第27話 ドラゴン

 予定地点に到着し設営を始める、土台を地面に突き刺しその上に本体であるクロスボウをつがえる。多少の角度の調節は効くが反動が強いうえに動力を動かす人が別にいるため二人での運用が絶対であり、構造上連射は不可能といった具合で心もとないものだったが翼を焼き、ワイヤーを打ち込むだけであれば十分であろう。

「餌を設置したら食いつくまで地面に伏せて待機、警戒心の強いドラゴンの事だ何度も周囲の確認と餌の中身を確かめる。だが焦ってはいけない確実に食いついた時に仕留める」

 餌である肉を地面にばらまいた後、地面に似た色の布を被って待つ。地面の熱が布との間に溜まり熱く汗が滝のように噴き出すが少しの身じろぎでも違和感を覚えられて計画が雲散霧消しかねないためにひたすら耐える。こういうことをしていると作戦行動に敵をやり過ごすために雪が積もる平原に数時間伏せ続けたことを思い出す。


 十数メートル先を歩き回る敵兵士たち、必死に雪の上から匂いを嗅ぎだそうとする狩猟犬。上空からの警戒を続ける航空機。体温を奪われながらも生きるためにひたすら耐え続ける静寂が支配する空間。

 敵兵が散々雪を踏みにじった挙句に撤退した後には生き伸びた幸運と潜伏が露見した不運な友軍の跡だけが残っていた。


 そんな出来事に思い馳せていると頭上から巨大な物体の気配と翼の羽ばたきが降りてきた。それは周囲を何回も見渡して、餌をつついては飛び去り。つついては飛び去りを数回繰り返した後、やっと食いついた。

「今だ!やれ!」

 起き上がるやクロスボウの狙いを少し地面に向かって下がった翼につけて、火をつけて放つ。矢につけられた油が体に撒かれ、炎上する。

「グアアア」

ドラゴンの悲鳴が聞こえる。

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