第48話 眠れない夜

「ふぅ・・・~ん。なんだか、眠れないわ。」

 こんな日もある。波が高いわけでも風が強いわけでもなく、どちらかと言えば静かな夜だけど、妙に寝付けない夜。

「はぁ・・・しょうがないわねぇ。」


 こんな時って、つい色々と考え事しちゃうのよね。


「ん~・・・もう・・・。」

 今度の「うどんの日」は、初心に帰ってシンプルにストレートなうどんにしましょ・・・ここ何回か、変わり種を試してきたからねぇ。そろそろ基本に帰らないと、おやっさんに怒られちゃう・・・。

 あぁ、あのお出汁でラーメン作ったら美味しそう・・・とか、考えてたのよねぇ。ついでに中華麺もいくつか持ってきてもらおうかしら・・・ねぇ。

「少量じゃぁ、かえって迷惑かしら・・・?」


 そういえば、最近焼きそばって食べてないわねぇ・・・そりゃねぇ、ここじゃ自分で作らなきゃ無いんだけどさぁ。どうせなら、プライパンでチマチマとか「熱湯3分」とかじゃなくて、大きな鉄板でワッシワッシ作るヤツが良いわよねぇ。

 ・・・鉄板、無いわ。

「あぁっ、も~・・・。」

 だからってさぁ・・・「焼きそば食べたいから鉄板買う」なんて言ったら、さすがの鈴木ちゃんも怒るわよねぇ。そもそも置き場なんてないし・・・でもさぁ、魚の出汁がたっぷり出たので塩焼きそば作ったらさぁ・・・絶対美味しいと思うのよねぇ。

 ・・・え?薄焼き玉子乗せて?オムそばみたいにって?う~ん・・・それは、贅沢すぎない?

「はぁ、なんか・・・お腹空いてきちゃった。」

 ダメよ。こんな時間に起きて何か食べたら、余計眠れなくなる。

「・・・てか、今・・・う~ん、ん?まだ11時なの・・・?」

 雫港に来る前だったら、まだ普通に起きてる時間ね・・・もう、夜更かしさん。

「はぁ・・・もう。」


 そろそろ、あれ・・・お店に出しても良いかしらねぇ・・・おからあげ。スパイシーな方向へ持っていったら、結構良い塩梅なのよねぇ・・・お酒にも合うようだし。味噌汁に入れても旨い・・・とか、誰か言ってたっけ?ん~・・・まぁ、あとで試してみよう。


「はぁ~あ・・・波の音・・・心地良いのにね・・・。」

 こんなに良いBGM聞きながら、なんで眠れないのかしら・・・ふ~ん。考えてみれば、贅沢よねぇ。波の音を集めたCDとかあるのに、本物をこうして毎日聞けるんだから・・・まぁ、おだやかな日ばかりじゃないけど・・・ねぇ。

「よいしょ・・・っと。」

 もう、寝返り打つのも飽きてきたわ。


 鈴木ちゃんと明音さんは、今頃仲良くしてるのかしら・・・それとも、もう寝ちゃったかな?そうよね、朝早いんですものね・・・。

「ふぅ~・・・ん。」

 鈴木ちゃんと明音さんの子供なら・・・絶対可愛い子出てくるわよねぇ・・・ふふ、楽しみ・・・。


 棟梁の息子さん、どこかで宮大工の修行してるって、言ってたわねぇ・・・。いずれはこっちへ戻ってきて、棟梁の跡を継ぐのかしら・・・?

 素子さんによると、棟梁とそっくりらしいから・・・ふふ、同じが並ぶ姿・・・見てみたいわね。

「ふはぁ~・・・んっと・・・。」


 なんだか・・・さっきから私、他人ひとのことばっかり考えてるわね・・・。自分のことも・・・未来のことなんかも、少しは・・・考えないと・・・ね。


 あぁ、でも・・・焼うどん、って手も・・・ある・・・ん。


「・・・ふぅ~・・・、・・・すぅ・・・。」

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