第8話 説明
「改めてまして、メアリ・ユタニと申します。今回の依頼について説明します。対象はこの街の地下、俗に旧市街に巣くう鼠の退治です」
「旧市街の鼠退治は久しぶりですね」
「なるほど、肩慣らしには丁度いいな」
「鼠?」
「そうだ鼠だ。この町の初心者冒険者の洗礼みたいなものさ、鼠を追っかけて殺すだけの簡単な仕事さ。旧市街の迷路みたいな地形にさえ慣れればな」
旧市街。かつて栄華を極めた古い町の後、市街から数キロ離れた川の河口に存在している。
古い時代には港があり数万人が住む大都市であったが、魔物の出現による海路の寸断と衛生状況の悪化による伝染病の蔓延が重なり住民が都市から逃げた結果荒廃し、現在の市街と対比し旧市街と呼ばれている。
現在は市街から引かれた下水道の終着点であり、下水道の管理人と下水に混じった食べかすを餌にしている鼠だけが住民だ。
「たまに増えすぎた鼠が下水道を伝って街まで来やがるから数を減らして来ないようにしろってのが依頼だな」
「鼠退治は久しぶりです、油断して怪我しないように」
「するか!大体駆け出しだった時期なんてもう何年前だ!」
「仲がよろしいようで」
「「よくない」」
「さてヤマモトさん、規定ですのでこれを」
「これは」
「冒険者に渡される証明章ですね、ギルド長から依頼説明と共に渡すようにとのことでしたので」
証明章は通常ギルドからその職業に就くことを許可、認可された人間に渡されるもので、最悪戦いの中で死んでもこれがあれば身元位は分かるという便利なものである。
「また来るな」
「ご利用ありがとうございます。またのお越しをお持ちしています。リーダー、ルナちゃんとヤマモトさんも」
「はい。また来ます」
「世話になります」
並んでいる人ごみに追い出されるようにギルドを出て、今度こそ俺たちは支度のために店に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます