第104話 じれったい二人 還流(裏)

 船長と源ちゃん。父子であり、師弟でもある。今日はそんな二人が差し向かいで呑んでいる。漁の反省会なのか、はたまた技術や知識の継承なのか。

「なぁ、お前・・・。」

「ん?」

「お前・・・タケさんとこの真輝ちゃんとは、どこまで行ってるんだ?」

「・・・はぁっ!?」

 え?そんな話?

「だから、真輝ちゃんとは上手くいってるのか?」

「は?だ、だから何の話だよ、藪から棒にぃ。」

「あ?お前たち・・・付き合ってるんだろ?」

「はぁっ?いつからそんな話になってんだよ~。」

「いつからって・・・いや、だからその辺の話を訊いてやろうと思ってだなぁ。」

「あぁ?あのな~、別にそんなんじゃぁ・・・。」

「なんだ?違うのか?」

「ちが・・・そ、そんなんじゃねぇよ。」

「そうなのか・・・。」

「・・・あぁ。」

「・・・。」

「・・・。」

「じゃぁ、なんで付き合わないんだ?」

「はぁっ!?だ、だから、なんでそういう話になんだよぉ。なんで俺と真輝が・・・。」

「ん?嫌い、なのか?」

「そうは・・・言ってねぇ。」

「なら・・・良いんじゃないか?」

「あぁ?」

「真輝ちゃん・・・良い子じゃないか。」

「あぁ・・・知ってる。」

「知っているなら・・・なぁ。」

「なぁ、って言われてもよぉ・・・ぃやっ、だからなんで俺と真輝が付き合ってることになってたり、付き合うことになってたりするんだよ~。」

「じゃぁ、アレか・・・誰か、いるのか?」

「あ?」

「だから・・・付き合ってる人がいるのか?って訊いているんだ。」

「そんなん・・・いねぇ、けど・・・。」

「それなら・・・なぁ。」

「いやっ、だから『なぁ』じゃねぇって。」

「ふふふ・・・いいもんだぞ、父親ってのは。」

「は?・・・もう、またこれだよ。酒が回ってくると、すぐ話が飛び飛びになるんだよなぁ。」

「いやぁ、大事な話だ。」

「あ・・・あのなぁ、そんな大事な話なら素面しらふん時にしてくれよ。」

「ん、なんだぁ?親に説教か?ははっ。」

「はぁあ・・・もう・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「なぁ・・・。」

「んぁ?」

「良い子だぞ・・・真輝ちゃん。」

「あぁ・・・知ってる。」

「それなら・・・な。」

「あのなぁ・・・そりゃ、真輝は俺のこと良く知ってるからその辺のことは心配ねぇけど・・・もしそうでもなぁ、俺一人で決めていいもんじゃないだろ?」

「それは、そうだ・・・。」

「だろ?真輝のヤツが、俺のことどう思ってるか知んねぇけどさぁ、横から『お前ら付き合っちゃえよ』って言うもんじゃないんじゃねぇのか?」

「あぁ、そうだ。」

「分かってんならさぁ、もう・・・。」

「ふふふ・・・。」

「な、なんだよぉ。」

「いやぁ・・・お似合いだと思うから、こういう話をしているんだがなぁ。」

「お似合い?」

「あぁ。」

「俺と真輝とがか?」

「あぁ。」

「そう・・・なのか?」

「ん・・・あぁ。」

「そう、か・・・。」

「あぁ。」

「・・・。」

「・・・。」

「なぁ・・・。」

「んぁ?」

「真輝は・・・どう思ってんのかな、俺のこと・・・。」

「ん・・・なんて?」

「んあっ?な、なんでもねぇよっ。」

「ん~?」

「あぁ~っ、もう今日は呑みすぎたっ。ヨーコ、そろそろ締めにしてくれっ。」

「なんだよぉ、もう一杯ぐらい良いじゃないか。」

「ダメだ、もう終わりっ。ヨーコぉ。」

「ふふふ、はいよ~。」

 酔客二人、家路につく。


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