」
鳥さんったら鏡の役が大変お上手なのですから、これは仕方の無いことですわね。
「それを忘れていたと言うのでは……いえ、何でもございません。それにしても、牧さん遅いですわね」
「そう言えばそうですね。お茶の用意をしてくると言って出ていったっきり、帰ってきませんねえ」
「きっと御門様から逃れるため、わざとノロノロとやっておいでで……」
「鳥さん、何か言いました?」
「いいえ。何でもございません、御門様!」
鳥さんがそう言ったのと同時に、部屋の戸をノックする音が聞こえましたわ。どうやら牧さんが戻ってきたようですね。
「どうぞお入りなさい」
「失礼いたします、御門様。お茶の用意ができましたので、お呼びに参りました」
ドアを開けて、中へと入ってくる牧さん。するとそんな牧さんに、鳥さんが詰め寄ります。
「牧さん酷いですわ。私一人に御門様の相手をさせるだなんて」
「ごめんなさい、そんなつもりはなかったのですか、つい束の間の自由を手放すのが惜しくなって……ところで服選びの方は、もう終わられましたか?」
「まだですわ。何せ今の今まで、魔法の鏡ごっこをさせられていたのですから」
「アレをですか。それは、御愁傷様です」
何やら話していますけど、モタモタしているとせっかくのお茶が冷めてしまいますわね。わたくしはパンパンと手を叩いて、二人に言います。
「お二人とも、お話はそれくらいにして、早く参りましょう。お茶の後は服選びの続きをしなければなりませんから、急ぎませんと」
「「はい、御門様!」」
わたくしは二人を連れて、部屋を出ていくのでした。
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