第2話…脈があるのか

1月7日に彼からの年賀状が届いた。


彼女は

「5日に届いて次の日の朝に出して…」

と4日に自分が投函してからの彼の行動を瞬時に推測していた。



まだ、裏面は見ていない。


浮かれる自分をプライドが許さないのであろうか、

彼女は、紅茶を入れるためお湯を沸かし始めた。


お湯が沸くのをジッと見つめている彼女。


「そうそう、あの字よね。女性みたいなあの字…」


表の宛先面を見てからというもの、思い出が湯気のように噴き出してくる。


すぐに返信があったと言うことは悪い内容ではないだろうと楽観し、彼との思い出を反芻しながら「大丈夫」と無意識にも自分につぶやく。


ソファーに座って、紅茶を一口。


この一口さえ、彼との甘美な思い出と結びつけてしまっている自分が可笑しく切ない。


裏面を見た。


彼の女性のような文字が目にとまった時に、ふと安堵感が紅茶の香りと共に部屋に広がっていった。


<元気?俺、メルアド変ったんだよ。>


「そんなの知っているわよ。だから年賀状送ったんじゃない」

彼女は、むさぼるように次を読み続ける。


<結婚生活うまく行ってんの?>


そう、この言葉を彼女は待っていたのである。


うまくいっていないから彼に思わせぶりな年賀状を出したということが、ほのかに彼に伝わっていることがまず嬉しい。


そしてなにより、結婚生活を心配してくれるってことは旦那との関係に干渉する覚悟があるとも考えられる。


「これは、脈があるわね。」


彼女は、瞬時に計算をはじき出していた。


つづく。


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