第28話 討伐

 藻掻くドラゴンの首に返しつきの頭を付けたワイヤーを打ち込む。ワイヤーの続く限りは巣穴まで追跡できるはずだ。

「頭を落とすぞ!俺は右からルナと山本は左から!ワイズマンは魔法で援護を頼む!」

一斉にドラゴンの首に刃を叩き込む。一方でワイズマンが魔法の詠唱を始める。

「地の精霊よ!果敢なる我と従属たるもの達へ力を与えた給え、そして敵対者を贄に捧げよう!」

 詠唱が終わると共に大地から湧き上がる魔力を感じ。その勢いのまま振り下ろした刃は本来鱗に阻まれ通らないはずの首筋に入り込んだ。

「首を斬り続けるんだ!骨を露出させれば俺が何とかする!」

リーダーは背丈ほどある巨大な剣を首筋に叩き込み押し込み、さらに力をかけ肉を切り落としながら指示を飛ばす。

 ルナは加速の魔法を自分に掛け、少しづつながらダメージを与え続けている。

 俺は俺で切り続け肉を削ってはいるが肉の層が厚く、勢いがあれば切れるが一度刺してしまえば抜けないようになる。それだけは避けなければ。

「もう一度魔法をやる!一度離れてくれ!」

 ワイズマンが叫び距離をとった瞬間、拳大の火球が複数個、特に傷の深い一点に向かって飛んでいく。火球は触れた面から肉を焼き灰と化しながら焼け焦げた穴をその芯まで穿った。

「月の魔よ!生きるものを壊し、生を絶つ技を授けよ!さすればその魂を捧げよう!」

 リーダーが魔法を行使しその剣に月の力を宿し、露出した骨を粉砕する。ドラゴンが断末魔をあげ最後の抵抗とばかりに全身から炎を噴き出す。炎は自身の身を焼き焦がし天に届くほどの煙を立ち昇らせた。伝説の存在その最後にしては妙なものだ。


「勇者たちよ、よくぞ我が化身を倒した見事なり」

 不意に大地の奥底からしわがれた声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る