第九章 フドル~雷
空を斬った。様々な物質が存在する空を1本のナイフが回転して男性兵士に突き進んだ。
「ぎぃいん!」
聞き慣れない金属音と共に直進していたナイフが軌道を変え下へ落ちた。
「弾かれたっ!」
兵士は太ももに装備していた10cmの短剣でアリサが力を込めて投げたナイフを弾いた。そして新たに光来るナイフも兵士はしゃがみこんで避けた。
「これも避けるん?」
声を上げて驚くアリサに構わず飛び退き距離を取った兵士が走り出しアリサよりも軽快に空を飛んだ。
一方で兵士が助走をつけて飛ぶ瞬間を見計らって窓枠から滑るように降りて走り出した。兵士は直ぐに地に飛び降り剣を片手に全速力で走ってきた。
「速すぎるでしょ!っエスパース」
背後から迫ってくる兵士は走るのが速くて残り20秒程度で追いつかれそうだった。
「イヴェル…ヴェルグラ!」
空間アイスバーン。異常と言うほど足場が悪くなるアイスバーン状態では歩くのはともかく走るのなど容易なことではない。まして自然現象で雪とセットで起きるわけではなくアイスバーンだけなので転ぶのは確実だ。そして当然の事のように兵士は急な足場の変化に驚く間もなく転び頭を強打していた。
「ははっ!終わりね、クールブ…フドルっ!」
右腕を後ろに引いて平行に勢い良く振った。右手に発生している雷を曲線を描いて兵士へと飛ばした。その雷は見事に直撃した。兵士は大声をあげその場に倒れ込んでいて頭から少し血を垂れ流している。
「はぁ、はぁ」
息が荒くなる。インドア派の私としてはここまで走って初めての魔法まで使ったのは体力的な面でも精神的な面でも来るものがあった。
「いっ!」
突然きた電気の走る痛みで足の力が抜けてその場に崩れ落ちてしまう。恐らく先程発動した雷によって発生源となった右腕き痛みがきたのだろう。動かすことは可能だが先程のように物を投げたり着地する時に手を付いたり力を入れたりとすることは出来なさそうだ。けれど1度魔法を使っただけでここまで体にダメージが来るのは想定外だ。けど冷静に考えれば人を殺せる雷を素手に纏わせただけで腕が使えなくなっていても不思議ではない。
「死んでる…ね」
先の雷で倒した兵士に近ずき手首の脈拍を確認するともう息をしていないことが分かった。
本当に人を殺した。ホントなら恐怖に怯えるところなのだろうがそういうのが無かった。恐らく直接的に刺して殺したとかそういったのでは無く魔法で殺したから間接的に殺したように感じているのだろう。
「行こう」
辛うじて動かせる腕に力を入れて先程2人走の兵士が歩いていった方向へと走り出していく。
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