第25話 月
私の両親は冒険者だった。生計を立てられる程度には腕の立つ二人だった。そんな環境で育った私は必然的に冒険者になるものだと思っていたし、両親もそう願っていた。だけど名を馳せて、財を成した両親は街の上流階級との付き合いを強要され、あまつさえ私を政略結婚のために差し出せとすら言われたそうでして。
十五歳の誕生日の夜、リーダーに対して両親は私を頼むと懇願して無理やり私を町の外に出してくれた。娘の進みたい道に導いてくれと。
「その後は今の通りずっと冒険者をしているんですよ。無理にでも送り出してくれた両親にも請け負ってくれたリーダーにも感謝しているんです」
ルナは懐かしむように空を仰ぎながら語った。なにも言えなかった、大事な記憶だと感じられたから。
「いい親御さんだな」
「自慢の両親です」
「そうか…よし俺の両親の事を話そう。聞くだけなのはいやだからな」
いや言い訳か、ただこの気持ちを誰かに知って貰いたいだけだ。
「どこから話すべきかな…」
そうだな俺の父は軍人だった。その父もまたその父も、軍人の家系でな。母親もどこかの領主の娘とかでやたら厳しかった、そんなだからなし崩し的に俺も幼年学校に入れられて軍人を強制された。それ以外の道なんて知りようもなかったし、興味もなかった。当然のように戦場に出て、敵と殺しあって。
で、気づいたら故郷が地図から消え去っていた。歴戦の勇士だと事あるごとに自慢していた父も厳格でやたら誇りだけは高かった母も家ごと夜間爆撃で眠っている間に灰になった。
当時一人前になったばかりの新人の俺には気にかける余裕もなかった。今思い返して泣けるほどには想っていたはずなのにな。
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