第八章 開戦の狼煙ってのを上げるよ!
やばっ!。さっと足先の向きを路地裏に向け体を半回転させて身を潜め兵士達の方に少しだけ顔を出す。どうやら何か言っているようだがそれなりの距離があるので聞こえはしなかった。そして私は目を閉じて呼吸を整え言葉を口にした。
「アグランディスマン」
日本語で《拡大》を意味する。
「あれ?」
兵士達の声が聞こえなかった。どうやらただの「拡大」ではなく《音声拡大》や《聴覚増大》のようにしなければ声は聞こえないようだ。そもそも授業でフランス語を習ったわけではなく自主勉でやっていただけなので気になった単語や好きな単語をフランス語でなんと言うか知っているだけだ。ここにきて明らかな知識不足が現れてた。
こういう時に人は後悔するんだなと改めて身をもって知った。
「他に知ってる単語は……はぁ~」
少なすぎる。SF小説が好きな私は魔法系の言葉がフランス語でなんて言うかそれなりに記憶しているがその他の単語ははっきり言って全く知らないと行ってもいい。というかこの世界の言葉が日本語であったことが幸いであり本の世界のようだなと思う。
いない…?。先程までいた数人の兵士がいなくなっている。
バレた…?。
「やばいかもっ」
路地裏から家に入るための布があったのでそこから部屋に入り屋根裏にジャンプして無理矢理登った。
カランっ。登った時に多少の音がなってしまった事が気になった。
「いたっ」
見えた。数人、3人の男性兵士がゆっくりの周囲を見ながら歩いていた。それを尾行するようにして家々をつたって進んでいった。私は尾行というよりかは歩行音がない方だと思っている。ていうかだいたい無い。高校に入学した時にアニメのワンシーンの影響を受けて歩く時に音を出さないように練習してきた。それが現在、役に立っているようだ。
「っ!ぉやば」
兵士が足を止めて屋根上にいる私の方へ振り向いた。とっさにうつ伏せになり後ろに下がったが恐らく気づかれてしまった。
「動いた…」
2人はそのまま周囲を警戒したまま歩き始めたが振り向いた兵士は何かを言い残しこちらに走って来た。足場の悪いスラム街では兵士の足音がここまで聞こえた。
「す~はぁ~」
家の中に入り声を出して深呼吸。心臓がバクバクと鳴る音が自信にハッキリと聞こえてくる。
来た!家に入った時、木の板が軋む音が心臓音に重なって聞こえた。
「行動開始」
窓枠から隣の家に飛び込んだ。
ばきっ!
着地した時に想像してなかった軋む音がなって「しまった」と呟く。当然の事ながらそれは兵士にも聞こえていて足音が早くなり先程までいた場所に登るハシゴを上り立つ姿が見えた。
「攻撃…開始っ!」
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