第14話 打合せ

 アルバート・ワイズマン。管理人と名乗った彼は白い髪を短く切りそろえた細い書生風の男であった。顔のわりに大きい眼鏡が印象的だ。

「依頼ということは鼠駆除ですか?」

「ここに来る依頼なんてそれしかないからな」

「まぁ、そうでしょうね」

 

 人の必要としない場所に誰が依頼を出すものか。誰かが利益を見出さなければが冒険者は動かない、冒険者が動くのはそこに利益があるからだ。

「ああ、そうだその依頼について補足がありまして、最近妙な死体が揚がるので下水の整備もかねて管理人つまり僕ですねを同伴させろと」

「妙?」

「なんでも明らかに下水に住む生物の仕業ではない傷跡ができているとかなんとか」


 見せてもらった死体は明らかに異様な存在の介在を感じさせる傷跡を随所に持っていた。鼠同士の諍いにしては傷が大きく、傷跡が少なかった。

「こいつは確かにおかしいな、いてもワニ位のものだとは思っていたがこいつはもっと大きい奴じゃないとできないぞ」

「例えば?」

「シーサーペントなんかです?」

「そうだな、だが…あんなデカブツが住み着く空間なんてなかったはずだが」


「何者かが幼体を持ち込んだならありえそうじゃないですか?」

 アルバートは辞典をめくりながら言った。

「下水内で成長してそこから通じる川に通じる水門をねぐらとしたなら十分考えられます」


 町からの水を地下水路を通じて海に流れ込む川に送る、そういった構造を持ったこの下水道は必然的に川からの逆流を止めるため水門を設けている、そしてそこには水をせき止めておくための巨大空間があるというのが彼の見解であった。


「習性的には考えられることだな、よしその場所の調査をしよう。運が良ければギルドから追加報酬をせびれるぞ」

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