第十章 柄じゃないね

2人の兵士を尾行していくと例のお偉いさんであろう人を見つけることが出来た。長髪の女性で白衣のような物を身に付けていてスラムの人々に向かって何かを言っているように見えた。

「エスパース。エ…」

エクレルとは日本語で稲妻と言う意味を持っている。自然に発生する空を走る光を発生させる魔法でありそれをアリサ1人の力で起こそうとしているので一体どんな代償があとからくるのか分からないけれど今はやるしかない。

「…エクレル!」

稲妻が空から兵士達の方へと高速で落下していき土煙が上がり物凄い衝撃が壁越しにも伝わってくる。衝撃波も土煙もだんだんと収まってきたところで顔を出すと目を見張る光景が瞳に写った。風が吹き荒れ地面から空へと土煙を運びやがて消えていった。その中心に立っていたのが白衣を着ているお偉いさんで銀の刃を天に突き上げていた。

「マジですか…」

けれどお偉いさんのおかげで兵士達全員が倒れていたり気絶寸前であったりと瀕死状態であるのが確認できスラムの人々も怪我こそしているが死んでいる人が確認できないのは幸運だった。

「あの人…強いでしょ。凸って雷で殺す…かナイフで……」

「やばっ!」

お偉いさんがスラムの子供の首を掴み剣を空へかかげた。殺すのだろう。

「っそっ。アクセレラシオン!」

地面を蹴って思いっきり加速して急接近。そして雷を放つ!。

「フド~」

「ディゼッドト」

何が起きたのか分からないけれど分かったことが1つだけあった。体の水分が少なくなっている。人の人体の7割が水分なのにそれが大量に無くなっていた。

「っ!…がっ……」

私は地面に崩れ落ちてお偉いさんはその場に仁王立ちしている。やはり強かった。先程まで戦っていた兵士とは比べ物にならなかった。

「さっきの雷。お前なのか?」

「………」

答えられるわけが無かった。何故か息が上手くできない。恐らく先の攻撃のカウンターとしてくらった魔法の時に奴の腕が私のみぞおちにヒットしていたのだ。そんな経験がない訳では無いけれど流石に慣れるものでは無いし辛い。

「どっちにせよ。死ね」

刃が私に向かって振りおりて行く。

「アクセ…レ、ラシオン…」

かすれ声で唱えて左に飛ぶ。けれど相手の左側から振り下ろされた刃は私の右腕を捉えた。

それは軽々と斬られた。

私は加速の制御を止められずに木の壁に左半身を打ち付けられ血がドバドバと流れ頭がクラクラする。痛みを感じることも無く思考力が衰えていく。

「スラムのヤツがここまで魔法を使えるとはな、変な服装なのはスラム人共通だな。さよならだ」

「~すぅ。アヴェイユ!デストリュクシオン!!」

慣れない左腕を前に突き出し奴のお腹部分に触れた。

覚醒破壊。

なんで覚醒なんていう単語を言ったかなんてもう分からないけど体が勝手に動いたとしか言えなかった。そして皮膚ごと臓器を破壊した。大量の血を吐いて前かがみに崩れ落ちた。けどそれは奴の最後の報いで刃はアリサの腹部に突き刺した。

結果、アリサは右腕を斬られ左半身を強打。左腹部に刃を突き刺された。

お偉いさんはお腹部分の皮膚、臓器に大量に破壊された。

そうして互いに重傷を負いその場に崩れ落ちた。

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