第3話 邂逅

「それで、あなたは何者?」

「俺は…分からない」

「分からない?」

「思い出せないんだ」


 彼女は彼を発見し、対話を試みた。そして今、対話をしている。


「記憶喪失ってやつ?なんだかがっかりね」

「がっかり?」

「そうがっかり。意思を持ったマシンゾンビなんて貴重なものにあったのに何も知らないんて拍子抜けよ」


「いや、自分の事と自分がどうしてこうなったかは分からないが、君の言う古代国家のことは教えられると思う」

「本当?!」

「ああ」


 彼女は眼を輝かせ、まるでお菓子をもらった子供のような振る舞いを見せた。


「だが、先に今の事を教えてくれないか?」

「交換ということでいいの」

「ああ、そういうことだ。君は今の事を俺は昔のことを話す。いいか?」

「分かった、約束よ」


 彼女がそう言った直後、鈍い音がして部屋の扉らしき部分が開いた。


「ルナ無事か!」

「リーダー。今更来たの?」

「今更とはご挨拶な。ってそれどころじゃねぇ!今来たところから逃げろ!」

「どうしたの?」

「施設の警備装置がまだ生きてやがった!警備ロボがわんさか来やがる!」


 聞いた途端彼女は俺の手を引いてここまできた道を引き返し始めた。


「早く!こっち!リーダーも早く!」

「俺は入り口を爆破してから行く!そいつを連れて先に行け!」

「分かった!先に行く必ず追いつくのよ!」

「へっ、俺がへましたことあったかよ!」

「いつもよ!」


 彼女の華奢ながら力強い手にひかれて施設の中を走る。見覚えのない装置と設備がいくつもある中をひたすら走り、知りもしない出口を目指す。

 

「なあ、出口がどこかわかるのか?」

「空気が流れ出ているところが出口に通じている。それだけ分かれば上等よ」


…そんな感覚を頼りに俺たちは出口に行き着いたのだった。

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