第23話 領主

 遥か昔、戦争をしていた時代に建造されたその町は今も王国最南端の防衛装置として機能し続けていた。

 何重にも張り巡らされた小さな丘ほどの高さの石壁、川を引き入れて作られた堀。周囲を森で囲んだ城塞。

その町を最初に見たときには子供ながらに憧れを抱いたものだが作られた理由を知った後では人の醜い欲望の塊にしか見えなくなっていた。人が人に対して向ける巨大な欲望の象徴、今では野に溢れる魔物と魔獣に対する拠点。それが領都であった。


「お久しぶりです侯爵様」

「随分と堅苦しい挨拶をするようになったものだな十月」

「そう言うのなら遠慮せずに行こう、叔父上」

 南領を領土とする侯爵。スサ・アンドレイはリーダーの叔父にあたる、そうやって話を聞いたのは領都に向かう馬車のなかでした。

「叔父上はその昔、冒険者として数々の魔獣を討伐した功で南の守りを司る南候を王授かった」

 リーダーは思い出したようにそれだけ言って、後は着くまで黙りこくっていたのです、それ以上は言わぬまいと抑え込んだ表情で。


「今回、お前を呼んだのは他でもないギルド長からの推薦があったからだ。再びドラゴン出現の兆しあり、至急調査を頼むと依頼をだしたところ返答代わりにお前たちの資料が届いた」

「それで俺たちに直接手紙を?」

「そうだ、一番早い方法を取らせて貰った。私の手持ちの兵力を不確定要素に割くわけにはいかないからな」

 こんなところでも政治だ、うんざりする。そう思いながらも淡々と叔父上の話を聞き続ける。

「ドラゴンが確認されたのは承知の通り、火口付近だ。特殊な生態を持つ羊の変異種がいることで有名な場所だ、そこを餌場にしている」

「で、武器は貸すから落とせと」

「そういうことだよろしく頼む」

 いわれなくとも依頼ならするさ。

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