この辺りから「週一で書く」が目標に・・・。
第42話 源ちゃんの計画書
「なぁ、ヨーコ・・・どう思う?」
神妙な面持ちで、源ちゃんが呟く。
「え?なによ、藪から棒に。」
「ん?だから、ヨーコはどう思うのか・・・って。」
ここ最近、源ちゃんが何か考え事をしていたのは気付いていたけど、まったく口に出さないもんだから何を考えているのかまでは分からない。
「だから、なんの話よ。」
「なぁヨーコ・・・。」
「・・・ん?」
「釣り・・・って、楽しいよな?」
「え・・・えぇ、まぁ釣れればね。」
「そ、そうだよなっ。釣りって楽しいよなっ。」
急に笑顔になる源ちゃん。
「な・・・な、なによ急に。」
「そうだよ、釣りって楽しいんだよ。よしっ、俺やっぱりやってみるわっ。」
「ちょ・・・ちょっと待って源ちゃん。アンタさっきからなんの話してんの?」
「あぁ、なにって・・・釣り船だよ釣り船っ。」
「え?釣り船って、お客さん乗せて釣りに行くアレ?」
「あぁ、そうだ。やっぱ釣りの醍醐味は海の上にあるんだから、それを味わうには船に乗るしかねぇんだ。」
なんか、先行き不安。唐突だし。
「ねぇ源ちゃん、分かってる?漁と違うのよ?お客さん乗せるのよ?」
「あぁ、もちろん分かってるさ。」
「ホントに分かってる?お客さんに釣ってもらうのよ?」
「あぁ、もちろん。」
「いつかみたいに『今日は坊主だったぁ、あはは~・・・。』じゃぁ済まないのよ?」
「あ、あぁ・・・も、もちろん、分かってるさ・・・。」
徐々に曇りだす源ちゃんの表情。
「いい?お客さん乗せて、海の上を何時間も漂って、そのお客さんを坊主で帰すなんてことになったら・・・あんたどうするつもりなの?」
「あ・・・あ、あぁアレだっ。よ、要は釣れればいいんだろ?」
「えぇ、釣れればね。」
「お・・・おぉ、それなら問題ねぇじゃねぇか。」
「本当に釣れるの?お客さんなのよ?一匹二匹じゃ納得しないわよ?」
「あ・・・お、おぉ。」
顔色が、どんどん不安色に。
「でしょ。同じお客さん乗せるなら、『星空を見に行こうツアー』の方が喜んでもらえるんじゃない?」
「そ・・・そう、か・・・。・・・あっ、そ、それだって・・・アレだ、雨が降ったりしたらどうすんだ?」
「ん?それはそれで仕方ないじゃない。天気とは喧嘩できないわよ。」
「そ、それを言ったら漁師だって・・・。」
「あのねぇ、アンタ漁師でしょ?漁師がお客さんを坊主で帰すなんて許されるわけないでしょ?」
「そ・・・そう、か・・・。」
勢いが完全に無くなってしまった。やっぱり源ちゃんの考えることは、詰めが甘く、浅い。
「ふふ、もう・・・。で?船長はなんて言ってるの?」
「え?あぁ・・・ん・・・。」
「なにっ?」
「あ、う~ん・・・まだ、言ってねぇ。」
「はぁ?じゃぁなに、誰にも相談もせずにそんなことやろうとしてたの?」
「あ・・・あぁ。」
「はぁ・・・アンタねぇ・・・。ふふ・・・まぁ、コレで考え直してくれたら、それでいいか。」
「なぁ、ヨーコ・・・?」
「ん?なに?」
「俺って・・・。」
そう言ったっきり、黙ってしまった。この横顔、船長に似ている。まぁ、親子だものね。
「なんか呑む?」
「あ、あぁ・・・熱燗に梅干し突っ込んで・・・。」
「はいよ。」
それと、真輝ちゃんが源ちゃんに惚れた理由も、ちょっと分かった気がする。この頼りなさと、漁師の時のカッコよさ。やっぱり、ギャップよね。
こうして源ちゃんの頼りない計画は、あっという間に立ち消えになったのでした。
「あっちぃっ!ヨーコ、熱ぃよっ。」
「あ、ごめん。熱かった?」
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