第四章 ナルだよっ
私がそう言う姿を少女は黙って見ていた。起き上がることもなく私のブレザーにうずくまったまま。
「(名前で怪しまれた?やっちゃったかな…)」
「アリサさん…寒い?」
急にさん付けされた事もそうだがこの幼い容姿の子がそう発言した事に驚いた。この子ぐらいだったらまだ上下関係も微妙にわかっていない頃のはずなのだが、しっかり教育されているとうことなのだろうか。
「平気だよ」
「良かった~」
こんどは子供の話口調に戻った。どっちが少女の話し方なのかイマイチ分からない。もしかしたら中途半端な教育を受けたのかもしれない。
「…っと」
少女は起き上がりブレザーを膝にかける。
「アリュマージュ…?」
少女が口にした言葉を私は知っている。日本語に訳すと「点火」と言う意味の言葉になる。
思ったとうり少女の左手のひらが赤く光だしだんだんとライターの炎のような形を形成していった。
「…………(魔法…あるんだこの世界)」
異世界といえば魔法という決まりきったイメージがあるがやはりこの世界にもあった。喜びで胸がいっぱいで声が出そうになる。
が、しかし感心している場合ではない。もしも魔法がこの
世界共通認識であるならば知らないのはおかしい。
「見てみて!すごいでしょ~」
「っ!…ぁ、す、凄いね」
自慢げな顔全開で振り向く少女の顔が火の明るさで顔や髪型、服までよく見える。
小柄な体型で身長は130cmくらいだろうか。髪は長くなくて肩くらいまでのストレート。薄い銀髪で白のトップスにスネまである長く赤いスカートを着ていた。11才の少女が着る服にしては大人びている気がした。
「(そういえばこの少女はなんて言うんだろう。)」
「…?。どうしたの?お姉ちゃん」
笑顔のまま首をかしげて聞いてくる。その顔に少しの微笑みを顔に浮かべる。
「ぁ…っと名前、聞いてもいい?」
なんかやけに恥ずかしくなった。そんな発言は子供の頃に言ったくらいだし高校生にもなれば言うのは恥ずかしいというものだ。
すると少女は首をかしげるのをやめ、「そんなことか~」と言うように手のひらの炎を一輪のアサガオの上に乗せて手を離す。すると炎の勢いは少し弱まったように見えた。
「名前?私はナルっていいます。」
ナルはそう言ったあとに星空へと視線を向けた。名前しか知らない2人が同じ同じ景色を見る。すると様々な事が頭を掻き回す。
少女の言葉遣いや容姿の事。もちろんこの世界の事。召喚者の存在。その他にも自覚がないだけでもっとある。
そうして何も喋らぬままどのくらいの時間が流れたのだろうか。何もしないでじっとしている事はよくあったので、苦に思ったりはしなかった。本の内容を思い出したり曲を頭なの中で再生したりリズムを取ったりやる事は沢山ある。
そしてアリサとナルはほとんど同時に目を見開いた。
そう、日が登ってきたのだ。星はいつの間にか視界から消滅しかけ山の隙間から登る太陽光に2人は照らされた。
遮るものなど1つもないキレイに輝く大きな球体に見とれ続けた。何度見たかわからない太陽。だけどこうやって見る太陽は今までとはまるで違う感覚を私に与えた。
「ね、ナルちゃん。キレイだね」
なんでそう言ったのかわからない。恐らく無意識にそう言っていたのだろう。
「うん…キレイだね。お姉ちゃん」
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